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映画『推定無罪』ネタバレ考察|1991年版の真犯人と結末を解説

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こんにちは、物語の知恵袋のふくろうです。

映画『推定無罪』を観ていて面白いのは、途中まで「ラスティは本当にキャロリンを殺したのか」という一点に意識を集中させられることです。ところが裁判が終わっても事件は解決せず、最後の最後に妻バーバラの秘密が明かされた瞬間、それまで見てきた物語の意味まで変わってしまいます。

私も最初は法廷での攻防が中心の映画だと思って観ていました。しかし、振り返ると本当に怖いのは裁判ではありません。ラスティが法的な危機を脱した後、自宅という最も安心できるはずの場所で真犯人を知ってしまうことに、この映画ならではの後味があります。

この記事では1990年製作、日本では1991年6月7日に劇場公開されたハリソン・フォード主演の映画版『推定無罪』について、真犯人、裁判の結末、ラストの意味までネタバレ込みで解説します。

この記事でわかること

  • 映画『推定無罪』の結末までのあらすじ

  • ラスティの裁判が打ち切られた理由

  • 真犯人バーバラの動機と犯行の真相

  • ラストとタイトル『推定無罪』の意味

ここから先は映画『推定無罪』の真犯人とラストを含む重大なネタバレがあります。未鑑賞で結末を知りたくない方はご注意ください。

映画『推定無罪』の作品概要

映画『推定無罪』で事件資料を見つめるラスティ・サビッチをイメージした検察官
映画『推定無罪』で事件資料を見つめるラスティ・サビッチをイメージした検察官

『推定無罪』は、スコット・トゥローの同名小説をアラン・J・パクラ監督が映画化した法廷サスペンスです。アメリカでは1990年に公開され、日本では1991年に劇場公開されました。

基本情報

作品名 推定無罪
原題 Presumed Innocent
製作年 1990年
日本劇場公開日 1991年6月7日
製作国 アメリカ
上映時間 127分
監督 アラン・J・パクラ
原作 スコット・トゥロー
脚本 フランク・ピアソン、アラン・J・パクラ
主演 ハリソン・フォード

「1991年版」と呼ばれることがありますが、正確には1990年製作のアメリカ映画が日本で1991年に公開された作品です。2024年に制作されたドラマ版とは別作品なので、検索するときはハリソン・フォード主演版かどうかを確認すると分かりやすいでしょう。

主な登場人物とキャスト

登場人物 俳優 人物像
ラスティ・サビッチ ハリソン・フォード 首席検事補。妻子がいながら同僚キャロリンと不倫していた
バーバラ・サビッチ ボニー・ベデリア ラスティの妻。不倫を知りながら家庭を守ろうとしている
キャロリン・ポルヒーマス グレタ・スカッキ 殺害された女性検事補。ラスティの元不倫相手
サンディ・スターン ラウル・ジュリア ラスティの弁護を担当する敏腕弁護士
レイモンド・ホーガン ブライアン・デネヒー 地方検事でラスティの上司
リップランザー ジョン・スペンサー ラスティが信頼する刑事
リトル判事 ポール・ウィンフィールド ラスティの裁判を担当する判事

主人公ラスティは、分かりやすい正義のヒーローではありません。有能な検察官である一方、妻を裏切り、さらにキャロリンとの関係を隠したまま彼女の殺人事件を捜査しようとします。

この「完全には信用できない主人公」という設定が、本作のミステリーをより面白くしています。観客はラスティの視点で事件を追いながらも、「もしかすると本当に彼が犯人なのではないか」という疑いを最後まで捨てきれません。

映画『推定無罪』のあらすじ

映画『推定無罪』でキャロリン殺害事件の証拠を調べるラスティと刑事をイメージした捜査場面
映画『推定無罪』でキャロリン殺害事件の証拠を調べるラスティと刑事をイメージした捜査場面

物語は、女性検事補キャロリン・ポルヒーマスが自宅で殺害されたところから始まります。事件を担当することになったのが首席検事補ラスティ・サビッチ。しかし、ラスティには誰にも言えない秘密がありました。

