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映画『インフェルノ』ネタバレ解説|あらすじ・結末とラストで落としたもの

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こんにちは、物語の知恵袋のふくろうです。

映画『インフェルノ』は、トム・ハンクス演じるロバート・ラングドンが、ダンテの『神曲』や歴史的な美術品に残された暗号を追いながら、人類規模の危機へ近づいていくミステリー・サスペンスです。

ただ、今回はラングドン自身が記憶を失った状態から始まり、シエナ、WHO、大機構、ブシャールと、それぞれ違う目的を持った人物たちが次々に登場します。初見では「結局、誰が味方だったの?」「シエナは何者?」「ラストで何を落とした?」と混乱しやすい映画なんですよ。

私もこの作品で面白いと感じるのは、前半と後半で物語の見え方が大きく変わるところです。序盤ではシエナが最も信用できる味方に見えるのに、真相を知ってから見返すと、その印象までひっくり返ります。

複雑に見える物語も、ゾブリストの計画、シエナの正体、WHOと大機構の関係を時系列で追えば、かなり分かりやすくなります。

この記事でわかること

  • 映画『インフェルノ』のあらすじと結末

  • シエナやゾブリストの正体と目的

  • ラストでラングドンが落としたもの

  • 映画版と原作小説の大きな違い

映画『インフェルノ』の基本情報

イメージ:映画『インフェルノ』で遺物を慎重に調べるラングドンとシエナ
イメージ:映画『インフェルノ』で遺物を慎重に調べるラングドンとシエナ

まずは『インフェルノ』がどんな映画なのかを確認しておきましょう。前2作と主人公は共通していますが、今回の事件は独立しているため、本作から観ても内容を追うことはできます。

インフェルノはどんな映画?

『インフェルノ』は2016年公開のアメリカ映画で、ダン・ブラウンの同名小説を映画化したロバート・ラングドンシリーズの映画第3作です。

監督はロン・ハワード。主人公ロバート・ラングドンを、『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』に続いてトム・ハンクスが演じています。

項目 内容
作品名 インフェルノ
原題 INFERNO
公開年 2016年
監督 ロン・ハワード
原作 ダン・ブラウン『インフェルノ』
主人公 ロバート・ラングドン
主演 トム・ハンクス
主な題材 ダンテ『神曲』地獄篇、人口問題、ウイルス

作品の基本情報については、ソニー・ピクチャーズ公式『インフェルノ』作品ページでも確認できます。

シリーズでは宗教、美術、歴史上の暗号を解くことが大きな特徴ですが、今回はそこへ記憶喪失、感染症、人口増加、裏切りが加わりました。

前作の内容を振り返りたい方は、映画『天使と悪魔』のネタバレ考察もあわせて読むと、ラングドンシリーズの違いが見えやすくなります。

主な登場人物と関係

本作を分かりにくくしている大きな原因が、登場人物の立場です。最初に名前と役割だけ押さえておくと、あらすじがかなり追いやすくなります。

人物 立場と役割
ロバート・ラングドン 宗教象徴学者。暗号を解く主人公
シエナ・ブルックス ラングドンを助ける女医。実はゾブリストの恋人
バートランド・ゾブリスト 人口増加を危険視し、インフェルノを作った人物
エリザベス・シンスキー WHO関係者。ゾブリストの計画を止めようとする
ハリー・シムズ 秘密組織「大機構」を率いる人物
クリストフ・ブシャール 独自の目的でウイルスを狙う人物
イニャツィオ・ブゾーニ ラングドンとデスマスクを調査した協力者

