
こんにちは、物語の知恵袋のふくろうです。
2008年公開の映画『バンク・ジョブ』は、ジェイソン・ステイサム演じる中古車販売業者が、大胆な銀行強盗に挑む犯罪サスペンスです。
ところが、この作品を観て驚くのは、1971年のロンドンで本当に銀行強盗が起きていたということ。しかも、犯人たちが地下トンネルを掘り、銀行の貸金庫室に侵入したという信じられない手口まで実話なんですよ。
ただし、映画に登場する英国王室の秘密写真やMI5の陰謀まで、すべて現実に起きたわけではありません。
私が特に面白いと感じたのは、単なる銀行強盗が、国家機関や政治家、犯罪組織を巻き込む事件へ発展していくところでした。金庫に隠されていた秘密が、現金や宝石以上の価値を持っていたという設定には、何とも皮肉な面白さがあります。
では、映画『バンク・ジョブ』はどこまで実話で、何が創作なのでしょうか。実際の事件と映画の結末を比較しながら、その真相を詳しく見ていきます。
この記事でわかること
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映画『バンク・ジョブ』の実話と創作の違い
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1971年のベーカー街銀行強盗事件の全貌
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王室の秘密写真やMI5の関与説の真相
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実在した犯人の逮捕と事件のその後
バンク・ジョブの実話はどこまで本当?

映画『バンク・ジョブ』のモデルになったのは、1971年9月に英国ロンドンで発生したベーカー街銀行強盗事件です。
実際の事件でも、犯人グループは近隣店舗から地下トンネルを掘り、銀行の貸金庫室へ侵入しました。さらに、犯行中の無線通信が偶然傍受され、警察が動き出したという経緯まで事実です。
まずは、映画の土台となった銀行強盗事件そのものを確認していきましょう。
銀行強盗事件は1971年に実在した
『バンク・ジョブ』のモデルとなった事件は、1971年9月11日を中心とする週末に発生しました。舞台はロンドンのベーカー街。シャーロック・ホームズの物語でも有名な場所です。
事件の標的になったのは、ベーカー街にあったロイズ銀行の支店でした。
犯人たちは営業時間中に銃を持って押し入ったわけではありません。銀行の近くに店舗を借り、そこから地下を掘り進めて金庫室に侵入したのです。
この大胆な犯行は、英国で「ベーカー街銀行強盗事件」と呼ばれています。また、犯人たちが使用した無線機にちなんで「ウォーキートーキー強盗事件」という名前でも知られるようになりました。
事件の発生時期、銀行の所在地、地下からの侵入方法などは、映画と実際の事件で共通しています。
ただし、映画が描く銀行強盗の目的や、事件後に起こる陰謀については事情が異なります。
実話として確認できること
1971年9月、ロンドンのロイズ銀行で地下トンネルを使った大規模な貸金庫強盗が発生しました。映画の大胆な犯行手口は、現実の事件に基づいています。
事件現場はベーカー街のロイズ銀行
実際に襲われた銀行は、ベーカー街とメリルボーン・ロードの交差点付近にありました。
銀行の地下には、多数の貸金庫が設置されています。貸金庫とは、利用者が現金や宝石、貴金属、重要な書類などを保管するための設備です。
銀行の通常の金庫とは異なり、貸金庫には顧客それぞれの私物が保管されています。そのため、銀行側も中身を完全に把握しているとは限りません。
犯人たちが目を付けたのは、まさにこの点でした。大量の貸金庫を開ければ、高価な財産をまとめて手に入れられる可能性があります。
さらに、事件当時は銀行周辺で工事が行われていました。工事の振動による誤作動を避けるため、銀行の振動感知警報が停止されていたことも、犯行を後押ししたとされています。
映画でも、警報装置が一時的に使えないことが強盗計画の重要な条件になっていました。
つまり、犯人たちは偶然銀行を選んだのではなく、警備の状況や周辺の建物を調べたうえで犯行を実行していたわけです。
地下トンネルは本当に掘られた?
