おまえの罪を自白しろは面白い？面白くない？評価を徹底分析

映画『おまえの罪を自白しろ』は、政治と家族の葛藤を描いた社会派サスペンスとして話題を集めた一方で、「面白い」「面白くない」と評価が大きく分かれる作品でもあります。視聴前の判断材料にしたいという方のために、本記事では実際の評価を分析し、高評価の意見と低評価の意見の違いを多角的に掘り下げていきます。

さらに、主演・中島健人の演技が作品に与えた影響や、原作ファンから見た映画の印象、物語に仕掛けられた複雑な伏線の巧みさにも注目。知れば作品がもっと深く味わえる雑学情報も交えながら、あらゆる角度から本作の魅力と評価の分かれ目を検証します。

これから観るか迷っている方にとって、有益なヒントとなる内容を網羅していますので、ぜひ参考にしてください。

本作品のネタバレ込みですが、あらすじや原作との違いなど詳細に解説した記事もご覧になりたい方は以下の記事をご参照ください！
おまえの罪を自白しろネタバレ解説｜原作との違いと犯人の真相まとめ - 物語の知恵袋

おまえの罪を自白しろは面白い？面白くない？実際の評価を検証

評価を分析｜世間の反応を全体整理

評価の傾向は三者三様

映画『おまえの罪を自白しろ』の評価は参考リンクやSNSなどを分析すると、高評価が41％、中評価が35％、低評価が24％という割合に分かれており、極端に評価が偏っていないのが特徴です。つまり、全体としては「賛否が分かれる作品」と言えます。
参考リンク
おまえの罪を自白しろ - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画
おまえの罪を自白しろ : 作品情報・キャスト・あらすじ - 映画.com

高評価と中評価が合わせて76％

高評価と中評価を合わせると7割を超えており、一定の満足度を得た観客が多かったことが伺えます。この数字から、致命的な欠点がある作品ではなく、むしろ「好みが分かれるタイプの映画」であることがわかります。

作品ジャンルと期待値の差が評価に影響

一方で、評価のバラつきには理由があります。ジャンルとしては社会派サスペンスに分類される本作ですが、予告やビジュアルでは政治陰謀ミステリーを期待した人も多く、実際は家族ドラマ寄りの構成だったため期待と実態にズレが生じました。その点が中評価・低評価に影響したと考えられます。

低評価の多くは「肩透かし感」に起因

低評価層からは、「犯人が政治関係者ではないこと」や「物語のスケールが小さく感じた」といった「肩透かしを食らった」との声が目立ちます。ただし、その一方で人間ドラマとしての完成度は評価されています。

まとめ：視点によって印象が変わる作品

以上のように、本作は観る人の視点によって印象が大きく異なる映画です。「政治劇を期待した人」と「人間ドラマを受け入れた人」の間で評価が分かれており、その構成上、どうしても満場一致とはなりにくい構造になっています。ですが、演出・キャスト・テーマの重厚さに魅力を感じた人にとっては高評価に値する作品であると言えるでしょう。

高評価の意見（41％）を分析｜共感を集めた理由

物語の緊迫感とタイムリミット設定

まず高く評価されたポイントとして挙げられるのが、「24時間のタイムリミットサスペンス」という構成が生む緊張感です。物語の中で刻一刻と時間が進んでいくなかで、登場人物たちが取る行動や決断が視聴者にスリルと焦燥感を与えます。

特に記者会見のシーンや幹事長との交渉は、観ている側も手に汗握る展開だったと感じた人が多く、ストーリーの進行テンポが心地よかったとの声が多数ありました。

キャスト陣の演技力と説得力

次に注目されたのが、中島健人さんや堤真一さんをはじめとするキャスト陣の演技力です。中島健人さんの、正義感と葛藤を抱える主人公・晄司の演技は、「これまでと違う一面が見られた」と評価されています。

また、堤真一さんが演じる宇田清治郎の、政治家としての威厳と父としての葛藤を使い分ける演技には重厚感と説得力があったと高く評価されました。ベテランと若手のバランスがよく、全体的な演技の安定感も好評でした。

意外性ある真相と伏線の回収

犯人が政治関係者ではなく、支援ボランティアの一般人だったという展開も、予想外で驚いたという声が一定数あります。この「裏切られた感覚」が心地よく、物語に引き込まれたという評価につながっています。