キャロリン殺害と捜査開始

ラスティは上司レイモンドから、同僚だったキャロリン殺害事件の捜査を任されます。

ところがキャロリンは、単なる同僚ではありません。ラスティがかつて深い不倫関係にあった女性でした。しかもラスティは彼女との別れを完全には受け入れられず、関係が終わった後も未練を引きずっています。

ラスティは刑事リップランザーと事件を調べ始めますが、自分とキャロリンの関係が明らかになれば捜査官としての立場を失うだけでなく、自分自身が容疑者になる可能性もあります。

そのため彼は最初から完全に中立な捜査をしているわけではありません。証拠を追いながら、同時に自分の秘密も守ろうとしているのです。

ラスティに疑いが向く

捜査が進むにつれて、ラスティにとって都合の悪い事実が次々と出てきます。

キャロリンの部屋からラスティの自宅へ電話がかけられていた記録が見つかり、さらに現場のグラスからラスティの指紋が検出されます。被害者の体から採取されたとされた体液についても、ラスティとの関係を疑わせる材料になりました。

ラスティには動機まであります。キャロリンとの関係はすでに破綻しており、彼女に執着していたことも否定できません。

ここで映画が巧いのは、ラスティに不利な証拠がすべて「本当にありそう」に見えることです。観客は主人公を信じたい一方で、彼がキャロリンとの関係を隠していた事実も知っています。そのためラスティの言葉を完全には信用できません。

捜査する側から被告人へ

やがて立場は完全に逆転します。事件を捜査していたラスティ自身がキャロリン殺害の容疑者として逮捕されるのです。

地方検事選挙をめぐる対立も重なり、ラスティを取り巻く状況は一気に悪化します。検察組織内部には政治的な思惑があり、誰もが純粋に真実だけを追っているわけではありません。

ラスティは、以前から法廷で対峙してきた弁護士サンディ・スターンに自分の弁護を依頼します。

検察官だった男が、今度は被告人席に座ることになる。この立場の逆転こそ、『推定無罪』という映画の面白さを象徴する場面です。

裁判の結末をネタバレ解説

映画『推定無罪』でラスティの裁判に臨む弁護士サンディ・スターンをイメージした法廷場面
映画『推定無罪』でラスティの裁判に臨む弁護士サンディ・スターンをイメージした法廷場面

裁判ではラスティに不利な証拠が並べられます。しかし、サンディが一つずつ検証していくと、検察側の証拠には見過ごせない問題があることが分かってきます。

消えたグラスが証拠を崩す

検察側にとって大きな物証だったのが、キャロリンの部屋に残されていたグラスです。

そこからラスティの指紋が検出されたとされていました。彼が殺害現場にいた可能性を示すだけに、非常に重要な証拠です。

ところが裁判になると、肝心のグラスそのものが証拠品から消えていることが判明します。

指紋鑑定について証言することはできても、その根拠となる現物を法廷に出せません。これでは弁護側が証拠そのものを検証することもできず、証拠管理への信用まで揺らぎます。

実はグラスが消えた理由には、巨大な陰謀ではなく証拠管理上の行き違いが関係していました。事件担当を外されたリップランザーの手元に残ったままになっていたのです。

この偶然がラスティの運命を大きく変えることになります。

避妊具をめぐる矛盾

さらにサンディは、検死結果に大きな矛盾があることを突きます。

当初、キャロリンの体から採取されたとされた資料には避妊用の殺精子剤が含まれているとされ、それがラスティとの性的関係を裏付ける材料になっていました。

しかしキャロリンは過去に卵管結紮手術を受けていました。妊娠を防ぐ目的で避妊具を使う必要性が低い人物から、なぜそのような物質が検出されたのかという疑問が生まれます。