映画の中でも特に印象的な地下トンネルの掘削は、実際に行われた犯行手口です。
犯人グループは、銀行から2軒ほど離れた革製品店「Le Sac」を借り、店舗の地下からトンネルを掘り始めました。
銀行との間には「Chicken Inn」という飲食店があり、トンネルはその下を通過して金庫室へ向かっていました。
掘り進めた距離は約12メートル。さらに、掘削で出た土砂は約8トンに及んだと伝えられています。
地上では普通の店舗を装いながら、地下では銀行の金庫を目指していたという状況。想像するだけでも、相当な準備と労力が必要だったことが分かります。
しかも、銀行の地下構造を突破するのは簡単ではありませんでした。
犯人たちは高温の切断器具や大型ジャッキなどを使用しましたが、思うように作業が進まず、最終的には爆薬を使って金庫室の床を破ったとされています。
映画でも、床を突破するまでに苦労する様子が描かれていましたね。
なお、こうした計画の発想には、シャーロック・ホームズの短編小説『赤毛組合』が関係していたと伝えられています。この物語にも、近隣店舗から銀行へ地下トンネルを掘ろうとする犯罪者が登場します。
ベーカー街でホームズの物語を思わせる銀行強盗が起きたというのは、何とも不思議な偶然です。
銀行内部の調査はどう行われた?
犯人グループは、銀行の金庫室へ向かって闇雲にトンネルを掘っていたわけではありません。
実際の事件では、共犯者のレジナルド・タッカーが裕福な顧客を装い、銀行に口座を開設していました。その後、貸金庫を借りることで、銀行の内部へ自然に出入りできる立場を得ています。
タッカーは金庫室を訪れ、内部の寸法や設備の位置を調べました。
その際、傘や腕の長さなどを利用して距離を測ったという話も残っています。目立つ測定器を持ち込めない状況で、何とか必要な情報を集めようとしたのでしょう。
こうして得られた情報は、地下から正確に金庫室へ到達するための手掛かりになりました。
映画ではマルティーヌが銀行を訪れ、貸金庫の下見を行っています。しかし、現実の事前調査で重要な役割を果たしたのはタッカーでした。
この違いからも、映画が実際の犯行方法を取り入れつつ、人物の役割を物語に合わせて変更していることが分かります。
無線を傍受した人物は実在した?
銀行強盗事件を語るうえで欠かせないのが、ロバート・ローランズというアマチュア無線愛好家です。
1971年9月11日の夜、ローランズは自宅で無線通信を受信していました。
すると、見知らぬ人物たちが作業の進行状況について話している声が聞こえてきます。
会話の内容から、ローランズは何者かが銀行強盗を実行しているのではないかと疑いました。
そこで警察に連絡したものの、最初の通報は十分に重視されませんでした。ローランズは通信を録音し、再び警察に連絡しています。
その後、警察は銀行強盗が進行している可能性を考え、周辺の銀行を調査することになりました。
実際の無線通信には、犯人たちの雑談や休憩に関する発言も含まれていました。
映画では、地上で見張りを担当するエディと、地下にいる仲間が無線で連絡を取り合っています。
この設定は、実際に発生した出来事を基にしたものです。
高度な計画によって銀行の警備を突破した犯人たちが、日常的な無線通信によって存在を知られてしまう。何とも皮肉な出来事ですよね。
警察はなぜ犯行を阻止できなかった?
警察はローランズからの通報を受け、銀行強盗の発生を疑い始めました。
しかし、大きな問題がありました。無線の内容だけでは、どの銀行が襲われているのか特定できなかったのです。
警察は周辺の銀行を調査し、実際に被害銀行にも足を運んでいます。
ところが、犯人たちは正面入口や金庫室の扉から侵入していたわけではありません。地下トンネルを通じて床下から侵入していたため、外側から見ても異常が分かりにくかったのです。
さらに、金庫室の扉は時間制御の仕組みによってすぐには開けられませんでした。
警察は金庫室の内部を直接確認できず、犯行を阻止することなく現場を離れています。
そして9月13日、銀行職員が貸金庫室の被害を発見しました。その時点で犯人たちはすでに逃走していました。
この事件が英国で大きな話題になったのは、犯行の大胆さだけではありません。警察が犯行の情報を把握しながら、実際に襲われていた銀行を見逃してしまったことも注目されたのです。
映画では、この出来事が緊迫した場面として再現されています。
盗まれた金額はいくらだった?