人物関係で最も大切なのは、シエナはゾブリスト側、シンスキーは阻止する側、大機構は途中からWHOへ協力する側になるという点です。

インフェルノのあらすじをネタバレ

ここからは結末までネタバレします。物語はラングドンがすでに事件へ関わった後から始まり、失われた記憶を取り戻しながら過去と現在がつながっていく構成です。

ラングドンが記憶喪失で目覚める

物語の冒頭、人口問題について過激な思想を持つバートランド・ゾブリストが、フィレンツェで追跡者から逃げています。

追い詰められたゾブリストは高い場所から身を投げて死亡。その直後、場面は病院へ変わります。

ロバート・ラングドンはフィレンツェの病院で目覚めますが、直前数日間の記憶がありません。さらに頭痛だけでなく、死体や苦しむ人々が現れる地獄のような幻覚まで見えていました。

ラングドンを治療していたのが女医シエナ・ブルックスです。

ところが病院へ警官姿のヴァエンサが現れ、ラングドンを襲撃。シエナは彼を連れて病院から逃げ出し、自宅へかくまいます。

この時点では、シエナは危険な状況からラングドンを救ってくれた唯一の味方に見えるでしょう。

しかし、この「シエナなら信用できる」という印象そのものが、後半のどんでん返しへ使われています。

地獄の見取り図から暗号を発見

シエナの家で所持品を確認すると、ラングドンのコートから見覚えのない物が見つかります。

中に入っていた装置を使うと、壁へボッティチェリの「地獄の見取り図」が映し出されました。

これはダンテの『神曲』地獄篇を題材にした作品ですが、宗教象徴学者であるラングドンはすぐに違和感を覚えます。本来の絵には存在しない文字や変更が加えられていたからです。

暗号をたどっていくと、ゾブリストの存在が浮かび上がってきます。

ゾブリストは人口が増え続ければ、食料や環境などの問題によって、いつか人類そのものが破滅すると考えていました。

そこで彼は、人類へ強制的に介入するためのウイルス「インフェルノ」を作ります。

◆ふくろうのワンポイント
『インフェルノ』という題名は、単にダンテの「地獄篇」を指すだけではありません。ゾブリストには「人口増加を放置した未来こそ地獄になる」という考えがあります。文学上の地獄と、彼が想像する未来の地獄が重ねられているわけです。

