
こんにちは、物語の知恵袋のふくろうです。
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は、声を出せない女性イライザと、政府の研究施設に捕らえられた不思議な生きものが恋に落ちる物語です。
イライザは銃で撃たれたのに、なぜ水中で目を覚ましたのでしょうか。首の傷がエラになったのは、もともと人間ではなかったからなのでしょうか。
また、本作には自慰を示唆する描写や性的な場面もあります。恋人や家族と一緒に観る場合、気まずくならないか気になるところでしょう。
私がこの物語で大切だと思うのは、二人が異なる姿をしていることよりも、互いを対等な存在として見ていることです。
言葉を自在に使えるストリックランドが半魚人を理解しようとせず、声を出せないイライザが彼の気持ちに耳を傾ける。この対比に、本作の魅力が詰まっていると感じます。
この記事では、『シェイプ・オブ・ウォーター』のあらすじと結末をネタバレありで解説します。さらに、気まずい場面の内容、イライザの正体、ラストの意味、半魚人との愛が描くものまで掘り下げていきます。
※ここから先は、映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の結末を含む重大なネタバレがあります。
この記事でわかること
- 『シェイプ・オブ・ウォーター』の詳しいあらすじと結末
- 性的描写や気まずい場面の内容と年齢制限
- イライザの首の傷がエラになった理由と正体
- 半魚人との恋愛やラストシーンに込められた意味
シェイプ・オブ・ウォーターの基本情報

『シェイプ・オブ・ウォーター』は、ギレルモ・デル・トロ監督が手がけた2017年製作のファンタジー映画です。まずは作品情報と登場人物、物語の舞台を確認しましょう。
映画の基本情報と受賞歴
本作は2017年のヴェネツィア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞しました。さらに、第90回アカデミー賞では13部門にノミネートされ、作品賞を含む4部門で受賞しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | シェイプ・オブ・ウォーター |
| 原題 | The Shape of Water |
| 製作年 | 2017年 |
| 日本公開日 | 2018年3月1日 |
| 監督 | ギレルモ・デル・トロ |
| 脚本 | ギレルモ・デル・トロ、ヴァネッサ・テイラー |
| 上映時間 | 約123分 |
| 製作国 | アメリカ |
| ジャンル | ファンタジー、恋愛、ドラマ |
| 劇場公開版の区分 | R15+ |
| オリジナル無修正版 | R18+ |
| 音楽 | アレクサンドル・デスプラ |
| アカデミー賞 | 作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞 |
人間の姿をしていない存在を、本当に愛することはできるのか。そんな問いを中心に置いた、少し大人向けのおとぎ話になっています。
主な登場人物とキャスト
物語の中心となるのはイライザと半魚人ですが、彼女を支える人々にも重要な役割があります。
| 登場人物 | キャスト | 人物の特徴 |
|---|---|---|
| イライザ | サリー・ホーキンス | 声を出せない女性清掃員 |
| 不思議な生きもの | ダグ・ジョーンズ | 南米から連れてこられた半魚人 |
| ストリックランド | マイケル・シャノン | 半魚人を管理する軍人 |
| ジャイルズ | リチャード・ジェンキンス | イライザの隣人で友人 |
| ゼルダ | オクタヴィア・スペンサー | イライザの同僚の清掃員 |
| ホフステトラー | マイケル・スツールバーグ | 半魚人を研究する科学者 |
主人公のイライザは、幼い頃から声を出すことができません。主に手話で意思を伝え、政府の極秘研究施設で夜間清掃員として働いています。