ベーカー街銀行強盗事件では、多数の貸金庫から財産が盗まれました。
被害を受けた貸金庫は268個と紹介されることが多いものの、一部には286個とする報道もあります。
さらに、盗まれた財産の総額についても数字が一致していません。
当時の金額で約50万ポンドという報道もあれば、125万ポンドから300万ポンド程度だったとする推計もあります。
映画のエピローグでは400万ポンド規模の被害として説明されますが、これをそのまま実際の被害総額と考えることはできません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事件発生 | 1971年9月の週末 |
| 被害銀行 | ベーカー街のロイズ銀行 |
| 侵入経路 | 約12メートルの地下トンネル |
| 被害貸金庫 | 268個とする資料が多い |
| 被害総額 | 約50万~300万ポンドなど諸説あり |
| 回収された財産 | 約23万1000ポンドとする記録がある |
なぜ金額にこれほど差があるのでしょうか。
貸金庫の中には現金だけでなく、宝石や貴金属、重要な書類など、さまざまな財産が保管されていました。所有者が申告した価値と実際の市場価値が一致するとは限りません。
そもそも、何を保管していたのか公表したくない利用者がいた可能性もあります。
そのため、被害総額を完全に把握することは難しかったのでしょう。
実際の犯人4人の名前と判決
映画では、テリー・レザーを中心とする強盗団が事件を起こし、最後には罪を免れて国外へ逃亡します。
しかし、実際の事件では4人の男が有罪判決を受けています。
中心人物とされるのはアンソニー・ギャヴィンです。彼は犯行計画を立て、共犯者を集めた人物として知られています。
ほかにも、銀行内部の調査を担当したレジナルド・タッカー、犯行用の機材を準備したトーマス・スティーヴンズ、店舗の賃借に関わったベンジャミン・ウルフがいました。
| 実在の犯人 | 主な役割 | 刑期 |
|---|---|---|
| アンソニー・ギャヴィン | 犯行計画の中心人物 | 懲役12年 |
| レジナルド・タッカー | 銀行内部の調査 | 懲役12年 |
| トーマス・スティーヴンズ | 機材の調達など | 懲役12年 |
| ベンジャミン・ウルフ | 侵入拠点の店舗を賃借 | 懲役8年 |
裁判は1973年1月に行われ、同月26日、ギャヴィン、タッカー、スティーヴンズにはそれぞれ懲役12年、ウルフには懲役8年が言い渡されました。
ウルフの刑期が比較的短かったのは、当時の年齢などが考慮されたためです。
事件が完全未解決で、犯人は誰一人捕まらなかったという説明を見かけることもあります。しかし、それは実際の裁判結果と一致しません。
ただし、犯行に関わった人物すべてが逮捕されたわけではありません。ほかにも共犯者が存在したと考えられており、その全員の身元や役割が確定しているわけではないのです。
盗品は回収された?事件のその後
映画の紹介資料などでは、盗まれた財産が一切回収されなかったという説明が使われることがあります。
しかし、現実には盗品の一部が警察によって回収されました。
回収額については約23万1000ポンドという数字が伝えられています。
とはいえ、盗まれた財産のすべてが持ち主の元へ戻ったわけではありません。被害を受けた顧客にとって、銀行強盗事件は犯人の逮捕だけで終わる問題ではなかったのです。
実際、貸金庫の利用者の一部は銀行側の責任を追及し、訴訟を起こしました。
貸金庫は財産を安全に保管するための設備ですが、銀行が中身の価値をすべて把握しているわけではありません。そのため、盗難被害が発生した場合の補償や責任をめぐって争いが生じたのです。
さらに、貸金庫の中身が何だったのかを明かしたくない利用者がいた可能性も指摘されています。
この部分は、映画が描く「表に出せない秘密」という題材と重なります。ただし、実際の貸金庫に映画と同じ秘密資料があったという証拠にはなりません。
事件の公文書は2071年まで非公開?