ダンテのデスマスクが消える

暗号を解いたラングドンとシエナは、フィレンツェのヴェッキオ宮殿へ向かいます。

重要な手掛かりになるのが、ダンテの顔をかたどったデスマスクです。

ところが展示されているはずのデスマスクがありません。

監視映像を確認すると、驚くべき人物が映っていました。

デスマスクを持ち出していたのは、記憶を失う前のラングドン本人だったのです。

しかも隣にはイニャツィオ・ブゾーニという男性がいます。

ラングドンには当然その記憶がないため、自分自身が泥棒だったかのように見える不可解な状況になります。

イニャツィオが残した天国の25

ラングドンと一緒にデスマスクを持ち出していたイニャツィオは、「天国の25を探せ」という趣旨の手掛かりを残していました。

ここでラングドンは、ダンテ『神曲』の天国篇第25歌を連想します。

そこから導き出された場所が、フィレンツェにあるサン・ジョヴァンニ洗礼堂でした。

洗礼堂でデスマスクを見つけ、裏側を調べると、さらに次の暗号が現れます。

デスマスクは単なる美術品ではなく、ゾブリストが次の場所を示すために利用した暗号装置でもあったわけです。

ヴェネツィアからイスタンブールへ

デスマスクの暗号を読んだラングドンたちは、次の目的地がヴェネツィアだと考えます。

しかし調査を続けるうちに、最初の解釈が間違っていたと分かります。

鍵となったのは、ヴェネツィア総督エンリコ・ダンドロです。

ダンドロの墓があるのはヴェネツィアではなく、かつてコンスタンティノープルと呼ばれていた現在のイスタンブール。

つまり、ゾブリストが暗号で示した最終地点はトルコのイスタンブールでした。

そして、この答えへ到達した直後に物語最大の裏切りが起こります。

シエナの正体と裏切りを解説

イメージ:映画『インフェルノ』で手にした遺物を真剣な表情で調べるシエナ
イメージ:映画『インフェルノ』で手にした遺物を真剣な表情で調べるシエナ

序盤からラングドンを助け続けてきたシエナ。しかし彼女は偶然事件へ巻き込まれた女医ではありませんでした。

シエナはゾブリストの恋人

シエナの正体は、ゾブリストの恋人であり、彼の思想へ深く影響を受けた人物です。

ゾブリストが死んでも計画が止まるわけではありません。

彼が残した計画を引き継ぎ、ウイルスを拡散させようとしていたのがシエナでした。

つまりラングドンを助けたのも、単純な善意だけではありません。

ゾブリストが残した暗号を自分だけでは解けないため、宗教、美術、歴史に詳しいラングドンの能力が必要だったのです。

病院から一緒に逃げ、味方として行動しながら、ラングドンに答えを導き出させる。かなり大胆な利用方法ですよね。

なぜシエナは命まで捨てた?

シエナの行動を「ゾブリストを愛していたから」の一言だけで片づけると、少し足りません。

彼女自身も人口増加に危機感を抱き、ゾブリストの思想へ共鳴していました。

シエナにとっては、ゾブリストが死んだ後も計画を続けることが彼の意思を受け継ぐ行為であり、同時に未来の人類を救う行為でもあったのでしょう。

だからラングドンから説得されても止まりません。

ゾブリストやシエナが人口問題を危惧していることと、他人の生命や身体へ本人の同意なく介入することは別の問題です。本作は彼らの行動を正解として描くのではなく、「人類を救う目的なら、どんな手段まで許されるのか」という問いを残しています。

WHOと大機構の関係を解説

『インフェルノ』を難しく感じるもう一つの理由が、WHOと秘密組織「大機構」の関係です。最初は敵対しているため、どちらがラングドンの味方なのか分かりにくくなっています。

シンスキーは本当の敵ではない

エリザベス・シンスキーはWHO側の人物です。

序盤ではラングドンを追っているため敵のようにも見えますが、本来はゾブリストの計画を阻止しようとしていました。

しかも記憶を失う以前のラングドンへ調査を依頼していたのもシンスキーです。

つまり、ラングドンは病院で目覚めるより前から事件の捜査へ関わっていました。

記憶を失ったため、その重要な事実まで本人が忘れてしまっていたわけです。

大機構はなぜWHOと戦っていた?

ハリー・シムズが率いる「大機構」は、依頼人の秘密を守り、特殊な依頼を遂行する組織として登場します。

当初の依頼人はゾブリストでした。

WHOがゾブリストを危険人物として追う一方、大機構は依頼人であるゾブリストを守るために動いています。そのためWHOとは敵対する関係でした。

ところがゾブリストの死後、シムズは預かっていた映像などから計画の全貌を知ります。

そこで初めて、依頼人の秘密を守るだけでは済まない、人類規模の危機だと理解しました。

大機構は途中からゾブリストの計画を止める側へ回り、WHOと協力します。

ブシャールにも別の目的がある

さらにややこしいのがクリストフ・ブシャールです。

ブシャールは途中でラングドンへ接近し、シンスキーを信用してはいけないような話をします。

しかし彼も純粋に人類を救おうとしているわけではありません。

狙いはゾブリストが作ったものを自分の利益のために利用することでした。

シエナも信用できない。ブシャールも信用できない。WHOは敵に見えたけれど、本当は味方。

このように立場が何度も入れ替わるため、初見では混乱しやすくなっています。

ラングドンはなぜ記憶喪失?