親友のゼルダは彼女の手話を理解し、仕事中も支えてくれる存在です。隣人のジャイルズとは古い映画を観たり、食事をしたりする親しい関係を築いています。
一方、施設に運ばれてきた半魚人には固有の名前がありません。人間たちは彼を研究対象として扱い、ストリックランドは暴力によって服従させようとします。
1962年のアメリカが舞台の理由
映画の舞台は1962年、冷戦下のアメリカです。当時はアメリカとソ連が宇宙開発などで競争していた時代でした。
半魚人も、その競争に利用できるかもしれない未知の生物として研究されています。人間とは異なる呼吸能力を調べ、科学技術に役立てようとしているのです。
当時の社会には、人種差別や女性への偏見、同性愛に対する不寛容もありました。黒人女性のゼルダ、同性愛者のジャイルズ、声を出せないイライザは、それぞれ異なる立場から社会の生きづらさを抱えています。
華やかなアメリカ社会の裏側で、自分らしく生きられない人々。その姿は、研究施設に閉じ込められた半魚人の境遇とも重なります。
シェイプ・オブ・ウォーターのあらすじ

ここからは、映画の始まりから結末までを時系列で振り返ります。イライザと半魚人がどのように出会い、なぜ命懸けの脱出を選ぶことになったのか。その流れを追っていきましょう。
イライザと半魚人の出会い
ボルチモアの古い映画館の上にあるアパートで、イライザは一人暮らしをしています。
仕事先は政府の極秘研究施設。イライザは同僚のゼルダと一緒に清掃を担当しています。
ある日、施設に大きな容器が運び込まれました。その中に閉じ込められていたのは、魚と人間を組み合わせたような奇妙な姿の生物です。
南米アマゾン流域から連れてこられたその生物は、水中で呼吸できるだけでなく、陸上でも活動できる能力を持っていました。
管理責任者のストリックランドは、彼を危険な生物として扱います。電気棒で痛みを与え、力によって支配しようとするのです。
やがて半魚人はストリックランドに反撃し、指を2本噛み切ります。清掃に入ったイライザたちは、その指を発見して回収することになりました。
卵と音楽で心を通わせる二人
イライザは仕事の合間に研究室へ忍び込み、半魚人にゆで卵を差し出します。
やがてイライザは音楽を聴かせ、手話を使って交流するようになります。
ここで印象的なのは、二人の間に人間の言葉による会話がなくても、関係が深まっていくことです。
対照的に、ストリックランドは言葉を話せるにもかかわらず、半魚人の意思を理解しようとしません。
私は、この違いが本作の重要な部分だと思います。話す能力があることと、相手を理解しようとすることは、同じではないんですね。
イライザにとって半魚人は、自分を声の出せない不完全な人間として扱わない存在でした。半魚人にとっても、イライザは自分を単なる実験材料として見ない相手だったのです。
解剖計画を知り救出を決意
二人の交流が続く中、研究施設では半魚人の解剖計画が進められていました。
科学者のホフステトラーは、半魚人が高度な知性を持っていることに気づいていました。研究を続ける価値があると主張しますが、上層部は解剖を進めようとします。
実はホフステトラーの正体は、アメリカに潜入していたソ連側の工作員でした。
ソ連もまた、半魚人の能力がアメリカに利用されることを恐れ、彼に生物の殺害を命じます。
解剖の予定を知ったイライザは、半魚人を施設から逃がそうと決意します。
最初は隣人のジャイルズも反対しました。政府を相手にするのはあまりにも危険だからです。
しかしイライザは、半魚人が自分をありのままに見てくれること、そして彼を見殺しにすることはできないという思いを手話で訴えます。
研究施設からの脱出作戦
イライザたちは搬出用の車両や洗濯物を利用し、半魚人を施設の外へ逃がそうとします。
そんな中、ホフステトラーが彼らを助けます。
本来は半魚人を殺害する任務を負っていましたが、科学者として彼の知性と生命の価値を理解していたからです。
ゼルダもイライザの行動を知り、脱出に協力します。
脱出作戦は成功し、半魚人はイライザのアパートへ運ばれます。
浴槽で始まる二人の共同生活
イライザは自宅の浴槽に水を張り、半魚人をかくまうことにします。