ベーカー街銀行強盗事件には、現在も確認できない部分が残されています。
その一つが、事件に関する公文書の公開制限です。
英国の国立公文書館には、警察の捜査資料などが保管されています。関連資料の一部については、2071年1月まで公開が制限されていると報じられています。
つまり、事件に関する資料の一部はすでに公開されているものの、発生から100年が経過する時期まで閲覧できない記録も残っているということです。
この事実は、王室スキャンダルや情報機関の関与をめぐる憶測を生む原因の一つになりました。
ただし、公文書が非公開になっている理由は一つとは限りません。
個人情報や捜査情報など、公開を制限する理由はさまざまです。非公開資料があるからといって、その中に王室写真やMI5の陰謀を証明する記録が入っているとは断定できません。
英国国立公文書館も、犯罪捜査や裁判の記録には機密性の高い情報が含まれ、公開されない場合があると説明しています。
参考になる公的な説明として、英国国立公文書館の刑事裁判記録に関する案内があります。
今後、新たな資料が公開されれば、これまで不明だった事件の経緯が明らかになる可能性もあります。
バンク・ジョブの実話と映画の違い

実際の銀行強盗事件には大胆な犯行手口や警察の失態など、映画に負けないほど驚くべき出来事がありました。
しかし、映画の中心となる英国王室の秘密写真やMI5の工作、主人公の逃亡劇には、確認されていない説や創作が含まれています。
ここからは、特に誤解されやすい人物や出来事を取り上げながら、史実と映画の違いを詳しく解説します。
マーガレット王女の秘密写真は実在?
映画『バンク・ジョブ』で最も衝撃的なのが、英国王室のマーガレット王女に関する秘密写真です。
マーガレット王女は、エリザベス2世女王の妹にあたります。
映画では、王女の性的な場面がカリブ海で密かに撮影され、その写真を活動家マイケルXが入手したことになっています。
マイケルXは写真を銀行の貸金庫へ預け、英国当局からの追及を逃れるための切り札として利用していました。
MI5は写真が公になれば王室の評判が傷つくと考え、回収を計画します。そして一般の犯罪者による銀行強盗を利用し、秘密裏に写真を持ち出させようとするのです。
では、この写真は実際に存在したのでしょうか。
現在確認できる資料では、マーガレット王女の秘密写真が実在したという証拠はありません。
王女がカリブ海を訪れていたこと自体は事実です。しかし、映画で描かれたような写真が撮影され、マイケルXへ渡され、ベーカー街の貸金庫に保管されていたという経緯は確認されていません。
王女と俳優ジョン・ビンドンの関係をめぐる噂もありますが、その噂が銀行強盗事件によって証明されたわけではありません。
ただ、仮にそのような写真が存在したら、政府や王室はどう対応するのか。そう考えさせるところに、本作の面白さがあると思います。
MI5が銀行強盗を仕組んだのは本当?
映画では、英国の情報機関MI5が銀行強盗の黒幕として描かれています。
MI5は英国の国内安全保障を担当する情報機関です。映画では、MI5のティム・エヴェレットがマルティーヌを利用し、マイケルXの秘密写真を奪わせようとします。
マルティーヌは麻薬密輸に関係する問題を抱えており、MI5に協力することが自分の身を守る条件になっています。
そして、彼女は昔なじみのテリーを銀行強盗へ誘います。
テリーたちは大金を手に入れるための計画だと思っていますが、本当の目的は特定の貸金庫に保管された写真の回収でした。
しかし、実際にMI5がベーカー街銀行強盗事件を計画したという確実な証拠は確認されていません。
事件を映画化する際、制作陣は関係者から得たとされる情報や噂も取り入れました。その中には、英国王室や情報機関に関係する話も含まれています。
ただし、証言が存在することと、その内容が真実であることは別です。
公式な捜査記録などでMI5による銀行強盗の指示が確認されているわけではありません。
そのため、映画のMI5による陰謀は、未確認の説を基にした創作として受け止めるのが適切でしょう。
映画では国家機関が犯罪者を利用するという大胆な展開ですが、現実の事件では、犯人グループが貸金庫内の財産を盗むために計画を進めたことが確認されています。
D通告で報道が禁止されたのは事実?