イメージ:映画『インフェルノ』で頭部を負傷し病院のベッドで眠るラングドン
イメージ:映画『インフェルノ』で頭部を負傷し病院のベッドで眠るラングドン

物語冒頭では、ラングドンは頭部を負傷したため記憶を失ったように説明されます。しかし、これも真実ではありません。

記憶は意図的に奪われていた

ラングドンはシンスキーとゾブリストの計画を追っていた際、大機構によって捕らえられていました。

その後、薬物の影響によって直前の記憶を失います。

つまり、病院で目覚めた時のラングドンが何も覚えていないのは偶然ではありません。

地獄のような幻覚にも薬物の影響が関係しています。

さらにラングドンを信用させるため、彼の周囲には「本物の病院で治療されている」と思わせる状況まで用意されていました。

◆ふくろうのワンポイント
ここを理解すると序盤が一気につながります。ラングドンだけでなく観客まで記憶喪失の主人公と同じ情報量に置かれているんですよ。だから最初はWHOまで悪者に見える。結末を知った後に見返すと、序盤の印象がかなり変わります。

インフェルノのラストをネタバレ

シエナの正体と最終目的地が分かると、物語は謎解き中心の展開から、ウイルス拡散を阻止するタイムリミット型サスペンスへ変わります。

ウイルスは地下貯水池にある

最終的にラングドンたちが向かうのはイスタンブールです。

アヤソフィアにあるエンリコ・ダンドロの墓などを手掛かりに、ゾブリストがウイルスを隠した場所へ近づいていきます。

たどり着いたのが、巨大な地下貯水池として知られるイェレバタン・サラユ。

暗く、水が広がる巨大な地下空間は、まるでダンテの描いた地獄を現代へ移したようにも見えます。

その水中にはゾブリストが作ったウイルスを入れた袋が設置されていました。

しかも施設には多くの人が集まっています。

ここでウイルスが放出され、人々が各地へ移動すれば、被害が世界へ広がる可能性があります。

シエナは自ら爆弾を起動する

シエナもゾブリストの計画を完成させるため地下貯水池へ現れます。

爆発によってウイルスの容器を破壊し、拡散させる計画でした。

ところが起爆装置による爆破が思うようにいきません。

ラングドンは最後までシエナを説得しようとします。

しかし彼女は計画を諦めず、自ら水中へ入り、直接爆発を起こそうとしました。

その結果、シエナは爆発によって死亡します。

シムズも最後の戦いの中で命を落とします。

映画ではウイルス拡散を阻止

一方、シンスキーたちはウイルスを回収するために動いていました。

最終的にウイルスは安全なケースへ収容され、持ち去ろうとする者たちの行動も阻止されます。

映画版の結末では、ゾブリストが計画した世界規模のウイルス拡散は防がれます。

ここは原作小説と決定的に違うところです。

ラストで落としたものは何?

イメージ:映画『インフェルノ』のラングドンが IDを落とすシーン
イメージ:映画『インフェルノ』のラングドンが IDを落とすシーン

事件が終わった後、ラングドンはフィレンツェへ戻ります。そしてヴェッキオ宮殿へ入り、持ち出されていたダンテのデスマスクを元の展示場所へ返します。

ここで検索されることが多いのが、「ラングドンが最後に床へ落としたものは何だったのか」という疑問です。

マルタのIDカードと考えられる

この小さな物について、映画内では改めて説明されませんが他のサイトでも解説されている通り、マルタのIDと考えるのが自然です。

ラングドンはヴェッキオ宮殿から逃げる際、マルタのIDカードを持ったままになっていました。そしてラストでは、事件の発端となったダンテのデスマスクを元の展示場所へ戻しています。その流れでIDカードも返すことで、

「デスマスクを返す=事件によって乱れたものを元へ戻す」
「IDカードを返す=自分が借りたもの・持ち出したものを清算する」

という二重の意味を持たせていると解釈できます。

つまり、ラングドンがデスマスクとIDカードを返す行動は、混乱した事件を終わらせ、日常へ戻ることを象徴していると解釈すると最もつながりやすくなります。

デスマスクを返すラストの意味

私は、この場面が単なる後片付け以上の意味を持っているように感じます。

ラングドンは事件の始まりで記憶を奪われ、自分が何をしていたのかさえ分からない状態へ落とされました。

しかも監視映像では、自分自身がデスマスクを盗んでいます。

その混乱から始まった物語が、最後には本人の手によってマスクを元の場所へ戻すことで終わる。

デスマスクと借りたIDカードを元へ戻す行為は、「事件によって狂った状態を元へ戻し、ラングドン自身も日常へ帰る」という締めくくりとして見ることができます。

派手なウイルス争奪戦の後に、とても静かな場面を置いたのも印象的です。

イニャツィオは何者だった?