しかし、浴槽は彼が長く暮らせる環境ではありません。当初は水の塩分が足りず、半魚人が呼吸に苦しむ場面もあります。その後、必要な環境を整えながら、限られた時間の中で世話を続けます。
イライザとジャイルズは、雨によって運河の水位が上がる時期を待ち、半魚人を海へ帰す計画を立てていました。
ところがある日、半魚人が浴槽から抜け出し、ジャイルズの飼い猫を食べてしまいます。
さらに、止めようとしたジャイルズの腕まで傷つけます。
この場面によって、半魚人には人間とは異なる本能や生活習慣があることが分かります。イライザに優しく接するからといって、完全に無害な存在ではありません。
その後、半魚人はジャイルズの傷に触れます。すると傷が治り、薄くなっていた髪まで再び生え始めました。
半魚人には、人間の身体を癒やす不思議な力があったのです。
二人の愛が深まる場面
イライザと半魚人は、一緒に過ごす時間を重ねるうちに恋人同士になります。
やがてイライザは、半魚人と身体的な関係も持ちます。
翌日、ゼルダは彼女の様子が普段と違うことに気づきます。イライザは手話で二人の関係を説明し、幸せそうな表情を浮かべました。
また、印象的なのが浴室を水で満たす場面です。
イライザはドアの隙間を塞ぎ、水を流し続けます。室内は水で満たされ、二人は水中で抱き合いました。
当然ながら水は下の映画館へ漏れ始め、ジャイルズが慌てて駆けつけます。
ストリックランドの追跡と裏切り
半魚人を逃がした責任を問われたストリックランドは、上官から厳しく追い詰められます。
一方、ホフステトラーはソ連側の工作員と接触します。しかし、祖国への帰還を期待していた彼を待っていたのは、口封じのための銃撃でした。
そこへ現れたストリックランドは工作員たちを射殺し、瀕死のホフステトラーを尋問します。
そして半魚人の脱出に、イライザとゼルダが関わっていたことを突き止めるのです。
ストリックランドはゼルダの家に押しかけますが、ゼルダはイライザを守ろうとして秘密を明かしません。
ところが、夫のブリュースターが恐怖から口を滑らせてしまいます。
半魚人がイライザの部屋にいると知ったストリックランドは、すぐに彼女のもとへ向かいました。
シェイプ・オブ・ウォーターの結末
物語の終盤では、イライザと半魚人が運河でストリックランドに追い詰められます。ここで起こる出来事こそ、本作のラストをめぐる考察の中心です。
運河でイライザが銃撃される
雨が降り、運河の水位が上昇したことで、半魚人を海へ戻す機会が訪れます。
イライザとジャイルズは、弱った半魚人を連れて運河へ向かいました。
イライザは半魚人を愛しています。しかし、そのまま一緒に暮らせば、彼が死んでしまうかもしれません。
二人が別れを迎えようとした瞬間、ストリックランドが現れました。
彼はジャイルズを殴り倒し、半魚人に銃を向けます。そして半魚人に発砲し、さらにイライザにも銃を向けて撃ちます。
半魚人が復活して敵を倒す
銃で撃たれた半魚人は自らの傷を回復させ、何事もなかったかのように立ち上がります。
その姿を目撃したストリックランドは、半魚人が人間の理解を超えた存在であると悟ります。
それまで半魚人を野蛮な生物として扱っていた男が、ようやく彼の神聖な力を認めたのです。
半魚人は鋭い爪でストリックランドの喉を切り裂き、彼を殺害します。
私はこの場面を、単なる悪役への報復だけではないと感じます。人間の形をしていることが、優しさや正しさの証明にはならない。その事実が、最後にはっきり示されたように思うのです。
イライザの首の傷がエラになる
半魚人は倒れたイライザを抱き上げ、ともに運河へ飛び込みます。
水中で半魚人はイライザを抱きしめ、彼女に触れます。
すると、イライザの首にあった3本の傷が開き、魚のエラのような形へ変化しました。
イライザは目を覚まし、半魚人と抱き合います。
映画の映像では、イライザは水中で再び生きているように描かれているのです。
ただし、彼女が最初からエラを持っていたのか、それとも半魚人の力で新たに作られたのかについて、映画は明確な答えを示していません。
二人は最後に幸せになった?
