
こんにちは、物語の知恵袋のふくろうです。
2016年公開の『ジェイソン・ボーン』は、マット・デイモン演じるジェイソン・ボーンが『ボーン・アルティメイタム』以来、再び物語の中心へ戻ってくる作品です。
ただし、今回のボーンは「自分が誰なのか分からない男」ではありません。すでに本名がデヴィッド・ウェッブであること、自らCIAの極秘計画トレッドストーンへ志願したこと、そして暗殺要員として多くの任務を遂行したことまで思い出しています。
それでも彼の過去には、まだ大きな空白が残っていました。その中心にいるのが、亡くなった父リチャード・ウェッブです。
なぜ父は殺されたのか。なぜボーンはトレッドストーンに入ることになったのか。そして、自分で選んだはずの人生は本当に自分の意思だけで選んだものだったのか。
本作では、この疑問を追う過程で、ニッキー・パーソンズの死、CIA長官ロバート・デューイの秘密、父を殺した暗殺者アセット、巨大IT企業ディープ・ドリーム、新たな監視計画アイアンハンド、そしてヘザー・リーの思惑が次々につながっていきます。
アクション映画としてはアテネでの逃走劇やラスベガスでのカーチェイスが見どころですが、物語の中心にあるのはもっと個人的な問題です。
「自分の過去を知った人間が、その事実を受け入れたうえで、これからどのように生きるのか」という問いが『ジェイソン・ボーン』にはあります。
この記事では、映画『ジェイソン・ボーン』のストーリーを結末まで順番に振り返りながら、父リチャードの正体、ニッキーが残した情報、アセットの復讐心、アイアンハンドの目的、ヘザー・リーの本音、そしてラストでボーンが残した録音機の意味まで詳しく見ていきます。
この記事でわかること
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ジェイソン・ボーン』のあらすじと結末
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父リチャードの正体と殺された理由
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アセットやヘザー・リーの本当の目的
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ラストの録音機とボーンの選択の意味
まずは『ジェイソン・ボーン』で何が起こったのかを、物語の順番に沿って振り返ります。
今回ボーンを再びCIAの世界へ引き戻す人物は、旧シリーズから彼を知るニッキー・パーソンズです。しかし、ニッキーがボーンへ届けようとした情報は、単に「CIAがまた危険な計画を始めた」というものではありません。
そこには、ボーン自身が知らなかった父親とトレッドストーンの関係が記録されていました。
基本情報と見る前の前提
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | ジェイソン・ボーン |
| 原題 | Jason Bourne |
| 製作年 | 2016年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 日本公開 | 2016年10月7日 |
| 上映時間 | 123分 |
| 監督 | ポール・グリーングラス |
| 脚本 | ポール・グリーングラス、クリストファー・ラウズ |
| 主演 | マット・デイモン |
| シリーズ | 劇場版ボーンシリーズ第5作 |
本作は劇場版「ボーン」シリーズ全体では第5作です。ただし、前作『ボーン・レガシー』はジェレミー・レナー演じるアーロン・クロスを主人公とした別の物語なので、マット・デイモン演じるジェイソン・ボーンを主人公とする映画としては4作目に当たります。
監督には『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』を手掛けたポール・グリーングラスが復帰しました。そのため、細かく揺れるカメラ、短いカットを積み重ねる追跡場面、街全体を巻き込む逃走劇など、旧シリーズを思わせる演出が随所に見られます。
本名はジェイソン・ボーンではない
シリーズをすべて見ていなくても本作の大筋は理解できますが、最低限覚えておきたいのが、ジェイソン・ボーンという名前が彼の本名ではないことです。
本名はデヴィッド・ウェッブ。
彼はCIAの極秘計画トレッドストーンに入り、厳しい訓練や心理的な処置を受けた末、暗殺要員ジェイソン・ボーンとして活動するようになります。
ところが任務中に記憶を失い、『ボーン・アイデンティティー』以降、自分が何者なのか、なぜ殺人技術を身につけているのかを追い続けることになりました。
旧三部作を通して、ボーンは自分がトレッドストーンへ強制的に連れてこられたのではなく、最終的には自分自身で参加を選んでいたことまで思い出します。
つまり、本作開始時点で「記憶喪失の謎」はかなり解決しています。
『ジェイソン・ボーン』で描かれるのは、「自分は誰なのか」ではなく、「なぜ自分はジェイソン・ボーンになる道を選んだのか」という、さらに一段深い過去です。
旧三部作との違い
旧三部作では、ボーンはCIAに追われながら断片的な記憶を集めていました。対して本作では、自分の正体をほぼ理解した人物として登場します。