映画『インフェルノ』で分かりにくい人物の一人が、イニャツィオ・ブゾーニです。

デスマスク調査に協力した人物

イニャツィオは、監視カメラの映像でラングドンと一緒にダンテのデスマスクを持ち出していた男性です。

ラングドンが記憶を失う前の調査へ協力しており、ゾブリストの暗号を解くために行動していました。

そして後に「天国の25」という手掛かりを残します。

これによってラングドンはダンテ『神曲』天国篇第25歌を連想し、サン・ジョヴァンニ洗礼堂へ向かうことができました。

映画ではイニャツィオについて多くを説明しないため、「急に出てきたこの人は誰?」となりやすいのですが、役割としては記憶を失う前のラングドンと暗号を追っていた協力者と覚えておけば十分です。

インフェルノという題名の意味

タイトルの「インフェルノ」は英語で地獄を意味し、本作ではダンテの『神曲』地獄篇と直接結び付いています。ただし、それだけではありません。

ゾブリストが恐れた未来の地獄

ゾブリストは人口増加が続けば、食料不足や環境問題などによって人類社会が破滅すると考えています。

彼にとって何もしない未来こそが「地獄」でした。

そこで自分の計画をダンテの地獄になぞらえ、美術作品、詩、歴史的建造物を暗号として利用します。

古典文学に描かれた地獄と、現代人が生み出すかもしれない地獄。この二つを重ねたところにタイトルの意味があります。

CERCA TROVAの意味

暗号解読の途中で重要になるのが「CERCA TROVA」という言葉です。

意味は「探せ、さらば見つからん」「探し求めよ」といったニュアンス。

この言葉がフィレンツェのヴェッキオ宮殿にあるヴァザーリの壁画へつながり、ラングドンたちを次の謎へ導きます。

『インフェルノ』では、暗号そのものが答えなのではありません。

一つ解くと次の美術品や建物へ進み、そこでまた別の暗号が待っている。この連鎖がラングドンシリーズらしい見どころです。

映画版と原作の違いを解説

映画『インフェルノ』の結末を理解するうえで欠かせないのが原作との違いです。同じ物語を基にしていますが、ラストはかなり大胆に変更されています。

原作ではウイルスを止められない

映画版では、ラングドンたちが地下貯水池へ間に合い、ウイルス拡散を阻止します。

しかし原作では違います。

ラングドンたちが真相へ到達した時点で、ゾブリストの作ったものはすでに世界へ拡散しています。

つまり主人公は計画を阻止できません。

「危険なウイルスを発見し、ギリギリで世界を救う」という映画版のクライマックスそのものが、原作には成立しないわけです。

原作は大量殺人ウイルスではない

さらに重要なのが、ゾブリストが作ったものの性質です。

映画では人類へ壊滅的な被害を与える危険なウイルスとして描かれています。

それに対して原作では、単純に大量の人間を死亡させるものではありません。

一定割合の人間の生殖能力へ影響を与え、長期的に人口増加を抑えるよう設計されています。

だから原作の方が答えを出しにくいんですよ。

計画はすでに実行されている。そして元へ戻せない。登場人物たちは「止めるかどうか」ではなく、すでに変わってしまった世界をどう受け止めるのかという問題へ向き合わされます。