ラストではジャイルズのナレーションが流れ、イライザと半魚人が水中で寄り添う姿が描かれます。
この描写をそのまま受け取れば、イライザは水中で生きられるようになり、半魚人と一緒に新しい人生を歩み始めたことになります。
永遠の命を得たという説明もなく、半魚人と同じ種族になったと明言されるわけでもありません。
イライザは陸上では自分の居場所を十分に見つけられませんでした。しかし、水中では愛する相手と抱き合い、誰かから否定されることなく存在しています。
二人が最後に得たものは、相手と一緒に生きられる場所だった。私はそんなハッピーエンドとして受け止めたいです。
シェイプ・オブ・ウォーターは気まずい?
本作は美しい恋愛ファンタジーとして知られていますが、性的な描写や暴力的な場面も含まれています。恋人や家族と観る予定がある場合、どのような内容が登場するのか知っておくと判断しやすいでしょう。
性的な場面や裸の描写はある?
イライザが入浴中に自慰行為をすることを示唆する場面があり、女性の裸体も映し出されます。
また、ストリックランドと妻の性行為を描く場面や、イライザと半魚人が身体的な関係を持つ描写も含まれています。
ただし、半魚人との関係については、行為の細部を長時間見せる作品ではありません。二人が恋人になったことを伝える描写や、ゼルダとの会話によって表現される部分もあります。
英国の映像審査機関BBFCも、本作について性行為の動き、自慰を示唆する描写、女性の全裸、性的な言及が含まれると案内しています。
(出典:英国映像審査機関BBFC『The Shape of Water』作品内容案内)
家族や恋人と見ると気まずい?
気まずいと感じるかどうかは、一緒に観る相手との関係や、普段からどのような映画を観ているかによって変わります。
一方、親やきょうだいと一緒に観る場合、入浴中の場面や夫婦の性的な描写に戸惑う可能性があります。
ただ、性的な描写があることと、二人の恋愛をどう評価するかは別の問題だと思います。
二人の関係を単なる珍しい組み合わせとして見るのではなく、互いの存在を認める恋愛として受け止めると、場面の意味も変わってくるのではないでしょうか。
グロい描写や暴力にも注意
ストリックランドの指が噛み切られ、再接合した指が腐敗していく場面があります。また、電気棒を使った拷問、銃撃、傷口に触れる尋問など、痛みを感じさせる描写も登場します。
注意ポイント
- 自慰を示唆する場面や裸体の描写
- 夫婦やイライザと半魚人の性的な関係
- 指の切断や腐敗を伴う表現
- 拷問、銃撃、流血の描写
- 猫が捕食される場面
- 差別的な言動や暴言
R15版とR18版の違い
劇場公開版はR15+、オリジナル無修正版はR18+です。
映画倫理機構の審査記録によると、いずれも主に性的な描写を理由として区分されています。無修正版については、劇場公開版とは別に審査された作品であることも明記されています。
(出典:映画倫理機構『シェイプ・オブ・ウォーター』審査作品情報)
| バージョン | 日本の年齢区分 | 特徴 |
|---|---|---|
| 劇場公開版 | R15+ | 日本の劇場公開向けに審査された版 |
| オリジナル無修正版 | R18+ | 別途審査された無修正版 |
また、配信サービスによってどちらのバージョンが提供されているかは異なる可能性があります。現在の配信版について、一律に劇場公開版または無修正版だと断定することはできません。
正確な情報は、視聴予定のサービスや作品の公式案内をご確認ください。
イライザの正体と首の傷を考察
映画を観終わったあと、特に気になるのがイライザの正体です。彼女は本当に普通の人間だったのでしょうか。幼少期の出来事や監督の発言から、最後の変化を考えていきます。
イライザは最初から人魚だった?