『バンク・ジョブ』の宣伝では、事件が数日間報道された後、英国政府のD通告によって突然封印されたという説明が使われています。
D通告とは、国防や安全保障に関する情報の取り扱いについて、報道機関に慎重な対応を求める英国の制度です。
日本語では「国防機密報道禁止令」と紹介されることもありますが、政府が法律によってすべての報道を強制的に禁止する仕組みとは異なります。
英国では現在、この制度がDSMA Noticeという名称で運用されています。
英国政府のDSMA委員会に関する公式説明でも、政府の安全保障関係部門と報道機関の間で運用される任意の制度であることが示されています。
では、実際のベーカー街銀行強盗事件にD通告は出されたのでしょうか。
この点については、正式なD通告が発せられたという事実は確認されていません。
さらに、事件後の新聞を調査したジャーナリストたちは、報道が完全に禁止されたという説明に疑問を呈しています。
実際に事件はその後も報道されており、1973年の裁判についても新聞記事が残っています。
事件発生中、警察が捜査上の理由で無線通信に関する情報を伏せようとしたことと、政府がD通告によって事件全体を封印したという主張は別の問題です。
また、無線通信を傍受したローランズは、警察が自らの不手際を隠そうとしていたのではないかという見方も示しています。
したがって、政府が王室スキャンダルを隠すために事件の報道を完全に禁止したという説明は、確定した史実ではありません。
テリー・レザーの実在モデルは誰?
ジェイソン・ステイサムが演じた主人公テリー・レザーは、銀行強盗団の中心人物です。
中古車販売店を経営するものの借金に追われ、旧友マルティーヌから持ちかけられた銀行強盗に参加します。
しかし、実際の事件で中心人物とされたのはアンソニー・ギャヴィンでした。
テリー・レザーという人物が、映画と同じ経歴や家族関係を持つ実在の強盗犯だったという証拠は確認されていません。
映画制作側は事件関係者から得たとされる情報を脚本に取り入れていますが、テリーという人物の行動をすべて実話として再現したわけではないのです。
特に、銀行強盗後にMI5と交渉し、訴追を免れて家族と国外へ逃亡する展開は、現実の事件とは大きく異なります。
実際には4人の犯人が有罪判決を受けており、映画のような政府公認の逃亡劇が起きたという証拠はありません。
つまり、テリーは実在した強盗事件を物語として描くために作られた人物と考えられます。
マルティーヌという女性は実在した?
マルティーヌ・ラブは、物語の始まりから重要な役割を果たす女性です。
彼女はテリーの昔なじみでありながら、MI5の計画を実行するために銀行強盗を持ちかけます。
テリーへの親しさと、自分の身を守るための計算が混ざり合っているため、単純な悪役とも言い切れません。
しかし、マルティーヌという人物が実際の事件に存在したことは確認されていません。
一方、実際の銀行強盗事件には、女性が関与していた可能性が指摘されています。
当時の無線通信には女性の声も含まれていたとされ、警察も女性の共犯者について調べていました。
ただし、その女性がMI5の指示を受けていたとか、強盗団の中心人物と恋愛関係にあったという証拠はありません。
マルティーヌは、実際の事件に女性が関与した可能性を取り入れながら、映画の物語に合わせて作られた人物といえるでしょう。
マイケルXは実在した人物?
映画に登場するマイケルXは、実在した人物です。
本名はマイケル・デ・フレイタス。マイケル・アブドゥル・マリクという名前でも知られています。
1933年にトリニダードで生まれ、英国へ渡った後、1960年代のロンドンでブラック・パワー運動に関わりました。
社会運動家として活動する一方、恐喝などの犯罪にも関係していた人物です。
映画では、彼がマーガレット王女の秘密写真を保有し、それを利用して英国当局からの追及を逃れていたことになっています。
しかし、マイケルXが実際に王室の秘密写真を所有していたという証拠は確認されていません。
一方、マイケルXが後に殺人事件で有罪となり、処刑されたことは事実です。
彼はトリニダードへ移った後、共同生活施設を運営していました。しかし、その施設に関係する殺人事件が発覚し、捜査を受けることになります。
そして1975年5月16日、ジョセフ・スケリット殺害事件での有罪判決に基づき、絞首刑となりました。
映画ではゲイル・ベンソン殺害との関係が強調されますが、実際に処刑の根拠となったのはスケリット殺害事件です。
マイケルXは実在しますが、その人生と銀行強盗事件との関係については、映画独自の脚色が含まれているわけです。
ゲイル・ベンソンも実在した?