さらに、途中にちりばめられた伏線が、終盤でしっかりと回収されていく点も「脚本がよく練られている」と評価されています。単なる誘拐ミステリーではなく、家族の過去や政治の闇が複雑に絡む構成に満足した人が多かったです。

テーマ性に対する評価の高さ

本作は政治、家族、報道といった社会的なテーマをバランス良く組み込んでいます。特に「家族を守るために政治家がどこまで自白するか」という葛藤が、多くの人に響いたようです。

また、報道記者・神谷美咲のセリフ「いつも犠牲になるのは名もなき庶民」には、現代社会へのメッセージを感じたという声もありました。現実とリンクした内容が共感を生みやすかったと言えるでしょう。

まとめ：テーマと演技の融合が評価を底上げ

以上から、高評価の理由は「社会派ドラマと人間ドラマの融合」「俳優陣の演技力」「構成の巧みさ」が三本柱となっています。期待していた“政治の裏側”という部分に加え、“家族の物語”としても見応えがあったことで、深みある作品として受け止められたようです。

中評価の意見（35％）を分析｜惜しいポイントとは？

構成と展開にあと一歩の緻密さが欲しい

全体の35％を占めた中評価の声では、「惜しい」と感じさせる要素がいくつか共通しています。なかでも多かったのが、物語の構成力に対する指摘です。

タイムリミット24時間という緊迫感ある設定にもかかわらず、事件の展開が「予想の範囲内」や「盛り上がりに欠ける」と感じる人が多く見られました。特に、犯人が判明する過程に捻りが少なかった点は、サスペンスとして物足りなさを抱かせたようです。

また、物語の後半における政治的な駆け引きはやや駆け足に感じられ、「もっと深堀りしてほしかった」という意見もありました。

名演技と重厚テーマに救われた印象

一方で、俳優陣の演技力や社会派テーマの扱いは評価されており、中でも堤真一・中島健人の演技は「見応えがあった」との声が多数寄せられています。

特に中島健人演じる晄司が、序盤の未熟な秘書から政治家として覚醒していく様子は、多くの視聴者に「成長ドラマ」として受け止められました。

しかし、それでもストーリー上のトリック性や伏線の回収には「あと一歩の詰めが欲しかった」との意見が根強く、中評価に留まった理由といえるでしょう。

中間層の評価は「惜しさ」の裏返し

こうした中評価層は、作品全体のコンセプトや設定には期待していた層でもあります。そのため、良作と感じつつも「名作」と呼ぶには何かが欠けていたというバランス感覚が、この35％という割合に表れています。

低評価の意見（24％）を分析｜期待外れと言われた点

サスペンスとしての完成度に疑問の声

低評価をつけた24％の視聴者の多くが口にしたのは、「サスペンス作品としての期待を裏切られた」という点です。

犯人の動機や事件の真相が、政治とは無関係な個人的事情だったという展開に、「肩透かしを食らった」と感じた人が少なくありません。タイトルや宣伝から“政界の闇”を暴く物語を想像していた人にとっては、終盤の真相が想像以上にスケールダウンしていたように映ったのです。