映画では、イライザが幼い頃に川辺で発見された孤児であることが語られます。
また、彼女の首には幼少期から3本の傷があり、声を出すことができませんでした。
彼女は日常的に浴槽で過ごし、水に包まれることを好みます。半魚人と一緒にいるときも、水中の空間に自然となじんでいました。
こうした描写をつなげると、イライザはもともと水中で生きられる存在だったのではないかという考え方が生まれます。
ただし、映画の中で彼女が人魚だったと明言されることはありません。魚の尾を持つ姿に変身するわけでもなく、具体的な種族は不明です。
首の傷はもともとエラだった?
2018年のインタビューで監督は、イライザの首の傷について、最初からエラだったという解釈を支持していると説明しました。
監督が重要視していたのは、真実の愛は相手を別の存在へ変えるのではなく、相手が本来持っている性質を明らかにするという考え方でした。
つまり、イライザは最後に突然半魚人へ変わったのではなく、ずっと隠れていた本当の性質が表れたと読むことができます。
ただし、監督は自分の解釈が唯一の正解であるとはしていません。
半魚人の治癒能力によって、新たにエラを与えられたという読み方も残されています。
声が出ない理由は明かされた?
公式の作品紹介では、幼少期の出来事によって声を失った女性として説明されていますが、その具体的な経緯は映画の中で詳しく描かれません。
首の傷が原因で声を失ったようにも受け取れますが、誰かに傷つけられたことが明確に映し出されるわけではないのです。
ラストのエラを踏まえると、声を出せないことも、彼女の水中生物としての性質に関係していた可能性があります。
映画が大切にしているのは、彼女が話せない原因を解明することよりも、声を出せなくても誰かと深く理解し合えるという事実なのかもしれません。
半魚人はイライザを生き返らせた?
ラストでイライザは銃撃を受けて倒れますが、半魚人が彼女を水中に連れていくと、再び目を覚まします。
ジャイルズの傷を治し、髪を生えさせたことに加え、半魚人自身も銃撃による傷を回復させています。
ただし、イライザの死亡が医学的に確認される場面はありません。完全に死亡した後で蘇生したのか、命を失う寸前で救われたのかは分からないのです。
ラストのポイント
イライザは銃撃されて倒れますが、水中で首の傷がエラのように開き、目を覚まします。
半魚人には治癒能力があるため、彼女が救われたと考える根拠があります。ただし、出生の秘密やエラの成り立ちまでは明かされていません。
ラストシーンに込められた意味
イライザの正体だけでなく、ラストが現実なのか、それとも誰かの願いを映した幻想なのかも気になるところです。作品の語り方や映像表現から考えてみましょう。
最後は現実かジャイルズの幻想か
本作はジャイルズのナレーションによって始まります。
冒頭では、眠れるように水中を漂うイライザの部屋が映し出され、現実とおとぎ話の境界が曖昧な世界へ観客を誘います。
彼は二人が幸せになったと信じていますが、水中で起きた出来事を直接目撃したわけではありません。
そのため、最後の光景はジャイルズの願いや想像ではないか、という解釈も成り立ちます。
一方、半魚人の治癒能力はすでに描かれており、イライザが実際に生き返ったという読み方にも根拠があります。
私は、ジャイルズの語りを「すべてが作り話だった証拠」とするよりも、彼が二人の幸せを信じ、その愛を語り継いでいることに意味があると感じます。
美しいラストから死亡説が生まれる作品としては、映画『怪物』も印象的です。あちらも、映像が幻想的であることと実際の生死は分けて考える必要があります。詳しくは映画『怪物』の結末と死亡説の考察で解説しています。