原作ではシエナも死亡しない

映画版のシエナは最後までゾブリストの計画を遂行しようとし、地下貯水池で死亡します。

一方、原作のシエナは映画よりかなり複雑です。

ゾブリストへの愛情や人口問題への理解を持っているものの、単純な「計画を完成させる悪役」だけではありません。

そして原作ではシエナは死亡しません。

映画はシエナを明確な対立側へ配置し、ラングドンたちが彼女を止めるという構図にしたことで、クライマックスをかなり分かりやすくしています。

◆ふくろうのワンポイント
映画だけを観ると「危険な計画を阻止して世界を救った」というすっきりした結末です。でも原作まで知ると印象は大きく変わります。原作はゾブリストの方法を肯定するわけではなく、「すでに起きてしまったことを人類はどう受け止めるのか」という、かなり重い問いを残しています。

インフェルノが分かりにくい理由

『インフェルノ』は内容を順番に追えば理解できます。それでも初見で難しく感じやすいのには理由があります。

主人公自身が真相を知らない

一般的なミステリーでは、主人公が持っている情報を観客も共有しながら事件を追います。

ところが本作では、ラングドン自身が記憶を失っています。

自分がなぜフィレンツェにいるのか。

なぜデスマスクを盗んだのか。

シンスキーは敵なのか。

誰に追われているのか。

本人にも分かりません。

観客もラングドンと同じ混乱へ放り込まれるため、前半は意図的に全体像が見えない作りになっています。

敵と味方が何度も入れ替わる

さらに、シエナは味方から敵へ。

WHOは敵のように見えて実際には阻止する側。

大機構はゾブリストを守る側からWHOへ協力する側へ。

ブシャールは味方のような話をしながら、別の思惑を持っています。

立場が固定されていないため、人物名だけを追っていると混乱してしまいます。

「誰の所属か」よりも「今、その人はインフェルノを拡散したいのか、止めたいのか」で見ると理解しやすくなります。

暗号を解く速度が速い

ボッティチェリ、ダンテ、ヴァザーリ、デスマスク、サン・ジョヴァンニ洗礼堂、ヴェネツィア、エンリコ・ダンドロ、イスタンブールと、手掛かりが次々に登場します。

一つの暗号を理解したと思ったら、すぐ次の目的地へ移動するため、初見では情報を消化する時間がほとんどありません。

ただ、このスピード感は欠点だけではないでしょう。

前半は美術ミステリー、後半はウイルスを巡るタイムリミット型サスペンスと、作品の雰囲気が変化していくことで最後まで勢いがあります。

インフェルノの結末を考察

イメージ:映画『インフェルノ』で壁に投影された地獄の見取り図を調べるラングドンとシエナ
イメージ:映画『インフェルノ』で壁に投影された地獄の見取り図を調べるラングドンとシエナ

表面的には「ラングドンたちが悪役の計画を止めた」という結末ですが、その奥には少し厄介な問題が残っています。

ゾブリストは何を救いたかった?

