こんにちは。訪問いただきありがとうございます。物語の知恵袋、運営者の「ふくろう」です
“娘が父を刺した”──ニュースなら、それだけで片づけられてしまう事件。でも映画『ファーストラヴ』は、そこから先をしつこいほど追いかけます。動機が曖昧なまま進む取材、揺れ続ける証言、そして少しずつ浮かび上がる「家族の密室」と「言葉にならない傷」。気づけば、観ているこちらの心まで静かにざわついてくるんです。
この記事では、まず作品の基本情報から、あらすじを起承転結で、そして“刺さりやすいポイント”までをわかりやすく整理しました。初めて読む人でも迷わず追えるようにまとめているので、「気になっているけど重そうで躊躇してる…」という人も、ここから入ってみてください。
この記事でわかること
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2021年公開・日本製作・119分の「ヒューマンサスペンス」作品。
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原作は島本理生の直木賞受賞小説『ファーストラヴ』。
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監督は堤幸彦、主演は北川景子、主題歌・挿入歌はUruが担当。
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「犯人当て」よりも事件の“なぜ”を掘り下げ、視線・沈黙・家族の歪みが心を追い詰める構図が核。
映画『ファーストラヴ』あらすじネタバレ解説|起承転結で
父を刺した娘、そして「動機はそちらで見つけてください」という一言――。映画『ファーストラヴ』は、事件の“答え”よりも、その奥にある心の傷をじわじわ炙り出していく物語です。この記事では、基本情報からネタバレ控えめのあらすじ(起承転結)まで、初めての人でも迷わないように整理していきます。
基本情報|映画『ファーストラヴ』とはどんな作品?
| タイトル | ファーストラヴ |
|---|---|
| 原作 | 島本理生『ファーストラヴ』(小説/第159回直木賞受賞作) |
| 公開年 | 2021年 |
| 制作国 | 日本 |
| 上映時間 | 119分 |
| ジャンル | ヒューマンサスペンス |
| 監督 | 堤幸彦 |
| 主演 | 北川景子 |
映画『ファーストラヴ』は、いわゆる「犯人当て」よりも、“なぜ起きたのか”に深く潜っていくタイプのヒューマンサスペンスです。刺殺事件を追ううちに、登場人物それぞれの「過去の傷」が浮かび上がり、観る側の感情も静かに揺さぶられます。
原作と制作スタッフ
原作は、第159回直木賞受賞作として知られる ファーストラヴ(島本理生)。映画化にあたっては、堤幸彦がメガホンを取り、物語をサスペンスとして転がしながらも、人の心の奥にある“言葉にならない部分”を丁寧に映像化しています。
脚本は 浅野妙子、音楽は Antongiulio Frulio。主題歌・挿入歌を Uruが担当していて、重たいテーマの中に「一筋の温度」を残すのが上手いです。
あらすじ(ネタバレなし)
美大教授で画家の父が刺殺され、容疑者として浮かび上がるのは娘。彼女は取り調べや面会で、挑発的とも取れる言葉を残します。
そこに関わるのが、公認心理師として活動する女性。事件を取材し“本”にまとめる依頼を受け、容疑者と向き合い始めますが、証言は揺れ、辻褄が合わない部分も出てくる。調べれば調べるほど、「事件の当日」だけでは説明できない過去が見え始める――そんな構図です。
この作品が刺さりやすいポイント
- “目”と“言葉”の怖さ:視線や沈黙が、ここまで人を追い詰めるのか…と考えさせられる
- 家族という密室:親子・夫婦の関係が、優しさにも地獄にもなり得る