ラストはハッピーエンドなのか
『シェイプ・オブ・ウォーター』の結末を、幸せなものと感じるか、切ないものと感じるかは人によって違うでしょう。
しかし、二人が幸せになるためには、人間社会から離れる必要がありました。
けれども、現実の世界では半魚人は実験対象として追われ、イライザも彼を助けたことで命を狙われます。
それを悲しいと考えることもできますし、ようやく本当の居場所を見つけた幸福な結末だと考えることもできます。
人間の社会では許されなかった愛が、水中では何の説明も必要としない。そんな解放感が、ラストの美しさにつながっているのではないでしょうか。
最後に赤い靴が離れる意味
水中のラストでは、イライザの赤い靴が離れていく様子も印象的に描かれます。
本作では色彩が重要な役割を持っており、特に赤は愛や情熱を連想させる色として使われています。
それまで青や緑に包まれていたイライザの生活には、半魚人との恋愛が深まるにつれて赤い色が目立つようになります。
監督は、赤い靴が水中で離れていく映像について、物質的な世界からイライザが去っていく瞬間として説明しています。
最後の詩が伝える愛の形
ラストでは、ジャイルズが愛についての詩を語ります。
その詩は、相手の姿をはっきり捉えられなくても、あらゆる場所に愛する存在を感じられるという趣旨のものです。
水には決まった形がありません。置かれた場所や容器によって姿を変えますが、水そのものが消えるわけではないのです。
恋愛、友情、隣人への思いやり、誰かの命を守ろうとする気持ち。形は違っても、そこには確かに愛が存在しています。
ちなみに、この詩はペルシャの詩人ルーミーの作品として紹介されることがありますが、映画のクレジットなどから、詩人サナーイーの作品をもとに翻案されたものと考えられています。
半魚人との愛が伝えるもの

本作の恋愛は、人間と半魚人という珍しい組み合わせだけが見どころではありません。なぜ二人が惹かれ合い、どのような意味を持つ関係になったのかを考えます。
イライザが半魚人を愛した理由
イライザは職場で目立たない存在として扱われ、自分の気持ちを伝えるには手話を理解してもらう必要があります。
半魚人は彼女の表情や動作に反応し、音楽を楽しみ、差し出された卵を受け取ります。
むしろ、言葉に頼らないからこそ、相手の小さな変化に目を向ける関係が生まれているように感じます。
イライザが求めていたのは、自分を特別扱いしてくれる相手ではなく、ありのままの自分を見てくれる相手だったのでしょう。
半魚人がイライザに惹かれた理由
彼は南米から連れてこられ、狭い施設に閉じ込められていました。
ストリックランドらは身体を調べ、能力を利用しようとし、従わなければ痛みを与えます。
卵を差し出し、音楽を聴かせ、反応を待つ。彼女が求めたのは、相手を理解することでした。
それでも彼がイライザに近づき、触れ合いを受け入れ、最後に彼女を抱きしめる姿からは、愛情を読み取れます。
イライザは半魚人を研究施設から助け出し、半魚人は最後にイライザの命を救います。互いが互いにとって大切な存在になっているんですね。
性的な関係に込められた意味
イライザには物語の冒頭から、自分自身の生活や性的な欲求があることが描かれています。
彼女は誰かに命じられて半魚人と関係を持つわけではありません。自分の意思で近づき、自分が望む相手を選んでいるのです。
私は、性的な描写が苦手だと感じることと、この恋愛が持つ意味を否定することは、分けて考えたいです。
鑑賞する人が不快に感じることも自然な反応でしょう。それでも、映画が伝えようとしているのは、異なる姿をした相手への理解と、互いの意思を尊重することだと思います。
美女と野獣とは何が違う?