ゾブリスト本人は、自分を単なる破壊者とは考えていなかったはずです。

彼が恐れているのは、人口増加によって人類そのものが破滅する未来。

つまり本人の中では、インフェルノは人類を滅ぼすためではなく、人類を残すための手段でした。

ここが本作の嫌なところでもあり、面白いところでもあります。

目的だけを言えば「未来の人類を守る」。しかし、そのために現在生きている人々の生命や身体を本人の意思とは関係なく操作する。

目的が善意なら手段まで正当化されるのか。

映画は最終的に計画を阻止することで答えを示しますが、ゾブリストが問題視した人口増加そのものが解決したわけではありません。

シエナの愛は正義ではない

シエナについても同じです。

彼女にはゾブリストへの愛があります。

さらに「未来の人類を救わなければならない」という使命感まで重なっています。

しかし、愛している相手の意思を受け継ぐことと、そのために世界中の人間を危険へさらすことは別問題です。

ラングドンとシエナが最後に決定的に分かれるのは、この部分でしょう。

ラングドンも人類を救いたい。シエナも自分なりに人類を救いたい。

目的が完全に正反対なのではなく、誰が他人の未来を決める権利を持つのかという部分で対立しているのです。

デスマスク返却で物語が閉じる

だからこそ、最後にラングドンがデスマスクを返す場面が効いてきます。

世界規模の危機を扱っていた物語が、最後は美術館の一角で静かに終わる。

デスマスクは元の場所へ。

借りたIDカードも元の持ち主へ。

そしてラングドン自身も、記憶を奪われる前の日常へ戻っていきます。

事件によって位置を変えられた物を、一つずつ本来の場所へ戻すようなラストです。

インフェルノのよくある質問

最後に、映画を観た後に残りやすい疑問をまとめます。

映画『インフェルノ』に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 映画『インフェルノ』のラストで落としたものは何ですか?

A. 映画では明確な説明はありませんが、序盤の逃走時に宮殿職員のマルタから借りたネックストラップ付きのIDカードと考えるのが自然です。ダンテのデスマスクとともに借りた物まで返し、事件前の状態へ戻した場面として解釈できます。

Q2. シエナ・ブルックスの正体は何ですか?

A. シエナはゾブリストの恋人で、彼の人口問題に対する思想にも深く影響を受けていました。ラングドンを助ける味方として登場しますが、実際には彼の暗号解読能力を利用し、ゾブリストの計画を完成させようとしていました。

Q3. ラングドンは本当にデスマスクを盗んだのですか?

A. 記憶を失う前のラングドンがイニャツィオとともにデスマスクを持ち出していたのは事実です。ただし金銭目的の盗難ではなく、ゾブリストが残した暗号を調査するためでした。その後に記憶を失ったため、本人は監視映像に映った自分の行動を覚えていませんでした。

Q4. 映画版と原作の結末はどう違いますか?

A. 映画ではラングドンたちがウイルス拡散を阻止し、シエナは死亡します。一方、原作ではラングドンたちが到着する前にすでに世界へ拡散しており、シエナも死亡しません。原作で描かれるものの性質も映画とは大きく異なります。

Q5. 『ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』を先に観る必要はありますか?

A. 必須ではありません。主人公ロバート・ラングドンは共通していますが、『インフェルノ』の事件自体は独立しています。前2作を観ているとラングドンの専門知識やシリーズの雰囲気を理解しやすくなりますが、本作からでも物語を追えます。

映画『インフェルノ』まとめ

映画『インフェルノ』は、記憶を失ったロバート・ラングドンが、ダンテの『神曲』や美術作品に仕掛けられた暗号を解きながら、ゾブリストが残した計画へ迫る物語です。

複雑に感じる場合は、次の順番だけ押さえておくと全体像が見えます。

  • ゾブリストは人口増加を恐れインフェルノを作った
  • ラングドンはシンスキーの依頼で計画を調査していた
  • 大機構によって記憶を失い偽の状況へ置かれた
  • シエナはゾブリストの恋人で計画を引き継ごうとしていた
  • 最終的に映画版ではウイルス拡散を阻止した
  • ラングドンは最後にデスマスクとIDカードを返したと考えられる

特にラストで小さな物を落とす場面は見逃しやすいものの、序盤に借りたマルタのIDカードだと考えると物語がきれいにつながります。

デスマスクだけでなく借りた物まで返すことで、事件によって崩れた状態を元へ戻し、ラングドン自身も日常へ帰っていく。

そう考えると、一見何気ない最後の数秒まで『インフェルノ』の締めくくりとして意味を持っているように感じます。

そして原作まで知ると、映画では世界を救って終わった物語が、まったく違う問いを残していることにも気づきます。

あなたは、危機を阻止して終わる映画版と、主人公たちが間に合わない原作版。どちらの『インフェルノ』が心に残るでしょうか。

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