- サスペンスなのに後味が人間ドラマ:真相を追う快感と、心がざらつく余韻が同居する
映画『ファーストラヴ』のあらすじ(起)

ここから物語は、一気に不穏な空気へ引き込まれます。事件の輪郭は見えているのに、動機だけが霧の中。まずは“始まり”の出来事を押さえると、この先の心理戦がぐっと面白くなります。
大学のトイレで発見された刺傷事件
ある大学のトイレで、胸を刺された男性が倒れているのが見つかります。静かな日常に、いきなり刃物の気配が差し込む瞬間です。
血まみれのナイフを持つ聖山環菜が浮上
同じ頃、川端の道を血の付いたナイフを持って歩く女子大生・聖山環菜の姿がありました。ほどなく彼女は、父で画家の聖山那雄人を刺殺した容疑で逮捕され、事件は大きく報じられていきます。
真壁由紀に舞い込んだ「本にしてほしい」取材依頼
一方、公認心理師の真壁由紀のもとに「この事件を取材し、1冊の本にまとめてほしい」という依頼が入ります。被疑者である環菜に会い、言葉の奥にあるものを確かめるため、由紀は接見を決意します。
弁護士・庵野迦葉の存在が緊張を濃くする
環菜の国選弁護人として現れたのは、由紀の夫・真壁我聞の弟である弁護士、庵野迦葉でした。しかも由紀と迦葉は大学の同級生で、過去に因縁を抱える間柄。偶然にしては出来すぎた配置に、取材の空気は最初から張り詰めます。
・刺傷事件の発覚と、聖山環菜の逮捕で物語が動き出す
・真壁由紀が“取材者”として事件に深く関わる
・庵野迦葉との因縁が、調査をただの取材では終わらせない緊張を生む
映画『ファーストラヴ』あらすじ(承)
事件は「娘が父を刺した」という見た目の単純さとは裏腹に、掘れば掘るほど手触りが変わっていきます。由紀と迦葉が環菜の言葉を拾い集めるほど、真実はまるで霧の中へ逃げるみたいに輪郭を失っていく――。ここからが、本作のいちばん苦しくて目が離せないパートです。
接見と手紙で探るほど、証言がねじれていく
真壁由紀と庵野迦葉は、接見や手紙のやり取りを重ねながら聖山環菜の内面に迫ります。ところが環菜は感情の起伏が激しく、話す内容もあちこちで食い違う。昨日言っていたことが今日は違う、そんな揺れが何度も続きます。読んでいる側も「どこまでが本音?」と身構えてしまうはずです。
幼少期から続く“モデル”という違和感
周囲への聞き取りで見えてくるのは、環菜が小学生の頃から父・聖山那雄人の「絵のモデル」をしていたという事実です。単なる親子の創作活動、と言い切れない空気が漂うのがポイント。家庭環境そのものが、どこか歪んでいた可能性がじわじわ浮かび上がってきます。
「ゆうじくん」という名前が、鍵のように引っかかる
取材の途中で「ゆうじくん」という名前が出てきます。由紀は、その一言に反応します。重要人物だと直感する一方で、環菜は存在を否定したり、語り方を変えたりして話が二転三転。つかめそうでつかめない、指の間から砂がこぼれるような感覚が続きます。
元彼の証言で判明する“手首の傷”
さらに元彼の話などから、環菜の手首に多数の傷があることが明らかになります。リストカットを示す自傷の痕です。事件当日の話だけでは説明できない、長い時間をかけて積み上がった痛みがそこに刻まれているようで、胸がざわつきます。
母・聖山昭菜の反応が、現実をさらに冷たくする
由紀は環菜の母・聖山昭菜にも会います。しかし母は終始「全部娘のせい」と言い切り、手首の傷についてもまともに向き合おうとしません。助け舟どころか、氷水を浴びせるような態度。家族のはずなのに、いちばん近い場所がいちばん遠い――そんな苦さが残ります。
「那雄人は実父ではない」出生の事実が追い打ちをかける
そして決定的に、家庭のねじれを深くする情報が出てきます。環菜は「那雄人は実父ではない」と語り、出生の事情が明らかになっていくのです。血縁、家族の形、許されたはずの関係。その綻びが、ここに来て一気に広がっていきます。