ご都合主義に見える展開がマイナスに

さらに、晄司が急に政治的な切れ者として覚醒する描写には、「リアリティが欠けている」との指摘が多数ありました。

特に、幹事長との交渉をスムーズにまとめ、父の自白へと導く展開は、視聴者の中で「都合よすぎる展開」と受け止められたケースが多いようです。

また、清治郎のキャラ設定に一貫性がなく、序盤は冷徹だったのに突然改心するような演出に違和感を覚えたとの声も散見されました。

社会派テーマを活かしきれなかった印象

本来であれば「政治」「報道」「家族愛」といった重厚なテーマが絡み合う群像劇として展開されることを期待されていた本作。

しかし、実際には真犯人が市民の姉弟というオチだったため、「社会派サスペンスとしては中途半端」という評価が目立ちました。

また、「結局、政治家たちは大きな報いを受けていないのでは？」という指摘もあり、倫理的な決着に納得できなかった層が低評価を支持している構図が浮かび上がります。

期待値とのギャップが評価を下げた要因

作品自体のクオリティが極端に低いというよりは、期待していた内容との乖離が評価を下げたという傾向が強く見られます。

あくまで「重厚な政治サスペンス」を期待して観た場合、本作はそれを満たすには至らなかった。このギャップこそが、24％の低評価を生んだ最大の要因だと考えられます。

原作ファンの目線から見た映画の印象

原作との違いに驚きの声も多い

映画『おまえの罪を自白しろ』を原作ファンの視点で見ると、最も大きな違和感は「犯人の正体」と「主人公のキャラクター」に集まります。原作では家族間で起こる殺人事件が主軸となり、姉が夫を殺害し、さらに不倫をめぐって弟も命を落とすという重厚な人間ドラマが展開されていました。これに対し、映画版では犯人がまったくの第三者に置き換えられ、政治の世界を背景とした誘拐劇へと内容がシフトしています。

原作ファンの多くが、「なぜ原作のサスペンス性をそこまで変えたのか」と戸惑いを覚えたのは事実です。

主人公・晄司のキャラ設定が別人級

さらに大きなギャップは、主人公・宇田晄司の性格描写です。原作の晄司は計算高く冷静な頭脳派で、政界の駆け引きを自ら主導するタイプの人物として描かれています。特に「指揮権発動」によって父を守る発想は、原作晄司ならではの戦略的思考の表れでした。

一方で、映画の晄司はどちらかというと直情的で、正義感に突き動かされる“熱血型”。原作と映画では、もはや別人といえるほどの印象差があります。この改変によって、原作ファンは「晄司らしさがなくなった」と感じた人も多かったようです。

ただし、映像化の魅力も一定の評価あり

とはいえ、すべての原作ファンが落胆しているわけではありません。複雑な原作の内容を映画という限られた時間の中でどう表現するかを考えると、改変には一定の合理性があるという冷静な見方もあります。特に、映画では政治劇のテンポ感や、会見シーンなど映像でしか表現できない迫力が評価されており、「映像作品としては良かった」と肯定する声も見受けられます。

原作と映画は“別物”として楽しむ姿勢が必要

最終的には、原作と映画は別作品として楽しむのが最も無理のない見方です。原作は心理サスペンスとして、映画は政治ドラマ・サスペンスとして、それぞれ異なる切り口で描かれているため、比較ではなく“解釈の違い”として受け止める姿勢が求められるでしょう。

家族ドラマとしての評価はどうだった？

政治と家族の葛藤を描いた構成に注目

『おまえの罪を自白しろ』のもう一つの軸が、政治家一家の家族関係に焦点を当てたドラマ性です。作品の背景には大きな政治的スキャンダルがある一方で、実際の物語の核心は「家族の絆」や「父と子の対立と和解」に置かれています。このため、サスペンスでありながらも人間ドラマとしての要素が色濃く、観客の心に訴える構成になっています。

晄司が父に反発しながらも、最終的には「家族を守るために政治の世界へ戻る」という展開は、家族愛を感じさせるものです。

父・清治郎の“変化”にリアリティ

堤真一演じる父・宇田清治郎は、初めは利権まみれの政治家として描かれていました。しかし、孫娘が誘拐されるという非常事態に直面することで、政治家としての立場と、家族の命を天秤にかける葛藤が生まれます。その結果として彼が自白を決意する流れには、「家族のために犠牲を選ぶ父親像」がにじんでおり、多くの視聴者が心を動かされました。

ただし、原作の清治郎は終始ダーティーな政治家として描かれているため、「映画での改心描写には違和感がある」という意見もあります。

感情のやり取りが印象に残るシーンに

映画内では、父と息子の口論や、姉・麻由美の混乱する姿、母が語る家族への思いなど、感情のぶつかり合いを描いたシーンが多数登場します。こうしたやり取りが、物語のテンポを落とすことなく、サスペンスの緊張感に“温度”を加える役割を果たしていました。

これにより、「家族の苦悩や絆がしっかり伝わった」「単なる政治映画ではない」といった肯定的な評価も多く寄せられました。

一部では“家族描写が浅い”との指摘も

一方で、「家族ドラマとして描くには描写が浅い」「感情移入するほど掘り下げられていない」との声もありました。政治要素が強く、家族関係の描写が補足的に扱われた印象を受けた人にとっては、ややバランスに欠ける構成だったとも考えられます。