サンディは検死を担当したクマガイ医師を追及し、別の遺体から採取された資料と取り違えた可能性を浮上させます。

検察側の柱だった科学的証拠まで信用できなくなり、ラスティを殺人犯と断定する材料は急速に失われていきました。

審理は途中で打ち切られる

ここは映画『推定無罪』の結末を理解するうえで大切な部分です。

ラスティは陪審員から「無罪評決」を受けたというより、検察側の証拠が崩れたため、リトル判事が裁判を続けるだけの根拠がないとして訴追を退けます。

グラスは紛失し、検死資料には疑問が生じ、キャロリンとの性的関係についても殺害当夜の犯罪を直接証明する材料にはなりません。

疑わしい事情は残っています。しかし「疑わしい」と「殺人を証明できる」は別の話です。

その結果、ラスティは法的な危機から解放されます。

◆ふくろうのワンポイント
ここで「ラスティの潔白が証明された」と考えると、ラストが少し分かりにくくなります。裁判で示されたのは、あくまで「ラスティがキャロリンを殺したと証明できない」ということ。誰が殺したのかは、この時点ではまだ分かっていません。

リトル判事とBファイル

裁判の裏側には、キャロリンが関係していた過去の収賄事件、いわゆるBファイルの存在もあります。

ラスティは当初、検察側のトミー・モルトらが何かを隠しているのではないかと疑います。しかし調べていくと、事件に関わっていたのは裁判を担当しているリトル判事でした。

サンディは法廷でBファイルの存在をにおわせます。ラスティは後に、サンディが過去の汚職を材料にして判事へ圧力をかけたのではないかと疑いました。

ただしサンディ自身は、リトル判事が証拠を冷静に判断して審理を打ち切ったと説明します。

つまり映画は、「判事が脅されたからラスティを助けた」と単純には決めつけていません。司法の判断と、人間同士の秘密や過去が微妙に重なっているのです。

真犯人は妻バーバラ

映画『推定無罪』でラスティが血痕の付いたハンマーを発見し妻バーバラの真相に気付く場面
映画『推定無罪』でラスティが血痕の付いたハンマーを発見し妻バーバラの真相に気付く場面

裁判が終われば、普通の法廷映画ならそこで事件解決となるでしょう。しかし『推定無罪』は違います。本当に大きなネタバレは、ラスティが自由になってから待っています。

自宅で凶器が見つかる

裁判後、リップランザーはラスティに、紛失したことになっていたグラスを渡します。

証拠品を返却する際の手続き上の行き違いから、グラスは彼の手元に残っていました。リップランザーはそれを保管したままにしていたのです。

ラスティはグラスを水の中へ投げ捨てます。

これだけを見ると「ラスティ自身が犯人で、最後の証拠を消したのでは」と感じても不思議ではありません。映画は最後まで観客の疑いをラスティへ向けています。

しかしその後、自宅で作業をしていたラスティが工具箱を開けると、血痕と毛髪が残った凶器を発見します。

その瞬間、ラスティはすべてを理解します。

キャロリンを殺したのは自分ではない。そして、凶器を自宅の工具箱に置ける人物は誰なのか。

答えは、最も身近にいた妻バーバラでした。

バーバラの犯行動機

バーバラはラスティとキャロリンの不倫を知っていました。

彼女にとってキャロリンは、単なる夫の愛人ではありません。自分が築いてきた家庭や、夫との人生そのものを壊した存在でした。

ラスティがキャロリンに夢中になり、関係が終わった後も彼女への気持ちを断ち切れない姿を、バーバラはすぐそばで見続けています。

その感情は、悲しみや嫉妬だけでは済まなくなりました。

バーバラはキャロリンへの憎しみから彼女を殺害します。

ただし、この映画は「夫を愛した妻が仕方なく殺した」という話ではありません。殺人は殺人です。同時に、ラスティの裏切りによってバーバラの心がどこまで追い詰められていたのかを描くことで、単純な犯人当てでは終わらない後味を残しています。

なぜラスティの証拠を残したのか

バーバラの告白で特に不気味なのが、ラスティの指紋が付いたグラスを現場に残した理由です。

バーバラは夫を殺人犯として刑務所へ送りたかったわけではありません。

彼女が望んでいたのは、ラスティに「自分がキャロリンを殺した」と気付かせることでした。

キャロリンの部屋にラスティとつながるものを残せば、捜査を担当するラスティ自身がそれを見つける可能性があります。そして彼なら、誰がその証拠を用意できたのか分かると考えたのでしょう。