・接見を重ねても環菜の証言は揺れ続け、真実が見えにくくなる
・幼少期の“モデル”や自傷の痕から、長期的な傷の存在が示される
・母・聖山昭菜の態度や出生の事実が、家庭の歪みを決定的に深めていく
映画『ファーストラヴ』あらすじ(転)

ここから物語は、ただの事件取材では済まなくなります。真実に近づくほど胸が苦しくなって、読んでいるこちらまで息が浅くなる感じ。環菜の「なぜ?」が、由紀自身の過去と絡み合い、絡まった糸が一気にほどけていきます。
“デッサン会”の実態があまりにも異様だった
取材の末にたどり着いたのは、父・聖山那雄人が開いていた“デッサン会”の存在です。そこで浮かび上がるのは、少女だった聖山環菜が男性たちの前で、不適切な形でモデルをさせられていた可能性。言葉にするだけでゾッとするような空気が、じわじわ事実味を帯びてきます。
由紀の封印していた過去が、否応なく揺さぶられる
その話を聞いた瞬間から、真壁由紀の中で眠っていた記憶がざわつき始めます。父親から向けられていた性的な視線、家庭の傷。忘れたふりをして箱に閉じ込めていたものが、ふいに蓋をこじ開けてくるんです。ここで構図が反転します。「環菜の問題は他人事じゃない」――由紀にとって事件は、もう仕事の範囲を越えてしまいます。
小泉ゆうじに接触し、環菜の過去が“手触り”を持ちはじめる
そしてついに、由紀は探していたコンビニ店員・小泉ゆうじに接触します。これまで断片だった情報が、ここで急に現実味を帯びるのがポイント。環菜の過去が「そういうことだったのかもしれない」と、輪郭を持って迫ってきます。
由紀が自分の傷を語ったとき、環菜の言葉が変わる
由紀は環菜と真正面から向き合い、自分の心の傷も隠さずに語ります。きれいごとじゃなく、血のにじむような告白です。すると環菜は、ぽつりと決定的な言葉を口にします。
「私は父を殺していない」
この一言で、事件の見え方ががらりと変わります。
迦葉との衝突と交通事故が、由紀の“逃げ道”を塞いでいく
その後の由紀は、庵野迦葉との衝突に加え、交通事故という出来事まで重なります。心も体も限界に追い込まれた結果、由紀は夫・真壁我聞に、秘密も過去も告白することに。夫婦の関係は、ここで形を変えます。壊れるのではなく、別の強さを持ち始める――そんな転換です。
裁判で語られる当日の流れが、真相を一気に整理する
裁判では、事件当日の流れが整理されていきます。アナウンサー面接で“男性の視線”にフラッシュバックし、自傷へ向かったこと。父の前で揉み合いになったこと。そして、包丁が“事故の形で”刺さった可能性が語られます。ここまで来てようやく、点だった出来事が線でつながっていく感覚があります。
・“デッサン会”の実態が明らかになり、事件の背景が一気に重くなる
・由紀の過去が呼び起こされ、取材が「自分自身の問題」へ反転する
・小泉ゆうじへの接触と環菜の「殺していない」という言葉で、真相の輪郭が見え始める
・裁判で当日の経緯が整理され、事故の可能性が具体的に語られる
映画『ファーストラヴ』あらすじ(結)

真相が語られても、すべてがスッキリ晴れるわけじゃない。むしろ胸の奥に、小さな棘みたいな余韻が残ります。でも、その痛みの中に、かすかな光もある。『ファーストラヴ』の“結”は、そんな終わり方です。
懲役8年の判決が示すもの
裁判の結果、聖山環菜に下されたのは懲役8年という判決でした。けれどこの事件は、いわゆる「単純な殺意」の話として片づけられません。長年の支配、積み重なったトラウマ、そして家族の中で黙殺され続けた沈黙。そうしたものが静かに蓄積し、限界点で破裂した――物語はそんな重さを抱えたまま着地します。
母の“傷”が突きつける、もう一つの真実
裁判後、真壁由紀は環菜の母・聖山昭菜の腕に、環菜以上とも思える酷い傷があることに気づきます。そこでふと、別の可能性が頭をよぎるんです。
「娘が壊れていくのを見るのが怖かったのでは?」