総じて、重層的なテーマ性が評価された

このように、本作は「家族」と「政治」という異なる要素を一つの作品に融合させた点で評価されました。政治ドラマをベースにしつつ、家族愛や世襲の現実にも踏み込んだ点は、単なるサスペンスにはない深みを与えたと言えるでしょう。

そのため、家族ドラマとしても一定の評価を得ており、「観てよかった」と感じた人は少なくありません。

おまえの罪を自白しろは面白い？面白くない？視聴前の判断材料に

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ロケ地に秘められた“演出意図”

本作の主要シーンは、実在の建物を政治の舞台に見立てて撮影されています。例えば、記者会見の場面は栃木県庁の本庁舎で撮影されており、そのクラシカルな建物の造りが「歴史と権力の重み」を象徴していると話題です。加えて、冒頭と終盤の政治会議シーンは、千葉の『ホテル ザ・マンハッタン』で撮影。あえて国会ではなくホテルを使うことで、政治の裏側をより柔軟に演出できる空間として機能していた点が見逃せません。

主題歌にB’zが起用された背景

主題歌には、ロックバンド・B’zの「Dark Rainbow」が使われています。これは、「罪」と「真実」に揺れる物語に合わせ、感情の深層を揺さぶる重厚なサウンドが求められた結果の選曲です。映画のラストに流れるこの楽曲は、登場人物たちの“覚悟”と“喪失”の余韻を強く残し、作品全体の印象をさらに引き締めています。

タイトルに込められた意味

『おまえの罪を自白しろ』という直接的なタイトルは、犯人から政治家・宇田清治郎への“要求”を示す言葉ですが、それだけではありません。実は、登場人物それぞれが抱える「過去の罪」と「心の葛藤」を象徴しているとも解釈できます。タイトルそのものが、映画全体を貫く問いかけとして機能している点は、深い意味を持った演出の一つです。

原作者・真保裕一との意見交換

脚本化にあたっては、原作者・真保裕一氏との密な意見交換が行われたとされています。ただし、映画版はあくまで「映像作品として独立したメッセージを伝える」ことを重視し、原作とは異なる展開やキャラ設定が意図的に採用されたことが明らかになっています。こうした柔軟な対応が、映像ならではの魅力につながっているのです。

実は“再開発地”にもモデルがある？

物語の鍵となる“再開発地域”には、特定の実在地をモデルにしたという噂も存在します。とくに「緑地公園の整備によって埋められた過去が明らかになる」という構図は、都市再開発に伴う社会問題への風刺とも受け取れます。公式には明言されていませんが、そうした“リアルとリンクする要素”が作品に深みを与えていることは間違いありません。

複雑な伏線と回収の巧さに注目

一見単純な誘拐事件の裏に多層構造

この作品の魅力の一つは、単なる「誘拐サスペンス」では終わらない点にあります。物語序盤では、政治家の孫娘が誘拐されたことが発端となりますが、進行するにつれて事件の裏に複数の「隠された真実」が明らかになります。例えば、犯人が政治家の支援者として接近していたことや、誘拐の目的が「罪の告白」であることなど、徐々に伏線が回収されていく構成は見事です。

「橋の建設地変更」が語る政治の裏側

物語の中で頻繁に登場する「橋の建設地変更」という設定は、単なる政策上の問題ではなく、利権の絡む政治的取引の象徴として描かれています。最初は些細な背景のように思えたこのエピソードが、終盤にかけて事件の核心へと直結する構造は、伏線として非常に巧妙です。しかも、この件が総理の関与へとつながることで、観客の予想を裏切る展開にもなっています。

初美と勲の過去が鍵を握る

犯人である姉弟の過去もまた、中盤以降に回収される重要な伏線の一つです。彼らの動機が“過去に隠した殺人の証拠”にあったことが明かされることで、それまで政治サスペンスだと思われていた物語が、急に「個人的な罪と贖罪の物語」へと変化します。この転換が、物語の印象を大きく左右するポイントとなっています。

晄司と父・清治郎の対立の構図

物語全体を通じて描かれる晄司と清治郎の対立も、伏線として機能しています。晄司が父を信じ切れない理由や、なぜ政治から距離を取っていたのかといった背景が、物語の後半で明らかになっていくことで、父子関係の再構築というドラマ性も回収されていきます。こうした人間関係の変化も、緻密に設計された構成の一部です。