ところが計画は思わぬ方向へ進みます。

証拠がラスティ本人へ向き、彼自身が殺人容疑で逮捕されてしまったのです。

バーバラはそこまでは想定していませんでした。だからこそ裁判後の告白には、勝ち誇った犯罪者というより、取り返しのつかないことをしてしまった人間の空虚さがあります。

真犯人はバーバラですが、彼女の目的は単純な「夫への罪のなすりつけ」ではありません。ラスティに自分の犯行を気付かせ、キャロリンとの関係が何を引き起こしたのか分からせようとしたことが、事件をさらに悲劇的にしています。

ラストの結末を考察

真犯人が明らかになっても、『推定無罪』には刑事が駆け込んできてバーバラを逮捕するような結末はありません。ラスティは真相を知りながら、それを公にしない道を選びます。

ラスティは妻を告発しない

ラスティは検察官です。

これまで犯罪を捜査し、誰に責任があるのかを追及してきた人物。その彼が、自宅で殺人事件の真犯人を突き止めます。

ならば当然、妻を警察へ突き出すべきでしょう。

ところがラスティはそうしません。

大きな理由の一つは息子です。バーバラが逮捕されれば、息子は母親を失います。しかも父親であるラスティ自身も事件の原因となった不倫に深く関わっています。

自分だけが「法を守る正しい人間」として妻を裁けるのか。

ラスティは、その答えを簡単には出せませんでした。

息子を守る選択の代償

ラスティが沈黙したことで、表面的には家族が守られます。

しかし以前と同じ家庭へ戻れるわけではありません。

夫は、妻が人を殺したことを知っている。妻は、夫がその事実を知っていることを知っている。そして二人は、その秘密を誰にも話さず同じ家庭で生きていかなければなりません。

刑務所へ入らなくても、そこには別の意味での罰があります。

私はこの部分こそ、『推定無罪』のラストで一番怖いところだと思いました。

殺人犯が家の外から突然現れる映画ではありません。何年も一緒に暮らし、家族を作ってきた相手の中に、自分が知らなかったほど深い怒りと狂気があったと気付いてしまうのです。

ラスティ自身にも罰が残る

もちろんラスティはキャロリンを殺していません。

殺人事件について言えば無実です。

しかし彼自身も、自分には何の責任もないとは考えていません。

妻がいるにもかかわらずキャロリンとの関係を持ち、別れた後も彼女への執着を捨てられなかった。その行動がバーバラを傷つけ、結果として悲劇のきっかけを作ったと受け止めています。

だからラストは「犯人が捕まらずに終わる映画」ではなく、法律による刑罰とは別の形で、登場人物たちが自分の行動の結果を背負い続ける物語と見ることができます。

◆ふくろうのワンポイント
ラスティが妻を告発しなかったことを「正しかった」と考える必要はありません。むしろ、法を扱う仕事をしてきた彼が最後には法だけでは割り切れない選択をする。その矛盾を残したことが、この映画らしい結末だと思います。

タイトル『推定無罪』の意味

原題の「Presumed Innocent」は、日本語題とほぼ同じく「無罪と推定される」という意味です。この言葉は裁判のルールを表すだけでなく、映画全体を貫く皮肉にもなっています。

推定無罪とは何なのか

推定無罪とは、犯罪を疑われた人について、法的に有罪と認められるまでは無罪として扱うという刑事手続の基本的な考え方です。

被告人が「自分は絶対に無実だ」と完全に証明しなければならないのではなく、有罪を求める側が必要な証明をしなければなりません。

映画のラスティには怪しい点がたくさんあります。

被害者と不倫していた。関係を隠していた。現場には彼の指紋がある。そして別れたキャロリンに未練も残していた。

感情的には疑いたくなる人物です。

それでも殺人を犯したと証明する証拠が足りない以上、裁判を続けて罰することはできません。

ここでの説明は映画を理解するための一般的なものです。実際の刑事手続や「推定無罪」の具体的な扱いは国や制度によって異なります。正確な情報は裁判所などの公式情報をご確認ください。個別の法律問題について最終的な判断が必要な場合は、弁護士などの専門家へご相談ください。