これは小さな違いではありません。
知らなかった過去を知ることと、知ってしまった過去を抱えて生きることは別だからです。
自分が暗殺者だったことを忘れていたころは、「これは本当の自分ではない」と考える余地がありました。しかし記憶が戻った今は、自分自身が決断し、人を殺してきた事実から逃れることができません。
今回のボーンが以前より無口で、どこか疲れ切ったように見えるのも、この違いを踏まえると理解しやすくなります。
ボーンは地下格闘技で暮らす

物語開始時のボーンはCIAから完全に姿を消し、ギリシャやアルバニア周辺で地下格闘技に参加しながら暮らしています。
そこには華やかさも達成感もありません。
鍛え抜かれた身体と圧倒的な戦闘能力を使い、対戦相手を短時間で倒して金を得る。まるで自分に残された能力が戦うことしかないかのような生活です。
記憶を取り戻しても救われていない
旧シリーズでボーンが追い求めていたものは「記憶」でした。
自分の名前を知りたい。どこから来たのか知りたい。なぜ人を殺す技術を身につけているのか知りたい。
その疑問には、ある程度の答えが出ています。
ところが記憶が戻った結果、ボーンは幸せになったわけではありません。むしろ、自分が暗殺者として行ってきたことを鮮明に背負うことになりました。
知らないほうが楽だった事実まで知ってしまったとも言えます。
だから地下格闘技の場面は、単純に「ボーンは今も強い」と見せるためだけの導入ではありません。
彼が社会とのつながりを失い、戦闘能力だけを持て余していることを表しているのでしょう。
昼間の普通の生活へ戻るわけでもなく、CIAへ戻るわけでもない。かといって、過去を完全に捨てることもできない。
ボーンは自由になったはずなのに、自由になった後の生き方を見つけられていません。
◆ふくろうのワンポイント
旧三部作を「記憶を取り戻す物語」とするなら、本作は「記憶を取り戻した後にどう生きるのか」を描く物語です。ボーンは記憶喪失ではないからこそ、自分の選択や罪から逃げられなくなっています。
そこへニッキーが過去を持ち込む
そんなボーンの静かな生活を変えるのが、ニッキー・パーソンズです。
もしニッキーが普通のCIA機密情報だけを持ってきたのであれば、ボーンは動かなかった可能性があります。
実際、彼はすでにCIAの陰謀を暴き、組織から距離を置いていました。また新しい計画が始まったからといって、自分から関わる必要はありません。
しかし今回ニッキーが発見したのは、父親に関する情報でした。
ボーンが再び過去へ向き直る理由として、それはあまりにも大きな存在だったのです。
ニッキーがCIAをハッキング

そのころ、元CIA職員ニッキー・パーソンズは、アイスランドのレイキャビクでハクティビストのクリスチャン・ディソルトと行動していました。
彼女はCIAのシステムへ侵入し、極秘計画に関する大量の情報を持ち出します。
対象となったのは、過去のトレッドストーンやブラックブライアーだけではありません。CIAが新たに準備しているアイアンハンドという計画まで含まれていました。
ニッキーが父リチャードの名前を発見
そして、その膨大なファイルの中からニッキーは重要な情報を発見します。
ジェイソン・ボーンことデヴィッド・ウェッブの父、リチャード・ウェッブに関する記録です。
さらに驚くべきことに、デヴィッド本人がトレッドストーンへ参加する以前から監視対象になっていたことも分かります。
ボーンは自分がトレッドストーンへ志願した事実をすでに受け入れています。
しかし、自分が計画へ入るより前からCIAが自分を見ていたことや、父親がトレッドストーンそのものに関係していたことまでは知りませんでした。
この時点で、本作における大きな疑問が生まれます。
本当にボーンは偶然トレッドストーンへたどり着いたのでしょうか。
それとも、彼が自分で決めたと思っていた人生そのものに、もっと前から誰かの意図が入り込んでいたのでしょうか。
ヘザー・リーが侵入を察知
ニッキーのハッキングを最初に察知するのが、CIAのサイバー部門を率いるヘザー・リーです。
リーは若いながらも高度な技術と判断力を持ち、ニッキーが盗み出したファイルへ追跡できる仕掛けを施します。
ここからCIAは、コンピューター上の情報を使ってニッキーを追跡し始めます。
旧シリーズでもCIAの監視能力は非常に高く描かれていましたが、本作ではそれがさらに進んでいます。
人を尾行するのではなく、ネットワーク、端末、監視カメラ、データを組み合わせ、離れた場所から相手の動きを把握する。
この描写は、後半のアイアンハンドやディープ・ドリームにもつながっていきます。
デューイはボーンの復活を恐れる
CIA長官ロバート・デューイが恐れているのは、盗まれた情報だけではありません。
ニッキーがジェイソン・ボーンへ接触することです。
過去にCIAの秘密計画を次々と暴いたボーンが再び動けば、自分が隠してきた過去まで明るみに出る危険があります。
そのためデューイは、ニッキーとボーンを単なる情報漏洩の関係者ではなく、自分たちの秘密を脅かす存在として扱います。
ニッキーの死と父の資料

ニッキーはアテネでボーンと接触します。
ちょうど街では大規模な反政府デモが行われ、警察と群衆が激しく衝突していました。
煙、火炎瓶、バイク、警官隊、混乱する群衆。
ニッキーとボーンは、この騒乱を利用してCIAの監視から逃れようとします。