映画では、ゲイル・ベンソンという女性がマイケルXの周辺に潜入しています。
彼女はMI5の協力者として描かれ、秘密写真に関する情報を探ろうとします。
ところが、マイケルXに正体を見破られ、殺害されてしまいます。
このゲイル・ベンソンも実在した人物です。
彼女は英国出身の女性で、活動家ハキム・ジャマルと交際していました。その関係を通じてマイケルXの周囲に接近したとされています。
ゲイルは1972年に殺害され、遺体が発見されました。この殺害事件では、スタンリー・アボットらが裁判にかけられています。
ただし、彼女が実際にMI5の工作員だったという証拠はありません。
映画では、ゲイルの死が情報機関の秘密工作と結びつけられています。しかし、現実の殺人事件をそのまま再現しているわけではないのです。
なお、マイケルXはジョセフ・スケリット殺害事件で有罪となりました。ゲイル殺害事件についても疑惑がありましたが、彼女の殺害罪によって処刑されたわけではありません。
こうした細かな違いは、映画を実話として理解する際に見落としやすい部分でしょう。
警察の汚職と賄賂帳簿は実話?
映画では、犯罪組織の実力者ルー・ヴォーゲルが、警察官に支払った賄賂の記録を貸金庫に保管していました。
その帳簿を強盗団に奪われたことで、ヴォーゲルは自分の犯罪活動が暴かれることを恐れます。
そして、帳簿を取り戻すためにテリーたちを追い詰めていくのです。
この賄賂帳簿が実際のベーカー街銀行強盗事件で盗まれたと証明されているわけではありません。
しかし、1970年代のロンドンで警察官の汚職が問題になっていたことは事実です。
当時は性産業や犯罪組織と警察官の癒着が問題視され、汚職に関する調査や裁判も行われていました。
映画は、こうした実際の社会背景を取り入れながら、秘密の帳簿をめぐる争いを描いています。
ヴォーゲル自身は映画用の人物ですが、当時のロンドン裏社会には、警察との不適切な関係を持った犯罪者が実在しました。
ただし、実在の特定人物がヴォーゲルとまったく同じ行動を取ったという意味ではありません。
また、映画には高級娼館を経営するソニア・バーンも登場します。彼女が保管していた政府高官の秘密写真も、強盗団の重要な交渉材料となりました。
ここにも、金銭より秘密が大きな力を持つという作品の特徴が表れています。
映画の結末と実際の事件は違う?
映画の終盤、テリーは自分たちの命を守るため、MI5と犯罪組織の両方を相手に駆け引きを仕掛けます。
英国王室の秘密写真を返還する代わりに、訴追されない保証や新しい身分証明書を要求するのです。
さらに、ヴォーゲルの賄賂帳簿を利用して汚職警官の摘発にもつなげます。
こうしてテリーは自由を手に入れ、妻ウェンディと子どもたちを連れて国外で新たな生活を始めます。
しかし、実際の事件ではこうした結末は確認されていません。
1973年には4人の犯人が有罪となり、懲役刑を受けています。盗まれた財産の一部も回収されました。
一方で、犯行に関与したと考えられる人物の中には、逮捕されなかった者もいました。
つまり、映画のように全員が政府との取引で自由を得たわけでも、実際の犯人が全員捕まったわけでもありません。
ここで映画と史実の主な違いを比較してみましょう。
| 内容 | 映画の描写 | 実際の事件 |
|---|---|---|
| 犯行の目的 | 金品と王室写真の回収 | 財産を盗む目的の犯行 |
| 中心人物 | テリー・レザー | アンソニー・ギャヴィンら |
| 王室写真 | 重要な秘密として登場 | 存在は確認されていない |
| MI5の関与 | 強盗を利用した黒幕 | 関与を裏付ける証拠なし |
| 犯人の結末 | 政府との取引で逃亡 | 4人が有罪判決 |
| 盗品 | 強盗団が財産を確保 | 一部が回収された |
| 報道規制 | D通告によって封印 | 正式な発令は立証されていない |
このように、銀行強盗の手口は史実に基づいているものの、人物関係や事件後の展開には大きな違いがあります。
映画の制作陣は何を調査した?