法廷上の無罪と真実は違う

『推定無罪』が面白いのは、「裁判でどう判断されたか」と「本当は何が起きたのか」を別々に描いているところです。

ラスティに対する訴追が退けられても、その瞬間に真犯人が判明したわけではありません。

裁判が答えたのは「現在提出されている証拠でラスティを殺人犯として裁けるか」という問いです。

一方、観客が知りたいのは「キャロリンを殺したのは誰か」という問い。

似ているようで、この二つはまったく同じではありません。

だから裁判が終わった後も映画は続き、最後にバーバラの犯行が明かされます。

完全に無罪の人はいるのか

ここでタイトルはもう一段深い意味を持ちます。

ラスティは殺人については無実です。しかし妻への裏切りについてまで無実とは言えません。

バーバラは夫に深く傷つけられた被害者でもあります。しかしキャロリンを殺した事実は消えない。

キャロリンも殺人の被害者であり、その命を奪われる理由などありません。一方で、生前の人間関係が周囲に大きな傷を残していたことも描かれます。

つまり本作には、単純に「善人」と「悪人」へ分けられる人物がほとんどいません。

誰が法律上有罪なのかという問いと、誰に道徳的な責任があるのかという問いがずれている。そこに『推定無罪』という題名の重さがあります。

原作小説との違い

映画『推定無罪』はスコット・トゥローの1987年の小説を原作にしています。基本的な事件と最大のネタバレは共通していますが、映像作品として成立させるために人物の見せ方やラストには違いがあります。

原作でも真犯人はバーバラ

まず一番気になるところですが、原作小説でもキャロリンを殺した真犯人はバーバラです。

つまり「映画だけ犯人を妻に変更した」というわけではありません。

ラスティが殺人容疑をかけられ、裁判を経て法的な危機を脱し、その後に妻の犯行へたどり着くという大きな構図は原作と映画で共通しています。

そのため原作を読んだから映画の真犯人が別になる、ということはありません。

映画は告白を明確にした

大きく違うのは、バーバラの犯行を観客へ伝える方法です。

小説ではラスティの一人称で物語が進み、彼の推理や疑念を通じて真相へ近づいていきます。

一方、映画ではラスティが凶器を発見した後、バーバラ本人が自分の感情や犯行について語る場面が用意されています。

文字であれば主人公の思考を詳しく説明できますが、映画では人物の表情や会話によって伝えた方が分かりやすい。

そのため映画版のラストは、バーバラが真犯人だという事実と彼女の心理が、原作より直接的に観客へ伝わる作りになっています。

夫婦の結末も少し違う

原作では裁判後、ラスティとバーバラの夫婦関係には距離が生まれ、その後の関係も映画ほど単純には描かれません。

映画では家族が表面的には一緒に生活を続けていく姿を残すことで、「これから毎日、互いに秘密を知ったまま暮らす」という怖さが前面に出ています。

私は映画版のこの変更がかなり効いていると感じました。

別れてしまえば、少なくとも物理的には相手から離れられます。しかし同じ家で暮らし続けるなら、朝食を食べるときも、息子を送り出すときも、何気ない会話をするときも、二人の間にはキャロリン殺害の秘密があります。