父親の名前がボーンを動かす
再会したニッキーは、CIAが新しい秘密計画を進めていることだけでなく、リチャード・ウェッブに関する資料が存在することを伝えます。
ボーンは当初、CIAへ再び関わることに消極的です。
これは当然でしょう。
彼はようやく組織から逃れ、自分なりに生きようとしていました。再びCIAの秘密を追えば、以前と同じように命を狙われるのは分かっています。
しかし、「父親」という言葉で状況は変わります。
父の死は、ボーンがCIAへ進む人生の大きな転換点でした。
その父とトレッドストーンがつながっているのであれば、自分が知っている人生の前提そのものが違っていた可能性があります。
アセットの狙撃でニッキーは死亡
デューイは直属の暗殺者アセットをアテネへ送り込みます。
ボーンとニッキーはバイクで追跡を振り切ろうとしますが、アセットは高所から二人を狙います。
逃走の途中、ニッキーは銃弾を受けました。
ボーンは彼女を助けようとしますが、傷は致命的でした。
ニッキー・パーソンズは本作で死亡します。負傷したまま行方不明になったわけではなく、その場でボーンに見守られながら息を引き取ります。
シリーズを長く見てきた人にとって、ニッキーの退場はかなり重い場面です。
彼女は単なるCIA職員ではありませんでした。
ボーンの正体を知り、それでも彼を助け、危険を承知でCIAに背いた人物です。
旧シリーズの登場人物が次々と物語から離れていくなか、ニッキーはボーンの過去を知る数少ない人物として残っていました。
そのため彼女の死は、ボーンにとって仲間を失うだけではなく、自分の過去と現在をつないでいた最後の糸の一つを失うことでもあります。
ニッキーが残した情報が物語を進める
しかしニッキーの行動は無駄にはなりません。
彼女がCIAから持ち出した情報によって、ボーンは父リチャードの過去を追うことができます。
ここからボーンの目的は変わります。
自分を狙うCIAから逃げることではなく、父親とトレッドストーンの関係を突き止めること。
そして結果的には、それが「自分がジェイソン・ボーンになった理由」を知る旅になっていきます。
ベルリンで父の秘密を追う
ニッキーが残した情報を頼りに、ボーンはベルリンへ向かいます。
そこでハクティビストのクリスチャン・ディソルトと接触し、CIAから持ち出された資料を確認します。
そのファイルには、父リチャード・ウェッブとトレッドストーンの関係、そしてデヴィッド自身への監視記録が残されていました。
父自身がトレッドストーンに関わっていた
ボーンにとって最も大きな衝撃は、父リチャード自身がトレッドストーン計画の創設に関係していたことです。
これまでボーンが理解していた人生の流れは、比較的単純でした。
父親を失ったデヴィッド・ウェッブがCIAに入り、極秘計画へ志願し、暗殺要員ジェイソン・ボーンとなった。
ところが、新しい資料を読むと、その順序だけでは説明できなくなります。
父親はCIAと無関係な被害者ではありません。
デヴィッドがトレッドストーンへ入る前から、その計画の中枢近くにいた人物でした。
そうなると、「父の死」と「デヴィッドの入隊」は本当に無関係なのかという疑問が生まれます。
ボーンは志願前から監視されていた
さらに重要なのが、デヴィッドが計画へ参加するより前から監視されていたという記録です。
ボーンにとって、自分がトレッドストーンへ入ったことは自分自身の選択でした。
ところが、その選択をする前からCIAが自分の行動を見ていたとすれば、話は変わります。
人間は自分で決断したつもりでも、その前に与えられた情報や環境によって判断を大きく左右されます。
本作では、その「選択の前提」がCIAによって作られていた可能性が少しずつ見えてきます。
CIAは証拠を消そうとする
当然ながら、CIA側も黙ってはいません。
ヘザー・リーらはネットワークを利用してボーンの動きを追い、情報を失わせようとします。
父に関する完全な答えを得られないまま、ボーンは次の手掛かりを追わなければなりません。
そこで浮かび上がるのが、かつてトレッドストーンに関わっていたマルコム・スミスです。
スミスなら、自分が志願する以前に何が起こっていたのか知っている。
そう考えたボーンはロンドンへ向かいます。
父親を殺した犯人が判明

ロンドンでマルコム・スミスを追い詰めたボーンは、ついに父リチャード・ウェッブの死について核心へ迫ります。
そこで明らかになるのは、これまでボーンが信じていた過去を根底から変える事実でした。
リチャードは計画を止めようとしていた
リチャードはトレッドストーンの創設に関係した人物でした。
ただし、暗殺者を直接運用する現場責任者ではありません。
そして、自分の息子デヴィッドがトレッドストーン候補として選ばれていることを知ったリチャードは態度を変えます。
自分が関わった計画に息子まで取り込まれ、暗殺者へ変えられようとしている。
それを知ったリチャードは、トレッドストーンを公にすると警告しました。
自分が作る側にいた計画であっても、息子を殺人者にすることまでは受け入れられなかったのでしょう。
デューイが父の暗殺を命じた
リチャードの動きを危険視したのがロバート・デューイです。
トレッドストーンが外部へ暴露されれば、大きな問題になります。
そこでデューイはリチャードを排除することを決めました。