『バンク・ジョブ』の制作では、当時の新聞記事や事件に関する証言などが参考にされました。監督ロジャー・ドナルドソンも、実際の銀行強盗を基にした物語として本作について語っています。
また、脚本を担当したディック・クレメントとイアン・ラ・フレネは、事件に関する資料や関係者から得たとされる情報を基に物語を作りました。
映画の制作に関わったジョージ・マクインドゥも、事件を知る人物から情報を得たと説明しています。
ただし、事件の詳細はすべて明らかになっていたわけではありません。
そのため、制作陣は確認できた出来事に加え、噂や証言を参考にしながら、物語に必要な部分を創作しました。
脚本家クレメントも、映画には大幅な創作が含まれていることを認めています。
つまり、『バンク・ジョブ』は事件を忠実に再現した記録映画ではありません。
実際に起きた犯罪を土台に、英国王室や情報機関をめぐる未確認の説を組み合わせた娯楽作品なのです。
映画の宣伝資料では実話であることが大きく強調されていましたが、それは劇中のすべての出来事が証明されているという意味ではないのでしょう。
実話だからこそ面白い映画の考察
私が『バンク・ジョブ』を観て特に印象に残ったのは、銀行強盗そのものよりも、貸金庫に隠されていた秘密が次々と人間の本性を暴いていく展開でした。
最初は借金を抱えた男たちが一攫千金を狙う犯罪映画だと思っていたのですが、物語が進むにつれて国家機関や犯罪組織、汚職警官まで巻き込まれていきます。
その広がり方が実に面白かったです。
特に興味深かったのは、盗まれた現金や宝石よりも、王室の秘密写真や賄賂帳簿の方がはるかに大きな価値を持っていたこと。
普通なら銀行強盗の被害者は犯人の逮捕を望むはずです。しかし本作では、被害者自身が秘密を暴かれることを恐れています。
社会的地位の高い人間ほど失うものが多く、その秘密を握った犯罪者が逆に有利な立場に立つという皮肉。ここに本作ならではの面白さがあると感じました。
主人公テリーも、決して正義の味方ではありません。
家族を養うためとはいえ銀行強盗に加担し、妻を裏切ってマルティーヌと関係を持ってしまいます。それでも不思議と嫌いになれないのは、追い詰められながらも仲間や家族を守ろうとする姿勢があるからでしょう。
ただ、最後に自由を手に入れたことを、単純なハッピーエンドとして受け止めることはできません。
デイヴ、ガイ、バンバスという3人の仲間が命を落としています。彼らも最初は大金を手にして人生を変えようとしていたはずです。
それなのに、成功した銀行強盗が原因で命を奪われてしまう。
最後にテリーが見せる穏やかな笑顔の裏には、決して取り戻せない犠牲があります。
この映画で本当に恐ろしいのは、銀行強盗犯よりも、秘密を守るためなら何でもする権力者たちなのかもしれません。お金を盗まれた人間より、秘密を盗まれた人間の方が必死になる。そんな人間の欲望が、作品全体に独特の緊張感を生み出しているように感じました。
そして、実際に地下トンネルを掘った銀行強盗が起きていたことも、作品に不思議な説得力を与えています。
MI5の陰謀や王室写真が史実として証明されていないと分かっていても、現実の事件自体があまりにも大胆なので、映画の展開にも引き込まれてしまうのです。
個人的には、本作が描いているのは「お金よりも秘密の方が人を支配する」という現実なのだと思います。
権力を持つ者が必ずしも安全な立場にいるわけではありません。隠したい過去を握られれば、その立場は簡単に逆転します。
銀行強盗という娯楽性の高い題材を通じて、人間の欲望や権力の危うさを描いたところに、『バンク・ジョブ』の奥深さがあるのでしょう。
ちなみに、映画と実話の関係を考えるなら、映画『ファーゴ』のネタバレと実話の関係を解説した記事も興味深い内容です。こちらは実話を思わせる演出が特徴で、『バンク・ジョブ』とは異なる形で事実と創作の境界を楽しめます。
バンク・ジョブの実話に関するFAQ
Q1. 映画『バンク・ジョブ』はどこまで実話ですか?