人間の女性と異形の存在が恋に落ちる物語として、昔話の『美女と野獣』を思い浮かべる方もいるでしょう。
よく知られる『美女と野獣』の物語では、最後に野獣が人間の王子へ戻ります。
しかし本作では、半魚人は最後まで半魚人の姿です。
それどころか、最後にはイライザの首の傷がエラとなり、彼女の方が水中の世界で生きられるようになります。
監督も、真実の愛は相手を別人へ変えるのではなく、本来の姿を明らかにするという考えを語っています。
相手を自分の理想に合わせるのではなく、相手が本来持つ性質を受け入れる。そこに、本作と従来のおとぎ話との違いが表れています。
水や色彩に隠された伏線を考察

『シェイプ・オブ・ウォーター』では、台詞だけでなく色や小道具にも意味が込められています。特に水、卵、赤い靴、ストリックランドの指は、物語の主題を考えるうえで欠かせません。
タイトルの水の形が意味するもの
原題の「The Shape of Water」は、日本語にすると「水の形」です。
水はコップに入れればコップの形になり、浴槽に入れれば浴槽の形になります。海へ流れ出れば、決まった輪郭を持たなくなります。
人間同士の恋愛だけでなく、姿の異なる二人の恋愛や、友人を助ける気持ち、命を守ろうとする行動にも愛は存在します。
愛には決まった形がなく、相手が誰であるかによって価値が変わるものではない。
卵が二人の関係を表している
物語の序盤から、イライザは卵をゆでる習慣を持っています。
半魚人と出会ってからは、その卵を彼に差し出すようになりました。
最初は自分だけのために用意していたものが、やがて誰かと分かち合うものへ変わっていくのです。
卵には生命や誕生を連想させる形があります。そのため、二人の関係が生まれることの象徴としても読むことができるでしょう。
ただし、卵に特定の意味があると作中で説明されるわけではありません。
赤と緑の色彩が表すもの
研究施設には冷たい緑色が多く使われ、イライザの部屋には水を連想させる青や緑の色彩が広がっています。
監督は、緑を未来、赤を愛や映画と結びつけて説明しています。
赤い靴や衣服は、それまで静かな日常を送っていた彼女の内面に、情熱が芽生えたことを感じさせます。
また、研究施設の緑は科学技術や未来への期待を思わせる一方で、半魚人を閉じ込める冷たい世界の色にも見えます。
ストリックランドの腐る指の意味
ストリックランドは半魚人に噛み切られた指を再接合しますが、その指は次第に腐敗していきます。
自分が正しいと信じているのに、思いどおりに物事が進まない。その焦りが増す一方で、身体も腐っていくのです。
ジャイルズは半魚人に傷を癒やされ、髪まで生え始めます。一方、ストリックランドの指は回復せず、腐敗が進みました。
もちろん、ストリックランドの指が腐った原因を半魚人の呪いと断定することはできません。
それでも、相手を理解しようとする者には回復が訪れ、支配しようとする者には腐敗が進むという対比には、象徴的な意味を感じます。
本当の怪物は誰だったのか

『シェイプ・オブ・ウォーター』は、見た目と内面が一致するとは限らないことを描いています。半魚人の姿は恐ろしく見える一方で、人間の姿をしたストリックランドは残酷な行動を繰り返します。
人間の姿をしたストリックランド
政府施設で責任ある立場に就き、家庭には妻と子どもがいます。高級車を購入するなど、当時の理想的な成功者を思わせる生活を送っていました。
半魚人に暴力を振るい、イライザやゼルダを見下し、自分の考える正常さから外れた存在を認めようとしません。
一方、半魚人は恐ろしい姿をしていますが、イライザの愛情に応え、最後には彼女の命を救います。
ただし、半魚人も猫を食べたり、ジャイルズを傷つけたりする存在です。完全に無害な善人として描かれているわけではありません。
外見が人間らしいことと、他者を思いやれることは別なのです。
声を持たない人々が協力する理由
イライザは声を出すことができません。ゼルダは黒人女性として差別を受け、ジャイルズは同性愛者として自分の気持ちを自由に表現できずにいます。
ホフステトラーもまた、科学者としての良心と国家から与えられた任務の間で苦しんでいます。
そんな人々が協力し、巨大な国家の研究施設から半魚人を逃がします。
声を持たない者たちが、言葉以外の方法でつながり、命を救う。そこに、この物語の優しさがあるのではないでしょうか。
異なる存在を受け入れる難しさ
ストリックランドは、理解できない相手を危険なものとして排除しようとします。
ホフステトラーは科学者として半魚人の知性と価値を認め、イライザは一人の対等な存在として接します。
そしてジャイルズは、最初こそ救出に反対しますが、イライザの思いを理解することで行動を変えました。
似たテーマを持つ作品として、映画『ウィキッド 永遠の約束』のネタバレ考察も興味深い作品です。こちらも、社会から悪者と決めつけられた存在を、本当の姿から理解することの大切さが描かれています。
『シェイプ・オブ・ウォーター』でも、見た目や立場だけで相手を判断することの危うさが、最後まで問いかけられているのです。
シェイプ・オブ・ウォーターの疑問
ここまでの内容を踏まえ、結末や性的描写について特に気になる疑問に答えます。映画内で明らかになっている事実と、解釈が分かれる部分を区別して確認しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. イライザは最後に死亡したのですか?