もし直視してしまえば、自分自身の暗い過去とも向き合わなければならない。だから目をそらした――そんな“別の地獄”を想像してしまう。母という存在が、急に一枚岩ではなくなります。
由紀が自分の過去と折り合いをつけていく
環菜の事件は、由紀の中にあった傷とも重なります。だからこそ、簡単に他人事として線引きできない。環菜や昭菜を見つめながら、由紀は自分自身の過去にも、少しずつ折り合いをつけていきます。完全に消える痛みではないけれど、「抱え方」を覚えていくような感覚です。
日常へ戻る二人、そして届く手紙が残す希望
事件が終わったあと、由紀と庵野迦葉はそれぞれ、また仕事に追われる日常へ戻っていきます。そんな中、刑務所にいる環菜から手紙が届きます。そこには「いつか自分の言葉で事件のことを書いてみたい」という思いが綴られていました。
あの環菜が“自分の言葉”を取り戻そうとしている。そう思うと、ほっとするのと同時に、少しだけ救われる気持ちになります。物語は、ほろ苦さを残しながらも、回復の可能性をそっと差し出して終わります。
・環菜の懲役8年は、事件の重層的な背景を背負った結末として描かれる
・母・聖山昭菜の傷が、家族の痛みの連鎖を静かに示す
・由紀は事件を通して自分の過去とも向き合い、環菜の手紙が“かすかな希望”を残して物語を閉じる
映画『ファーストラヴ』あらすじネタバレ解説|キャスト・見どころ・考察ポイント
事件そのものより、人物同士の“距離の近さ”がじわじわ効いてくるのが ファーストラヴ。主要キャラの関係性を先に整理しておくと、セリフの刺さり方も、沈黙の重さも、段違いにわかりやすくなります。まずは相関をサクッと押さえていきましょう。
映画『ファーストラヴ』の登場人物&キャストと関係性

この映画は相関関係がちょっと濃いめです。人物のつながりを先に押さえておくと、「なぜこの人が揺れるのか」「なぜこの場面が痛いのか」がスッと入ってきます。
真壁家:真壁由紀・真壁我聞・庵野迦葉
- 真壁由紀(演:北川景子)
公認心理師。事件を取材し、容疑者に面会を重ねながら心の奥を探っていく。理性的に見えて、実は自分の過去も刺激されていく立場。 - 真壁我聞(演:窪塚洋介)
由紀の夫。作品の中で“包む側”に回る人物で、空気を変える静かな存在感がある。 - 庵野迦葉(演:中村倫也)
弁護士で、事件の国選弁護人。我聞の弟という家族関係に加え、由紀とは大学時代から因縁がある。ここが物語の“緊張”を一段深くします。
関係性の要点:
由紀(取材・心理)× 迦葉(弁護)がタッグを組む一方で、我聞(夫)という現在の生活がある。過去と現在が同じテーブルに並ぶ、逃げにくい配置です。
聖山家:聖山環菜・聖山那雄人・聖山昭菜
- 聖山環菜(演:芳根京子)
アナウンサー志望の女子大生。父を刺殺した容疑で逮捕され、言動も二転三転。感情の起伏が激しく、周囲を翻弄する。 - 聖山那雄人(演:板尾創路)
画家で大学教授。事件の被害者であり、環菜の過去に強く影を落とす存在。 - 聖山昭菜(演:木村佳乃)
環菜の母。娘に厳しく、距離のある言動が目立つ。家族の問題が“語られないまま積もっていく”感覚を体現する人物です。
キーパーソン:小泉裕二・賀川洋一・早苗
- 小泉裕二(演:石田法嗣)
物語の鍵になる“ゆうじくん”。環菜の過去を語るうえで外せない存在で、タイトルの意味にも関わってくる。 - 賀川洋一(演:清原翔)
環菜の元恋人。周辺証言のひとつとして、環菜の状態を補助線のように示す。 - 早苗(演:高岡早紀)
由紀の母。由紀の過去と家庭像を形づくる重要人物で、由紀の傷の背景に繋がる。
ざっくり相関が一瞬でわかるまとめ
- 事件の中心:環菜 ⇄(父)那雄人/(母)昭菜
- 真相に迫る側:由紀 × 迦葉(タッグ)
- 現在の生活の軸:由紀 ⇄(夫)我聞
- 過去の鍵:環菜 ⇄ 裕二、由紀 ⇄(母)早苗
映画『ファーストラヴ』の見どころは?