ラストの「記者会見」に集約される真実

最終的な伏線の回収は、清治郎が開く記者会見に集約されています。初めは不十分な自白にとどまり、報道陣から批判されますが、晄司の裏工作により真実の暴露へと繋がる流れは、観客にとっても大きなカタルシスとなる瞬間です。各エピソードがこの会見に向けて一本に束ねられる形となっており、伏線が丁寧に回収されている点が高評価の理由にも直結しています。

主演・中島健人の演技が与えた影響とは？

演技の方向性が作品全体の印象を左右

中島健人が演じた主人公・宇田晄司は、「正義感あふれる青年」として描かれました。原作では冷静沈着で戦略家タイプだった晄司のキャラクターは、映画版ではより感情的で、観客が感情移入しやすい人物にアレンジされています。
中島健人の演技がこの“感情で動く若者像”を説得力のあるものにしたことが、映画のドラマ性を高めた要因のひとつとされています。

俳優としてのイメージ刷新にもつながった

これまで“王子様キャラ”や恋愛系の作品で注目を集めてきた中島健人にとって、本作は社会派サスペンスという新たな挑戦でした。
幹事長との交渉や、家族を守るために政治と向き合うシーンでは、従来とは異なる芯のある存在感を発揮。これにより、「演技の幅が広がった」「シリアスな役柄もこなせる」といった評価が広がりました。

ベテラン俳優との共演で得られた相乗効果

晄司の父親である宇田清治郎を演じた堤真一との共演も、中島健人の演技力を引き上げた重要な要素です。
特に記者会見前の父子の対話や、対立から協力へと移り変わる過程では、演技の応酬にリアリティがあり、作品全体に深みを与えるシーンとして評価されました。若手とベテランのコントラストが絶妙に機能したことで、物語の軸である“親子の再構築”が自然に伝わっています。

演技力以上に「存在の説得力」が求められた役

晄司は単なる善人でもヒーローでもなく、葛藤や未熟さを抱えた人物です。中島健人はその弱さや迷いも含めて、リアルな等身大の青年像を表現しており、結果として「キャラクターの奥行き」が加わりました。
華やかなルックスに加えて、内面の揺れを表現できたことで、視聴者の支持を集めたといえます。

なぜ犯人に政治家が絡まなかったのか？

一見「政治犯罪」に見せかけた構成の意図

この映画は、タイトルや前半の展開から「政治家による闇のスキャンダル」を想起させる構造になっています。
ところが、物語が進むと、実際の犯人は政界とは無関係な姉弟であったことが明かされます。
このギャップこそが、作品の最大の“どんでん返し”であり、視聴者の先入観を覆す仕掛けでもあります。

「一般市民の罪」をテーマにした理由

犯人である寺中初美と勲は、政治家でも犯罪者でもない“普通の人”です。
しかし、彼らは過去の殺人を隠すため、再開発に便乗して政治家を利用しました。
この構図により、物語は「権力者の堕落」ではなく、「誰もが加害者になり得る現実」へと焦点が移ります。
つまり、本作が伝えたかったのは「罪とは何か？」という普遍的なテーマであり、政治そのものの告発ではなかったのです。

犯人の選択が映し出す“政治の機能”

犯人たちは、再開発計画によって過去の遺体が発見されるリスクを恐れ、政治家・宇田清治郎に罪を自白させようとしました。
ここで注目すべきは、政治が彼らにとって「利用される手段」に過ぎなかったという点です。
政治は背景にあるだけで、物語の核心は「過去の罪を隠し続けた者の焦りと暴走」にあります。
この構成により、観客は「誰が悪なのか」を一元的に判断できなくなるのです。

あえて“政治”から距離を取った演出

監督・脚本は、あくまで人間ドラマを中心に物語を構築しています。
そのため、犯人を政治家に設定することで起こり得る単純な勧善懲悪のストーリー展開を避けています。
これにより、観客は複雑な登場人物たちの動機に対して、善悪だけでなく「理解しようとする視点」を持つことになります。

社会派でありながら“人間劇”に落とし込む意図

『おまえの罪を自白しろ』は、政治家を表舞台に置きながら、実は「市井の人々の過去と選択」が物語の核にあります。
犯人が政治家でないことにより、政治の機能そのものよりも、人の心の闇や贖罪に重点が置かれたサスペンスとして成立しています。
このアプローチが、他の政治ミステリーとは一線を画す要因となっています。