A. 1971年にロンドンのベーカー街で銀行強盗が発生したこと、犯人が地下トンネルを掘って貸金庫室に侵入したこと、無線通信を一般市民に傍受されたことなどは史実です。ただし、MI5が強盗を仕組んだという設定や、マーガレット王女の秘密写真をめぐる陰謀は、実際に確認された事実ではありません。
Q2. 実際の銀行強盗犯は捕まったのですか?
A. はい。1973年1月に4人が有罪判決を受けています。アンソニー・ギャヴィン、レジナルド・タッカー、トーマス・スティーヴンズの3人には懲役12年、ベンジャミン・ウルフには懲役8年が言い渡されました。ただし、事件に関わったと考えられる人物全員が逮捕されたわけではありません。
Q3. マーガレット王女の秘密写真は本当にあったのですか?
A. 写真が存在したという確実な証拠は確認されていません。マーガレット王女がカリブ海を訪れていたことは事実ですが、映画のような写真が撮影され、マイケルXによって銀行の貸金庫に保管されていたという経緯は証明されていません。
Q4. 英国政府は本当に事件の報道を禁止したのですか?
A. 特別なD通告によって事件の報道が完全に禁止されたという事実は確認されていません。実際には事件後も新聞報道が続き、1973年の裁判についても報じられています。政府が王室スキャンダルを隠すために事件を封印したという説明は、立証されていない説です。
Q5. 主人公テリー・レザーは実在する犯人ですか?
A. 映画のテリー・レザーは架空の人物です。実際の事件ではアンソニー・ギャヴィンが犯行計画の中心人物とされています。テリーがMI5と交渉して罪を免れ、家族と海外へ逃亡したという結末も、史実として確認されたものではありません。
バンク・ジョブの実話を振り返る
映画『バンク・ジョブ』は、1971年にロンドンで実際に発生したベーカー街銀行強盗事件を基に制作された作品です。
地下トンネルからの侵入、無線通信の傍受、警察が犯行を阻止できなかった経緯など、映画の重要な部分には史実が取り入れられています。
一方、英国王室の秘密写真やMI5の陰謀、D通告による報道封鎖については、歴史的に証明された事実ではありません。
特に重要な違いを振り返ると、次のようになります。
-
1971年のベーカー街銀行強盗事件は実際に発生した
-
犯人たちが地下トンネルから金庫室に侵入したことは史実
-
実際には4人の犯人が有罪となり、盗品の一部も回収された
-
マーガレット王女の秘密写真は存在が確認されていない
-
MI5が銀行強盗を計画したという証拠はない
-
D通告によって事件が完全に封印されたという説には疑問が残る
-
主人公テリーの人物像や逃亡成功の結末には創作が含まれる
本作の魅力は、実際に起きた大胆な銀行強盗と、その事件をめぐる数々の噂を組み合わせたところにあります。
事実と創作の境界が曖昧だからこそ、観終わった後も「本当にこんなことが起きたのだろうか」と考えてしまうのでしょう。
ただ、映画の面白さを認めることと、描かれた陰謀をすべて事実として受け入れることは別です。
『バンク・ジョブ』は実話を基にした映画ですが、王室スキャンダルや情報機関の工作まで証明された実話ではありません。
その違いを知ったうえで作品を振り返ると、単なる銀行強盗映画とは違った面白さが見えてきます。
そして、現実の事件について今後新しい公文書が公開されることがあれば、映画と史実の関係にも新たな発見があるかもしれません。