“犯人探し”よりも「なぜ、そこまで追い詰められたのか」
この作品の面白さは、トリックの鮮やかさよりも、心の奥に沈んだものを少しずつ引き上げていく過程にあります。供述が二転三転する容疑者を追うほど、事件の背景に「家族」「沈黙」「視線」「支配」といった重い層が見えてくる。観ている側も、気づけば“謎解き”ではなく“理解”のほうへ連れていかれます。
由紀と環菜が“合わせ鏡”になる設計
主人公の公認心理師・由紀は、取材する相手にただ同情するだけではありません。相手の言葉や態度が、由紀自身が封じてきた記憶や感情を刺激し、取材のはずが「自分の内側」を掘り返す時間に変わっていく。
ガラス越しに対面する構図や、視線の扱いが象徴的で、「この2人は遠いようで近い」とじわっと伝わってきます。
“目”が怖い――視線の演出がずっと刺さる
男たちの視線、社会の視線、家族の視線。言葉よりも先に、目線が人を追い詰める描写が多いです。何気ないシーンなのに息が詰まるのは、その怖さが現実に近いから。ここは好みが分かれますが、刺さる人には深く刺さります。
キャストの熱量が、物語の重さを支える
- 主演の 北川景子 は、理性的であろうとする顔と、揺れて崩れていく瞬間の差が印象的。
- 容疑者役の 芳根京子 は、怒りも涙も不安定さも“嘘っぽくならない”のが強いです。
- 弁護士役の 中村倫也 は、クールに見えて感情の火種を抱えた人物像がハマり役。
- 夫役の 窪塚洋介 は、出しゃばらないのに安心感が段違いで、作品全体の呼吸を整える存在。
- 母役の 木村佳乃 は、出てくるだけで空気が冷えるタイプの怖さがあり、物語の“家庭の温度”を一気に下げてきます。
法廷シーンで一気に“線”になる快感
終盤の法廷は、バラバラに散らばっていた点が、少しずつ線になっていく場所。事件当日のことだけでなく、過去の出来事がどう現在に結びついたのかが整理され、観客の中にも「やっと言葉になった」という感覚が生まれます。ここはスリルというより、カタルシスに近い気持ちよさです。
音楽と空気の作り方が、余韻を長引かせる
監督 堤幸彦 の“見せ方”は情報量が多いのに、要所でちゃんと静かになります。その静けさに Uru の歌が乗ると、胸の奥に残るものが増える。観終わった後に、ふと場面が戻ってくるタイプの映画です。
映画『ファーストラヴ』の感想文
1回目は「わからない」が残って、2回目で腑に落ちる映画だった
正直、最初は情報が多くて頭が追いつかない瞬間がありました。供述は揺れるし、関係性も複雑で、「何が本当なんだろう」と置いていかれそうになる。
でもその“置いていかれる感じ”こそ、この物語の体験として正しいのかもしれません。人の心って、そんなに素直に一本線にならないので。
サスペンスを期待すると肩透かし、ヒューマンドラマとして観ると深い
予告の印象だと、もっとサイコサスペンス寄りを想像しがちです。ところが実際は、事件の派手さより、トラウマや家庭の沈黙に焦点が当たっていく。
「犯人は誰?」より「この人は、どうしてここまで壊れてしまったの?」に重心が移るので、そこで好みが分かれます。私は後者のほうが苦いのに目を離せなくて、気づいたら前のめりでした。
いちばん怖いのは、暴力そのものより“誰も助けない空気”
観ていてしんどいのは、悪意のある一撃よりも、「見ないふり」「聞かないふり」「決めつけ」の連続です。
助けを求める言葉が出せない人にとって、周囲の無関心や短絡的な断定は、じわじわ呼吸を奪う。そこがリアルで、心が重くなりました。
演技が強い。とくに“感情の揺れ”の説得力
芳根京子さんの不安定さの表現は、演技というより生々しい反射みたいで、目が離せませんでした。北川景子さんも、理性的に振る舞おうとするほど揺らいでいく感じが切ない。
そして窪塚洋介さんの“何もしないのに救いになる”佇まいが、作品全体の酸素みたいに効いています。あの存在がなかったら、観ている側も息が詰まり切っていたと思います。
正直、由紀の母親が父親の罪を教えた際に、「男なんてそんなものよ」と言い捨てた際に、「もしかして我聞もなのか?」と伏線だと思ってしまいました。子供の写真ばかりなのもその伏線で最後にとんでもない爆弾が由紀を襲ってしまうのではとドキドキしましたがそんなことはありませんでした。
我聞さん、窪塚さんごめんなさい。
気になった点もある。でも、それを上回る余韻があった