そして実際の暗殺を担当した人物こそ、現在もボーンを追っているアセットだったのです。
つまりボーンは、物語開始時から父を殺した本人に追われていたことになります。
父の死はテロに偽装された
さらに悪質なのは、父を殺しただけではありません。
CIA側は、リチャードがテロリストによって殺されたように見せかけました。
デヴィッドは父が敵の手によって殺されたと信じます。
そして父を失った怒りや喪失感を抱えたまま、国家のために戦う世界へ入っていきました。
そこからトレッドストーンへの志願につながっていきます。
ボーンは確かに自分の意思でトレッドストーンへ志願しました。しかし、その決断を生み出した父の死について、CIAから偽りの情報を与えられていました。
ここが『ジェイソン・ボーン』最大のネタバレであり、本作のテーマを理解するために最も重要な部分です。
ボーンは洗脳されて強制的に計画へ連れてこられたわけではありません。
自分自身で選んだ。
しかし、選択に至るまでの状況はCIAによって作られていた。
この二つは同時に成立します。
だからボーンは「すべてCIAのせいだった」と簡単に責任を手放すことも、「すべて自分のせいだった」と片付けることもできません。
自分の意思と他人による誘導が入り混じっているからこそ、彼の過去はさらに重くなります。
ラスベガスで最後の戦いへ
父の真実へ近づくボーンと並行して、CIA内部ではもう一つの問題が進行しています。
それが巨大IT企業ディープ・ドリームと、新たな監視計画アイアンハンドです。
ディープ・ドリームとCIAの関係
ディープ・ドリームを率いるのは若きCEOアーロン・カルーアです。
世界中に多くの利用者を持つサービスへ成長していますが、その創業にはCIA側の支援が関係していました。
デューイは、その関係を利用してディープ・ドリームが保有する情報へアクセスしようと考えます。
もし巨大なネットサービスの情報を情報機関が自由に利用できれば、対象者の通信、交友関係、行動、関心などをこれまでとは比べものにならない規模で把握できます。
しかしカルーアは、この関係を続けることに反発します。
利用者へ秘密にしたまま個人情報を政府機関へ渡すことを拒み、CIAとの関係を明らかにしようとしました。
デューイはカルーアまで排除しようとする
デューイにとって、カルーアの行動は脅威です。
そこでラスベガスで開かれるイベントの最中に、カルーアを排除しようとします。
暗殺役に選ばれたのはアセットでした。
ここでもデューイのやり方は変わっていません。
秘密を守るために障害になる人間を排除する。
父リチャードに対して行ったことを、時代や対象を変えて繰り返しているわけです。
ボーンが暗殺を阻止する
ボーンもラスベガスへ向かい、アセットがカルーアを狙っていることを察知します。
銃撃によってカルーアは負傷しますが、命を落とすことはありません。
その後、ボーンはデューイと直接対峙します。
ここでデューイはボーンの心を揺さぶろうとします。
お前はトレッドストーンへ自分から来た。
お前はデヴィッド・ウェッブではなく、ジェイソン・ボーンなのだ。
だからCIAへ戻れ。
そんな形でボーンを再び組織へ取り込もうとします。
しかし現在のボーンは、その言葉を受け入れません。
デューイを殺したのはヘザー・リー
デューイの側近クレイグ・ジェファーズとの銃撃でボーンも負傷します。
さらにデューイ自身がボーンを撃とうとした瞬間、そこへ現れたヘザー・リーがデューイを射殺しました。
ここは意外と重要な場面です。
父の暗殺を命じた張本人を、ボーン自身は殺していません。
「父の仇を自分の手で討つ」という分かりやすい復讐劇にはならないのです。
しかし父を実際に殺した男、アセットはまだ逃げています。
ラスベガスのカーチェイスとアセット戦
アセットはSWATの装甲車両を奪って逃走し、ラスベガスの市街地を暴走します。
ボーンも車で追跡。
一般車両を巻き込みながら進む激しいカーチェイスの末、二人はついに直接対決します。
最後は銃撃ではなく、閉ざされた空間での肉弾戦です。
アセットもボーンと同じようにCIAの任務を生き抜いてきた人物なので、戦闘能力は非常に高く、一方的な戦いにはなりません。
それでも最終的にはボーンが勝利し、アセットを倒します。
これによって、父リチャードを実際に殺した人物との因縁には決着がつきます。
ジェイソン・ボーンのネタバレ結末と真相
ここからは、物語を追うだけでは分かりにくい部分をもう少し掘り下げます。
特に重要なのが、父リチャードは善人だったのか、ボーンは本当に自分の意思でトレッドストーンへ入ったのか、アセットはなぜボーンを個人的に憎んでいるのか、ヘザー・リーは味方なのか、そしてラストで録音機を残した意味は何なのかという点です。
父リチャードの正体とは
リチャード・ウェッブは、ジェイソン・ボーンの父親であると同時に、トレッドストーン計画の創設に関係したCIA側の人物でした。
この事実だけを聞くと、「実は父親も悪人だったのではないか」「ボーンが苦しむ原因を作ったのは父ではないか」と感じるかもしれません。
実際、リチャードにも責任がないとは言えません。
父は完全な被害者ではない
リチャードは、何も知らない一般人としてCIAの陰謀に巻き込まれた人物ではありません。
トレッドストーンの成立そのものに関わっています。