派手な罰ではありませんが、とても重い結末です。

映画『推定無罪』の考察

真犯人が分かったところで物語を終わらせず、「なぜこんなことになったのか」まで考えると、『推定無罪』はさらに面白くなります。

バーバラは夫を陥れたのか

結果だけを見れば、バーバラが残した証拠によってラスティは殺人容疑をかけられています。

そのため「最初から夫へ罪をなすりつける計画だったのでは」と考えたくなります。

しかしバーバラの説明では、そこまでが目的ではありません。

彼女はラスティに自分の犯行を分からせようとして証拠を残しました。ところが警察や検察がその証拠を通常の殺人事件として追えば、当然ラスティ自身が容疑者になります。

つまりバーバラは計画的に現場を作った一方、その後に司法制度がどう動くかまでは読み切れていません。

この中途半端さが、かえって生々しく感じられます。

キャロリンだけが悪いのか

映画ではキャロリンの出世欲や複数の男性との関係が強調されます。

そのため観ていると、彼女が周囲の人間を利用していたように見える場面も少なくありません。

ただし、それと殺害されることはまったく別です。

キャロリンに問題のある行動があったとしても、バーバラが彼女の命を奪ってよい理由にはなりません。

そしてラスティも、自分の意思で不倫関係に入っています。

「誘惑されたから仕方なかった」と片付けてしまえば、ラスティ自身の選択が消えてしまうでしょう。

だから私は、この映画を誰か一人だけがすべて悪かった物語として見るより、複数の人物の欲望や嘘が積み重なった結果として見る方がしっくりきます。

ラスティは本当に被害者なのか

殺人容疑をかけられた点では、ラスティは間違いなく深刻な被害を受けています。

職業、信用、家庭、自由まで失いかねない状況に追い込まれました。

しかし物語全体では、彼は完全な被害者でもありません。

妻に隠れてキャロリンとの関係を持ち、関係が終わった後も彼女への執着を残し、さらに殺害事件を担当したときもその事実をすぐ公表しませんでした。

ラスティの弱さや身勝手さが、事件を複雑にしているのも事実です。

だからこそラストで彼が自分自身にも責任を感じる言葉には説得力があります。

映画『推定無罪』の見どころ

ストーリーだけを追うと複雑な法廷映画に見えますが、本作の魅力は派手などんでん返しだけではありません。むしろ全編を覆う静かな緊張感が、最後の真相を引き立てています。

ハリソン・フォードの抑制

ラスティを演じるハリソン・フォードは、感情を大きく爆発させる場面をあまり作りません。

『インディ・ジョーンズ』のような冒険活劇で見せるヒーロー像とはかなり違い、何を考えているのか簡単には読めない人物として演じています。

この抑えた演技のおかげで、観客は「ラスティは何か隠している」と感じ続けます。

実際、彼は不倫を隠しています。しかし殺人まで隠しているのかは分からない。

その微妙な疑いを最後まで保てるところが、ハリソン・フォードのラスティの面白さです。

法廷劇と夫婦劇が重なる

表面上は殺人事件をめぐる法廷サスペンスですが、その内側では夫婦の物語が進んでいます。

裁判で暴かれていくのは殺人事件の証拠だけではありません。

ラスティの不倫、バーバラの苦しみ、夫婦の間に積み重なった沈黙まで表面に出てきます。

つまりラスティは法廷で殺人容疑について裁かれる一方、家庭では夫として行った裏切りの結果と向き合わされているのです。

この二つの「裁き」が同時に進むからこそ、ラストの意味が深くなっています。

静かな演出がラストを怖くする

『推定無罪』は、次から次へと事件が起こるタイプのサスペンスではありません。

会話や裁判の場面が多く、127分という上映時間もあって、人によっては少しゆっくり感じるかもしれません。

私も観ていて、途中ではやや長く感じるところがありました。

ただ、その静かな進み方があるからこそ、最後のバーバラの告白が怖いんですよね。

大きな音楽や派手なアクションで驚かせるのではなく、ごく普通の家庭の中で真相が明かされる。その温度の低さが、観終わった後まで残ります。

映画『推定無罪』を観た感想

私が『推定無罪』を観て一番印象に残ったのは、やはり最後にバーバラが真犯人だと分かる場面でした。

それまで私はラスティの裁判がどう決着するのかを中心に観ていました。グラスが消え、検死の矛盾が明らかになり、ラスティが法的な危機から解放されたときには、ひとまず物語が終わったように感じます。

ところが、本当の意味での事件解決はそこからでした。

自宅の工具箱から凶器が見つかり、妻が犯人だったと分かった瞬間、それまで「夫を支える妻」に見えていたバーバラの表情まで違って見えてきます。

特に怖かったのは、バーバラが単純な悪人として描かれていないことです。

彼女はラスティに裏切られ、深く傷ついていました。それでも殺人が許されるわけではありません。その両方が同時に存在しているため、観客も簡単に気持ちを置く場所がありません。