筋だけを見ると「そこは警察が先に把握していそう」「偶然が重なりすぎでは?」と思う場面もあります。由紀側の回想に尺を割きすぎ、と感じる人がいるのもわかります。
ただ、細部の粗さを“テーマで押し切る”強さもあって、観終わる頃には「物語の穴」より「残った痛み」のほうが勝ちました。きれいに整った作品というより、心の奥をざらっと撫でていく作品です。
タイトル『ファーストラヴ』の意味を、観た後に考え込んでしまう
初恋って、甘い思い出だけじゃない。むしろ人生の形を決めてしまうほど苦いこともある。
由紀と迦葉、環菜と“ゆうじくん”、あるいは「本当は家族に愛されたかった」という渇き——どれを指していてもおかしくなくて、観る人の経験によって答えが変わりそうです。私はそこが、この映画の意地悪で優しいところだと思いました。
こんな人に向いている
- 事件の謎解きだけじゃなく、心理や背景を深掘りしたい人
- “毒親”“自傷”“性の搾取”など重いテーマに目をそらさず向き合える人
- 余韻が残る映画が好きな人
逆に、テンポのいい本格ミステリーを期待すると、思っていた方向と違うかもしれません。
観ている最中は苦しい場面も多いのに、ラストに残るのは不思議と“かすかな希望”でした。救いは派手じゃない。けれど、誰かがちゃんと耳を傾けるだけで、人は少し変われるのかもしれない。
そんな小さな光を、静かに手渡される映画でした。
『ファーストラヴ』の考察・解説をもっと深掘りしたい方へ
観終わったあと、「結局“ファーストラヴ”って誰のこと?」「初恋の話じゃないのに、どうしてこの題名なんだろう」と引っかかった人は多いはずです。とくに本作は、恋愛の言葉で説明しようとするとズレやすくて、痛みや沈黙の重さだけが先に残りがちなんですよね。
そこで次の記事では、タイトルを“初恋”ではなく「初めての愛情」として読み替える視点から整理します。すると、環菜と由紀が抱える「愛され方の欠落」や、面会室の空気、そして判決の余韻までが同じ線でつながってきます。
さらに、考察が散らからないように「守る/信じる/受け止める/話を聞く」という4つの軸で統一して解説するので、「刺さった理由を言葉にしたい」「感想に深みを出したい」人ほど読みやすい内容です。
こちらの記事では、作品の核心をネタバレ込みで整理しつつ、モヤモヤしやすいポイントを“言葉にして”解きほぐしています。たとえば、こんな切り口です。
- タイトル『ファーストラヴ』の意味は一つじゃない(誰の初恋なのか)
- 母親のリストカットの意味
- デッサン会が描く悪意無き加害
- 原作と映画の違い
「観たけど腑に落ちない」「刺さった理由を整理したい」「感想記事に深みを出したい」――そんな人ほど読みやすい内容にまとめているので、気になる方はぜひ続きの記事でチェックしてみてください。
『ファーストラブ』ネタバレであらすじ解説まとめ
・原作は、ファーストラヴ(小説)(島本理生/第159回直木賞受賞作)
・監督は堤幸彦、脚本は浅野妙子、音楽はAntongiulio Frulio、主題歌・挿入歌はUruが担当
・物語は「犯人当て」よりも、“なぜ事件が起きたのか”を掘り下げていく作りで、心理と過去の傷が主軸になる
・大学のトイレで刺傷事件が起き、容疑者として父を刺したとされる女子大生聖山環菜が世間の注目を浴びる
・公認心理師の真壁由紀は、事件を取材して本にまとめる依頼を受け、面会を重ねて“言葉の奥”を探ろうとする
・環菜の国選弁護人が庵野迦葉だと判明し、由紀の夫真壁我聞との家族関係も絡んで空気が一気に張り詰める
・接見や手紙を続けるほど、環菜の証言は揺れ、辻褄が合わない点が増えていく
・周辺取材で、環菜が幼少期から父の“絵のモデル”をしていた事実が浮かび、家庭の歪みが見え始める
・「ゆうじくん」という存在が鍵として浮上し、過去の断片が事件と結びつく気配が濃くなる
・元彼などの証言から、環菜の手首に自傷の痕が多数あるとわかり、事件が“一日”の話ではないと伝わってくる
・母の態度(娘を一貫して責め、傷にも向き合わない)が、家族という密室の冷たさを際立たせる
・“視線”と“沈黙”が人を追い詰める描写が強く、見ている側もじわじわ息苦しくなるタイプのサスペンス
・終盤の法廷で、出来事が点から線に整理され、「事故の形で刺さった可能性」など真相が語られていく
・判決は懲役8年。単純な殺意では片づけず、支配・トラウマ・家族の沈黙が積み重なった結果として、ほろ苦い希望(“自分の言葉で語り直す”)を残して終わる