後に暗殺者を生み出し、多くの人間を利用することになる仕組みの出発点にいたわけです。
その意味では、息子デヴィッドが苦しむことになった制度へ間接的に責任を持つ人物でもあります。
しかし、息子がトレッドストーンの候補者となっていると知ったとき、リチャードは計画を止めようとしました。
ここに父親としての葛藤があります。
国家のための計画として考えていたものが、自分の子どもを暗殺者へ変えるものとして突然目の前に現れた。
そこで初めて、計画が一人の人間へ何をするものなのかを真正面から理解したのかもしれません。
父の選択も息子の選択と重なる
本作では、父と息子の選択が少し似ています。
リチャードはトレッドストーンを作る側にいたものの、途中でその危険性に気づいて止めようとします。
デヴィッドも自分からトレッドストーンへ入り、暗殺者として任務を行ったものの、やがてその生き方を拒絶します。
二人とも最初から完全な被害者ではありません。
一度は自分で選択し、その後、自分が関わったものの恐ろしさを理解して抜け出そうとしています。
◆ふくろうのワンポイント
リチャードを完全な善人と見るより、「自分も作る側にいた仕組みの危険性を、息子が巻き込まれて初めて理解した人物」と見ると、本作の父子関係が分かりやすくなります。
そして二人の大きな違いは、父は逃げ切れず殺されましたが、息子であるボーンはその仕組みから抜け出し、自分の人生を取り戻そうとしている点です。
ボーンはなぜ自ら志願したのか
『ジェイソン・ボーン』を見て混乱しやすいのが、「結局ボーンはCIAに無理やり暗殺者にされたのか」という点でしょう。
答えは、完全な強制ではありません。
デヴィッド・ウェッブは自らトレッドストーンへ参加しています。
この事実自体は変わりません。
自分で選んだという事実
過去作でボーンは、自分がトレッドストーンへ志願した記憶を取り戻しています。
つまりCIAに誘拐され、無理やり暗殺者へ改造されたわけではありません。
デヴィッド自身の意思決定がありました。
この部分は、ボーン自身にとって非常に苦しい事実です。
もし完全に被害者なのであれば、すべてをCIAの責任にできます。
しかし、自分で選んだのであれば、暗殺者ジェイソン・ボーンとして行ったことについて自分自身も責任を引き受けなければなりません。
ただし選択の前提は操作されていた
本作で新しく明らかになるのは、その「自分の意思」が生まれるまでの背景です。
父リチャードはCIA側によって殺されました。
ところがデヴィッドには、父がテロリストによって殺されたように伝えられます。
父を敵に奪われたと信じた青年が、国家のために戦う世界へ進む。
その心理を考えると、父の死はデヴィッドの人生を大きく方向づけています。
CIAは「トレッドストーンへ入れ」と命令したわけではなくても、彼がその選択をしやすい状況を作っていました。
ボーンの人生で問題なのは「選択させられた」のではなく、「自分で選んだと思える状況そのものを作られていた」ことです。
デューイの言葉が完全な嘘ではない理由
終盤でデューイは、ボーンへ「お前は自分から志願した」という事実を突きつけます。
これは嘘ではありません。
だからこそボーンにとって厄介です。
しかしデューイは、その決断へ至るまでにCIAが父を殺し、真実を隠していたことには触れません。
事実の一部分だけを使い、ボーンを再び「ジェイソン・ボーン」という役割へ戻そうとします。
ボーンが最後にその誘いを拒絶するのは、自分の過去を否定するからではないでしょう。
自分が選んだことも認める。
しかし、だからといって再び誰かに人生を決めさせるつもりはない。
そんな意思を感じます。
アセットがボーンを憎む理由
ヴァンサン・カッセル演じるアセットは、本名さえ明かされないCIAの暗殺者です。
単にデューイから命令されてボーンを追っているように見えますが、実はボーンへ個人的な恨みを持っています。
ブラックブライアー暴露の影響
原因となったのは、過去にボーンがCIAの秘密計画ブラックブライアーを暴露したことです。
秘密作戦が明るみに出たことで、現場で活動していた工作員たちにも影響が及びます。
アセットもその一人でした。
彼はシリアで拘束され、長期間にわたり過酷な経験をすることになります。
アセットからすれば、自分が苦しむことになった原因を作った人物がボーンです。
そのため今回の追跡には、任務だけではなく復讐という個人的感情が混ざっています。
アセットはもう一人のボーン
ただ、アセットを単純な悪役として見るだけでは少しもったいない人物です。
なぜなら彼もまた、CIAから命令を受けて殺人を行う工作員だからです。
かつてのボーンと非常によく似ています。
違うのは、ボーンがその世界から抜け出したのに対して、アセットは今も組織の命令を実行し続けていることです。
ボーンは自分が利用されていたことを知り、その生き方を拒絶しました。
一方のアセットは、過酷な経験をした後もデューイのために暗殺を続けています。
アセットは、もしボーンがCIAから逃げずに暗殺者として生き続けていたらどうなっていたかを映す「もう一人のボーン」のような存在です。
最後が肉弾戦になる意味
ラスベガスの終盤で、二人は銃ではなく身体を使って直接戦います。
この戦いは、単に派手なアクションを見せるだけの場面ではありません。
同じような技術を持ち、同じように国家の暗い仕事をしてきた二人。