そしてラスティも無罪になったからといって、爽やかに人生をやり直せるわけではありません。

真犯人が分かった。自分は殺人犯ではなかった。それなのに、むしろ真実を知ったことで以前より苦しい生活が始まる。

「真実を知ればすっきりする」とは限らないところが、この映画の後味の悪さであり、同時に面白さだと思います。

単なる犯人当てではなく、不倫の代償、夫婦の信頼、法律上の無罪と人間としての責任、真実と正義の違いまで考えさせられる作品でした。

幽霊も怪物も出てこないのに、観終わってからじわじわ怖くなる映画です。

よくある質問

最後に、映画『推定無罪』の真犯人や結末について、特に疑問になりやすいポイントをまとめます。

映画『推定無罪』のよくある質問

Q1. 映画『推定無罪』の真犯人は誰ですか?

A. 真犯人はラスティの妻バーバラです。ラスティとキャロリンの不倫によって深く傷ついたバーバラがキャロリンを殺害しました。裁判後、ラスティが自宅で血痕と毛髪の付いた凶器を見つけたことで真相が明らかになります。

Q2. ラスティは裁判で無罪になったのですか?

A. 一般には「無罪になった」と説明されますが、映画では陪審による無罪評決まで進んだわけではありません。グラスの紛失や検死資料の矛盾などによって検察側の証拠が崩れ、リトル判事が裁判を続ける根拠がないとして訴追を退けています。

Q3. バーバラはラスティを犯人にしようとしたのですか?

A. 単純にラスティへ罪をなすりつけることが目的だったわけではありません。バーバラはラスティに自分の犯行を気付かせようとして現場に手掛かりを残しました。しかし、その証拠によってラスティ自身が殺人容疑をかけられるところまでは想定していませんでした。

Q4. 原作でも真犯人はバーバラですか?

A. はい。スコット・トゥローの原作小説でも、キャロリンを殺したのはバーバラです。ただし映画ではバーバラの告白をより直接的に描くなど、真相の見せ方や裁判後の夫婦関係には違いがあります。

Q5. なぜラスティはバーバラを警察へ突き出さないのですか?

A. 最大の理由は息子から母親を奪いたくないからです。同時にラスティ自身も、自分の不倫がバーバラを追い詰め、事件のきっかけを作ったと考えています。そのため真相を知りながら告発せず、夫婦ともに秘密と罪悪感を抱えて生きる道を選びます。

まとめ|推定無罪が残す本当の罰

映画『推定無罪』の真犯人は、ラスティの妻バーバラです。

ラスティは不倫相手だったキャロリン殺害の容疑をかけられますが、裁判では決定的なグラスが紛失し、検死資料にも矛盾が見つかります。そのため検察側の証拠は崩れ、リトル判事によって審理が打ち切られました。

しかし事件はそれで終わりません。

ラスティは自宅で血痕と毛髪の残る凶器を発見し、キャロリンを殺した人物が妻バーバラだったことを知ります。

バーバラはラスティの不倫によって深く傷つき、キャロリンへの憎しみから殺人に及びました。そして現場にラスティとつながる手掛かりを残し、自分の犯行を夫に気付かせようとします。

それでもラスティは妻を告発しません。

息子から母親を奪いたくない。そして自分自身も、キャロリンとの関係によって悲劇の始まりを作ったという責任を感じているからです。

ラスティは殺人については無実でも、何の責任もない人間ではありません。

バーバラも逮捕されないからといって、何事もなかった人生へ戻れるわけではありません。

二人はキャロリンの死という秘密を共有したまま生きていくことになります。

法廷で裁かれないことと、罰が存在しないことは同じではない。

その皮肉まで含めて考えると、映画を観終わった後に『推定無罪』というタイトルが最も重く響いてくるのではないでしょうか。

-スリル・サスペンス/ホラー・ミステリー