A. イライザはストリックランドに撃たれて倒れますが、その後、半魚人に水中へ運ばれ、首の傷がエラとなって目を覚まします。
映画の映像では生還したように描かれています。ただし、完全に死亡した後で蘇生したのか、半魚人の力で命を救われたのかについては明言されていません。
Q2. イライザは最初から半魚人だったのですか?
A. イライザが半魚人と同じ種族だったと明言される場面はありません。
ただし、幼い頃に川辺で発見されたこと、首に傷があること、水との親和性が高いことから、もともと水中で生きられる存在だった可能性があります。
Q3. 半魚人の正体は神様だったのですか?
A. 半魚人は南米から連れてこられた不思議な生物ですが、監督は川を司る神のような存在として説明しています。
劇中でも、南米の人々から神として崇拝されていたことが語られ、傷を癒やす能力や自己再生能力が描かれています。
Q4. 家族と観ると気まずい場面はありますか?
A. はい。入浴中の自慰を示唆する描写、裸体、夫婦の性行為、イライザと半魚人の性的な関係が登場します。
ただし、気まずいと感じるかどうかには個人差があります。性的な描写が苦手な方や、親子で一緒に観る場合は、事前に作品の内容案内を確認するとよいでしょう。
Q5. 結局、二人の愛にはどんな意味があるのですか?
A. 二人の愛は、姿や言葉の違いを超えて、相手を対等な存在として認めることの大切さを表していると考えられます。
最後にイライザの首の傷がエラになる場面は、違いを消すのではなく、本来の性質を受け入れることで幸せになれるという寓話として読むことができます。
まとめ|結末と愛の意味を振り返る
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は、声を出せないイライザと半魚人が出会い、互いの存在を受け入れていく恋愛ファンタジーでした。
結末と考察の重要ポイント
- イライザと半魚人は研究施設で出会い、卵や音楽、手話を通じて心を通わせた
- 半魚人は解剖されそうになるが、イライザたちの協力によって脱出した
- ラストで二人は銃撃されるが、半魚人は回復し、ストリックランドを殺害した
- イライザは水中で首の傷がエラとなり、再び目を覚ました
- 本作には性的な場面があり、劇場公開版はR15+、オリジナル無修正版はR18+である
- 二人の愛は、姿や言葉の違いを超えて相手の本質を受け入れることを象徴している
イライザが本当に人魚だったのか、半魚人の力で新しい身体になったのか、それとも最後の水中場面にはジャイルズの願いが重なっているのか。
ただ、私が何より印象的だと感じるのは、イライザの首にあった傷が、最後には生きるための器官になることです。
そう考えると、イライザは誰かに完璧な人間へ変えてもらったわけではありません。自分の本来の姿で生きられる場所を見つけたのだと思います。
水に決まった形がないように、愛にも決まった形はない。
あなたは、あのラストを二人の新しい人生の始まりと感じましたか。それとも、ジャイルズが願った美しいおとぎ話として受け止めたでしょうか。