一方は組織から離れようとし、もう一方は組織の中に残った。
二人の生き方が真正面からぶつかっているようにも見えます。
父の仇という意味だけでなく、ボーンが過去の自分と決着をつける場面として見ることもできるでしょう。
アイアンハンドの目的とは
ニッキーがCIAから持ち出したファイルには、アイアンハンドという新しい極秘計画が記録されていました。
この計画は細部まですべて説明されるわけではありませんが、映画全体から読み取れるのは、デジタル社会における監視の拡大です。
トレッドストーンとの違い
トレッドストーンは、選ばれた人間を暗殺要員へ変え、国家の目的のために利用する計画でした。
対象になるのは限られた人間です。
しかしアイアンハンドが示す世界では、対象が一部の工作員だけではありません。
巨大IT企業が集めるデータを利用できれば、一般の人々の行動まで把握できる可能性があります。
つまり監視の対象が、特定の人物から社会そのものへ広がっているのです。
ディープ・ドリームが重要な理由
そこで重要になるのがアーロン・カルーア率いるディープ・ドリームです。
大量の利用者がサービスを利用すれば、そこには膨大な情報が集まります。
誰とつながっているのか。
どのような情報を見ているのか。
どのようなサービスを利用しているのか。
そうした情報へ政府機関がアクセスできるようになれば、旧シリーズでボーン一人を追いかけていた監視体制とは規模がまるで違います。
旧シリーズでは、CIAは電話、監視カメラ、現場の工作員などを使ってボーンを追跡していました。
本作ではその一歩先へ進み、日常生活で使うサービスそのものが監視網になろうとしています。
「一人の人間を支配するCIA」から「情報によって社会全体を把握しようとするCIA」へ変化していることを象徴するのがアイアンハンドです。
ボーンの物語とのつながり
一見すると、ディープ・ドリームと父リチャードの話は別々に見えるかもしれません。
しかし根本にある問題は共通しています。
国家が「安全」や「必要性」を理由として、個人の意思をどこまで管理してよいのか。
ボーン自身も、自分の人生をCIAによって大きく変えられた人物です。
その一方でCIAは、今度はデジタル技術を使い、多くの人間の生活へ入り込もうとしている。
だからアイアンハンドは、本筋とは無関係な追加要素ではありません。
ボーンが経験した問題が、より巨大な形で社会全体へ広がろうとしていることを示しています。
ヘザー・リーは味方か敵か
アリシア・ヴィキャンデル演じるヘザー・リーは、本作の登場人物の中でも特に立場が分かりにくい人物です。
序盤ではCIAのサイバー部門責任者としてニッキーを追跡し、ボーンの居場所を探しています。
そのため、最初はデューイと同じ側の敵に見えます。
ところが物語が進むほど、二人の考え方の違いが見えてきます。
リーはボーンを殺したくない
デューイは、ボーンを危険人物として排除しようとします。
それに対してリーは、ボーンをCIAへ戻せる可能性があると考えます。
彼女はボーンについて分析し、彼の中にはまだ国への思いが残っていると判断します。
殺すのではなく、利用できるのではないか。
この考えから、リーは次第にデューイと対立していきます。
デューイを殺したから味方とは限らない
最終的にリーはデューイを射殺します。
さらにボーンへ情報を渡す場面もあるため、途中までは新たな協力者に見えます。
しかし、ラストでその見方が変わります。
事件後、リーは国家情報長官エドウィン・ラッセルと話し、自分ならこれからのCIAを変えられるという姿勢を示します。
そしてボーンについて、まずは組織へ戻すよう説得する。
それができないのであれば排除する。
そんな考えを明かします。
つまりリーは、ボーンの自由を守るためだけに動いていたわけではありません。
彼女自身もボーンを自分の計画へ利用しようとしています。
デューイとリーの違い
ただし、リーとデューイをまったく同じ人物と考える必要もありません。
デューイは古いCIAを象徴する人物です。
命令、暴力、暗殺、隠蔽。
邪魔な人間は排除するという非常に直接的な方法を取ります。
一方、リーは情報を使います。
相手の心理を読み、信頼を得て、自分から協力したいと思わせようとする。
方法はずっと現代的です。
しかし目的を見ると、どちらもボーンを一人の自由な人間として放っておくつもりはありません。
そこが本作の皮肉な部分です。
◆ふくろうのワンポイント
デューイを倒せば問題が終わるのではなく、次にはリーのような新しい考え方を持った人物が現れます。相手が変わっても、「国家がボーンを利用したい」という構図そのものは残っています。
ラストの録音機が示す意味
物語の最後、ヘザー・リーはボーンと会います。
リーは父リチャードを偲ぶ品をボーンへ渡しながら、CIAへ戻るよう働きかけます。
ボーンはその場で強く拒絶しません。
考えておくというような態度を見せ、その場を去ります。
ここだけを見ると、ボーンがリーを信用し始め、CIAへ戻る可能性を考えているようにも見えます。
リーの車に残されていたもの
しかしリーが車へ戻ると、そこにはボーンが残した録音機がありました。
録音されていたのは、リーがラッセルと話していた内容です。
ボーンをCIAへ戻す。
戻せなければ排除する。
リーが裏で語っていた本音を、ボーンはすでに把握していました。