映画と現実の政治がリンクする瞬間

フィクションで描かれる“リアルな構造”

映画『おまえの罪を自白しろ』は、あくまでフィクションであるにもかかわらず、随所に「現実の政治を連想させる描写」が含まれています。
たとえば、橋の建設地変更や土地利権を巡る忖度といった設定は、実際の公共事業でもしばしば問題視されるテーマです。
特定の政党や人物をモデルにしているわけではないものの、構造的な問題がリアルに反映されているため、多くの観客に“どこかで見たことがある”と感じさせる力があります。

会見シーンが突きつける政治の責任

作中で行われる記者会見は、政治家が自らの口で“罪”を語るという重要な場面です。
ここでは、責任の所在をうやむやにせず、明確な説明責任を果たす姿勢が問われます。
この描写は、現実の政治においても「政治家がどこまで説明責任を果たすべきか」という課題を突きつける場面と重なります。

多くの人々が“実在の政治家にもこれくらい真摯に語ってほしい”と感じたであろう演出が、作品と現実を結びつける要素になっていました。

登場人物の台詞に潜む社会風刺

報道記者・神谷美咲のセリフ「いつも犠牲になるのは名もなき庶民」は、まさに現代社会へのメッセージです。
これは単なる脚本上のセリフではなく、構造的な不公平や権力と市民の格差を示唆する、強い社会的メッセージとして機能しています。

視聴者が政治や社会問題に無関心でいられないよう仕向けるこのような台詞は、映画がエンタメを超えて“警鐘”としての役割を担っていることを物語っています。

政治的対立と世代交代という現実

劇中で描かれる、父・宇田清治郎と息子・晄司の価値観の対立と和解は、現実の政治における世代交代とも重なります。
「過去の政治手法を踏襲する父」と「新しい形で正義を貫こうとする息子」という構図は、現実に起こっている世代間ギャップを象徴しているのです。

こうした“古い体制と新しい倫理観の衝突”というテーマは、現代の政治報道にも通じるリアリティがあり、観客に深い共感を与える要素となっています。

“観る価値ある？”迷った人への最終結論

社会派ドラマとしての完成度は高い

本作は、単なる誘拐サスペンスにとどまらず、政治、家族、報道という複数のテーマが交錯する“社会派ドラマ”としての側面が非常に強い作品です。
構成はしっかりしており、感情と論理がバランスよく展開される脚本と、豪華キャスト陣による高水準の演技が見どころです。
特に、主人公の成長や政治家としての責任と家族への愛情との間で揺れる心理描写は、ドラマ性を重視する視聴者に響くポイントといえるでしょう。

一方でミステリーとしてはやや物足りなさも

ストーリー全体としては緻密ですが、「真犯人は誰なのか？」という点での意外性やトリック性は控えめです。
犯人が政治家ではないこともあり、サスペンス的な“黒幕の正体”に期待していた層には、拍子抜けする可能性があります。
このため、ミステリー好きの人には、少し物足りなさを感じる部分があるかもしれません。

感情移入型の人間ドラマを楽しめる人向け

政治的陰謀やメディアとの駆け引き、そして家族の絆を描いた人間ドラマを重視する方にとっては、非常に見応えのある内容です。
一方で、複雑なトリックやどんでん返しを期待している人には不向きな側面もあります。
観るかどうか迷っている場合は、「重厚なドラマ」としての完成度に注目して選ぶと良いでしょう。

緊張感を楽しめる人なら損はない

物語は24時間というタイムリミットの中で展開されるため、テンポは非常に良く、息詰まる展開の連続にハラハラさせられる構成です。
派手なアクションではなく、登場人物たちの心理戦や政治的駆け引きが中心となるため、落ち着いてじっくり楽しみたいタイプの作品としておすすめです。

最後に：映画を通じて問いかけられるもの

この映画が投げかけるのは、「誰が罪を自白すべきか」だけではありません。
“罪とどう向き合うか”“誰の正義を信じるか”という深いテーマを問いかける作品です。
観終わった後、観客自身がそれぞれの登場人物に感情移入し、考えを巡らせることができる構成になっており、
単なる娯楽作以上の“考える映画”として、十分に観る価値があるといえます。

「お前の罪を自白しろ」は面白い？面白くない？評価の分かれ目を総括