つまり、最後の会話でボーンがリーにだまされていたわけではありません。
相手が自分をどのように利用しようとしているのか理解したうえで、何も知らないふりをして立ち去ったのです。
録音機は「あなたの本当の狙いはすでに分かっている。私はもう操られない」という、ボーンからリーへの無言の警告です。
なぜリーを殺さなかったのか
ここで注目したいのは、ボーンがリーを殺さないことです。
彼女が「取り込めなければ排除する」と考えているのであれば、将来的にはボーンの敵になる可能性があります。
過去の暗殺者ジェイソン・ボーンであれば、危険を先回りして消すという考え方もあったかもしれません。
しかし現在のボーンはそうしません。
相手の企みを把握し、自分がだまされていないことだけを伝え、その場を去ります。
ここにはボーンの変化があります。
誰かを殺す能力があることと、実際に殺すことを選ぶことは違います。
かつてCIAの命令に従って標的を排除していた男が、今は自分で判断し、必要のない殺人を選ばない。
これは彼が暗殺者という役割から離れようとしていることを示しているのではないでしょうか。
ラストはCIAへの復帰を否定している
そのため、本作のラストを「ボーンがCIAへ戻るかもしれない終わり方」とだけ見ると、本当の意味を取りこぼしてしまいます。
もちろん物語上は、将来の可能性を完全に閉ざしているわけではありません。
しかし、この時点のボーンはリーの提案を受け入れていません。
むしろ彼女の裏の計画を見抜き、自分のほうが一歩先にいることを示して姿を消します。
もう二度とCIAに自分の人生を決めさせない。その意思を示して再び姿を消すことが、本作の結末です。
ニッキーとボーンは恋人だった?
ニッキー・パーソンズとボーンの関係についても、シリーズを見ていると気になるところです。
二人は単なる元CIA職員と元工作員という関係以上に、お互いを強く信頼しています。
特にニッキーは、自分が危険になることを承知で何度もボーンを助けてきました。
過去作では特別な関係を示唆
過去作では、ニッキーが記憶を失う以前のボーンとの関係について、何か特別な過去があったことを感じさせる発言をしています。
そのため、トレッドストーン時代に二人が恋愛関係にあったのではないかと受け取ることはできます。
ただし映画シリーズの中で、二人が正式な恋人同士だったと明確に説明されたことはありません。
この点は断定しないほうがよいでしょう。
ニッキーは過去を知る数少ない人物
恋人だったかどうか以上に重要なのは、ニッキーが「ジェイソン・ボーンになる前後のデヴィッド・ウェッブ」を知る数少ない人物だということです。
ボーン本人には記憶がありませんでした。
その時代の自分を知っている人物がそばにいることは、彼にとって非常に大きな意味を持ちます。
マリーを失い、CIAから逃げ続け、過去の関係者が次々といなくなっていくなかで、ニッキーは長く残っていた存在でした。
だから本作での死が重く感じられます。
ボーンは父の真相を知るためだけでなく、ニッキーが命をかけて届けた情報を無駄にしないためにも動いているように見えます。
父への復讐は終わったのか
結果だけを見ると、父リチャードの死に関係する中心人物には決着がつきます。
| 人物 | 結末 |
|---|---|
| リチャード・ウェッブ | 過去にアセットによって殺害 |
| ニッキー・パーソンズ | アテネでアセットに撃たれて死亡 |
| マルコム・スミス | アセットの攻撃によって死亡 |
| ロバート・デューイ | ヘザー・リーに射殺される |
| アセット | ボーンとの格闘の末に死亡 |
| アーロン・カルーア | 負傷するが生存 |
| ヘザー・リー | 生存 |
| ジェイソン・ボーン | CIAへ戻らず姿を消す |
父を殺した二人には決着がつく
父の暗殺を命じたデューイはリーによって死亡。
父を実際に殺したアセットはボーンとの戦いで死亡します。
その意味では、リチャード殺害事件そのものには決着がついたと言えます。
しかし、『ジェイソン・ボーン』は「父の仇を倒したので主人公は幸せになりました」という物語ではありません。
ボーン自身の罪は消えない
ボーンが父の死の真相を知っても、自分が暗殺者として殺してきた人々が戻ってくるわけではありません。
「父の死によって人生を誘導されていた」と分かったとしても、自分自身でトレッドストーンへ志願した事実も消えません。
つまり彼は、自分が被害者だったことと、自分にも責任があることの両方を抱えて生きなければならないのです。
この点が、単純な復讐映画とは大きく違います。
CIAという仕組みそのものは残る
さらに、デューイが死んでもCIAそのものが消えるわけではありません。
実際、次にはヘザー・リーがボーンを利用しようとしています。
トレッドストーンが終わってもブラックブライアーが生まれ、さらにアイアンハンドのような新しい計画が生まれる。
一つの計画や一人の責任者を倒しても、同じ発想が別の形で続いていきます。
そのためボーンが本当に戦っている相手は、特定の悪人だけではないのでしょう。
個人の意思よりも組織の目的を優先し、人間を利用できる存在として扱う考え方そのものと戦い続けています。
ジェイソン・ボーンに関するよくある質問(FAQ)
Q1. ジェイソン・ボーンの父親は何者ですか?
A. 父親はCIA関係者のリチャード・ウェッブです。トレッドストーン計画の創設に関わっていました。ただし息子デヴィッドが暗殺要員候補になったことを知ると計画に反対し、秘密を公表しようとします。そのためCIA長官ロバート・デューイから危険人物と判断され、暗殺されました。
Q2. ボーンの父親を殺した犯人は誰ですか?
A. リチャード・ウェッブを実際に殺したのはアセットです。暗殺を命じたのはロバート・デューイでした。さらにCIA側はリチャードの死をテロリストによる犯行だったように見せかけています。デヴィッドはその偽りを信じたままCIAへ進みました。
Q3. ニッキー・パーソンズは本当に死亡したのですか?
A. 本作で死亡しています。アテネでボーンと逃走している途中、アセットに狙撃されました。ボーンとの間に正式な恋愛関係があったとは明言されていませんが、過去作から特別な信頼関係があったことは示されています。
Q4. ヘザー・リーはボーンの味方ですか?
A. 完全な味方とは言えません。デューイとは対立し、ボーンを助ける行動も取りますが、最終的にはボーンをCIAへ取り込み、説得できなければ排除する考えを持っていました。ボーンはその本音まで把握したうえで彼女の前から姿を消します。
Q5. ラストでボーンはCIAへ復帰したのですか?
A. 復帰していません。リーからCIAへ戻るよう提案されますが、その場で受け入れずに立ち去ります。さらにリーとラッセルの会話を録音した機器を車内へ残しているため、彼女の計画を見抜いたうえで距離を取ったことが分かります。
ジェイソン・ボーンのネタバレまとめ
『ジェイソン・ボーン』で明かされる最大の真実は、父リチャード・ウェッブがトレッドストーンの創設に関係しており、その父をCIA側が殺していたことです。
リチャードは当初トレッドストーンを作る側にいました。
しかし息子デヴィッドが暗殺要員候補になっていることを知り、計画の暴露を決意します。
その動きを危険視したロバート・デューイは、アセットへリチャードの暗殺を命令しました。
さらにCIA側はリチャードの死をテロリストによる犯行に見せかけます。
父を敵に殺されたと思い込んだデヴィッドは、その怒りや喪失を抱えたままCIAへ進み、自分の意思でトレッドストーンへ志願しました。
ここで重要なのは、ボーンが完全に操られていたわけではないということです。
彼自身が選択しています。
しかし、その選択を生み出した環境にはCIAの嘘がありました。
だから『ジェイソン・ボーン』では、「自由意思とは何なのか」という難しい問題が浮かび上がります。
自分で選んだのなら、すべて自分の責任なのか。
誰かが意図的に情報を隠し、選択しやすい方向へ誘導していたとしても、それは本人の自由意思と言えるのか。
ボーンが本作で向き合うのは、単に父親を殺した犯人だけではありません。
自分の人生だと思っていたものが、どこまで本当に自分のものだったのかという問題です。
ニッキーの死を経て真実へ近づいたボーンは、父を実際に殺したアセットを倒します。
一方、暗殺を命じたデューイを殺したのはヘザー・リーでした。
これで父をめぐる事件には一応の決着がつきます。
しかし、新しい問題が残ります。
デューイを倒したリー自身も、ボーンを自由にしようとしていたわけではありません。
CIAへ戻すことができれば利用し、できなければ排除するつもりでした。
ところがボーンは、その会話まで録音しています。
最後にリーの車へ録音機を残した行動は、彼女への警告であると同時に、ボーン自身の成長を示す場面でしょう。
以前の彼は、自分が何者なのか分からず、CIAから与えられた情報の中を走り回っていました。
しかし現在のボーンは違います。
相手の考えを見抜き、利用されそうになっていることも理解し、それでも自分で進む方向を決めています。
リーを殺すこともしません。
組織へ戻ることもしません。
ただ、自分の意思で立ち去ります。
自分の過去も、父の真実も、自分自身が犯した罪も知ったうえで、それでもこれからの人生だけは誰にも決めさせない。
『ボーン・アイデンティティー』から続いてきた「自分は誰なのか」という問いは、本作で「これから自分を何者にするのか」という問いへ変化しています。
記憶を取り戻せば人生が元に戻るわけではありません。
過去を知った後、その過去とどう向き合うのか。
誰かに作られた役割を受け入れるのか、それとも自分で新しい生き方を選ぶのか。
だから私は、『ジェイソン・ボーン』を単なる父親の復讐劇として見るよりも、他人によって形作られた人生から、もう一度自分の人生を取り戻そうとする物語として見ると、父の秘密からラストの録音機まで一本につながる作品だと思います。