映画『マーキュリー・ライジング』のあらすじと見どころを解説する記事のアイキャッチ画像

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『マーキュリー・ライジング』ネタバレ考察|ラストと評価を徹底解説

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こんにちは、物語の知恵袋のふくろうです。

映画『マーキュリー・ライジング』は、ブルース・ウィリス演じるFBI捜査官アート・ジェフリーズが、国家機密の暗号を偶然解読してしまった9歳の少年サイモンを守るクライムサスペンスです。

「子どもが国家最高レベルの暗号を解けるのか」「暗号を解かれただけで少年まで殺そうとするのは強引では?」と引っかかる部分はかなりあります。私も観ていて、事件の設定そのものには少し無理を感じました。

ただ、それだけで終わらせるには惜しい作品なんですよ。国家機密を守るという大義と、目の前にいる一人の子どもの命のどちらを優先するのか。この視点で見ると、アートとサイモンの関係がぐっと印象的になります。

特にラストの抱擁は、単に事件が解決したことを示す場面ではありません。アートにとってサイモンが「守らなければならない少年」から大切な存在へ変わり、サイモンにとってアートが「知らない大人」から信頼できる人へ変わったことを示す場面だと私は感じました。

この記事でわかること

  • 『マーキュリー・ライジング』のあらすじと結末

  • マーキュリーの暗号を巡る事件の真相

  • アートとサイモンのラストの抱擁の意味

  • 映画の評価が分かれる理由とキャスト

マーキュリー・ライジングの作品情報

まずは『マーキュリー・ライジング』がどのような映画なのか、1998年公開の作品情報と主要キャストを確認しておきましょう。物語そのものは難解ではありませんが、FBI、NSA、暗号開発チーム、暗殺者の関係を押さえておくと、その後のネタバレがかなり分かりやすくなります。

1998年公開映画の基本情報

作品名マーキュリー・ライジング
原題Mercury Rising
製作年1998年
製作国アメリカ
上映時間112分
ジャンルアクション、サスペンス
監督ハロルド・ベッカー
音楽ジョン・バリー

本作の中心となるのは、NSAが開発した架空の暗号システム「マーキュリー」です。解読不能であるはずの暗号を一人の少年が突破してしまったことで、国家機密を巡る陰謀へ発展していきます。

派手なアクション映画というより、少年を守りながら陰謀の正体を追う逃亡サスペンスとして見るほうが、本作の雰囲気に近いでしょう。

主要キャストと登場人物

登場人物キャスト役どころ
アート・ジェフリーズブルース・ウィリスFBIシカゴ支局の捜査官
サイモン・リンチミコ・ヒューズ暗号を解読した9歳の少年
ニコラス・クドローアレック・ボールドウィンマーキュリー開発を指揮するNSA幹部
トーマス・ジョーダンシャイ・マクブライドアートの同僚で通称トミー
ステイシーキム・ディケンズ事件に巻き込まれサイモンを助ける女性
ディーン・クランデルロバート・スタントンマーキュリー開発チームの一員
レオ・ペドランスキーボディ・パイン・エルフマンマーキュリー開発チームの一員
ピーター・バーレルL.L.ギンタークドローに従う暗殺要員

ブルース・ウィリスというと『ダイ・ハード』のような派手なヒーロー像を思い浮かべますが、本作で重要なのは銃撃戦よりも子どもに向き合う表情です。

一方、サイモンを演じるミコ・ヒューズは、視線や反応、動作を通してサイモン独自の世界を表現しています。この二人の組み合わせが、映画の感情的な中心になっています。

なお、本作のサイモンはあくまでも映画内に設定された一人の人物です。自閉症や発達障害の特徴には大きな個人差があるため、サイモンの言動を自閉症の人すべてに当てはめて考えるのは適切ではありません。発達障害について正確に知りたい場合は、国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害とは」などの公的情報も確認してください。

ネタバレあらすじを時系列で解説

映画『マーキュリー・ライジング』をイメージした、街中で少年が指差し男性と女性が見守る場面
映画『マーキュリー・ライジング』をイメージした、街中で少年が指差し男性と女性が見守る場面

ここからは『マーキュリー・ライジング』のあらすじを、ラストまでネタバレありで追っていきます。物語を分かりにくくしているのは、マーキュリーそのものより「誰が何を隠そうとしているのか」です。そこを意識すると、事件の流れが一本につながります。

潜入捜査でアートが左遷される

FBI捜査官アート・ジェフリーズは、長年にわたって潜入捜査を担当してきたベテランです。

冒頭では武装集団による銀行立てこもり事件に潜入し、人質と犯人側にいる若者をできるだけ死なせないよう説得を続けていました。ところが、現場の判断を待たずFBIが強行突入。銃撃戦となり、若い構成員も命を落とします。

アートは強行突入を命じたハートリーに激怒し、ついには殴ってしまいます。その結果、長年担当していた潜入捜査から外されました。

この冒頭は本筋と無関係に見えますが、実はかなり重要です。アートはすでに「組織の判断によって救えたかもしれない若者を失った」という傷を抱えているからです。

だからこそ、のちにサイモンの命が組織の都合で切り捨てられそうになったとき、彼は見過ごせませんでした。

サイモンが暗号を解読する

一方、9歳のサイモン・リンチは、手にしたパズル雑誌に掲載されている問題を解きます。

ところが、それは普通のパズルではありませんでした。問題として掲載されていたのは、NSAの開発チームが作った暗号システム「マーキュリー」だったのです。

マーキュリーは国家機密を守るために開発され、解読は不可能と考えられていました。しかし、開発に携わっていたディーンとレオが安全性を試すため、クドローに無断で暗号を一般向けのパズル雑誌へ掲載していました。

そしてサイモンは、そこから答えを導き出し、記載されていた番号へ電話をかけます。

事件の発端はここです。マーキュリーが解読された事実そのものより、「解読不能だとされていた国家機密システムが、一人の少年によって突破された」ことがクドローにとって致命的でした。

両親が殺されサイモンだけ助かる

マーキュリーの責任者ニコラス・クドローは、暗号が破られた事実を知ります。

本来であれば、暗号の欠陥を認めてシステムを見直すべきところでしょう。しかしクドローが選んだのは、解読者であるサイモンを消してしまうことでした。

暗殺要員ピーター・バーレルがサイモンの自宅を襲撃し、両親を殺害。無理心中に見せかけようとします。

ただ、サイモンはクローゼットに隠れていたため発見されませんでした。

事件現場へ呼ばれたアートは、夫婦の死に不自然さを感じます。そして家の中を調べるうちに、隠れていたサイモンを発見しました。

ここで二人は初めて出会います。

病院でも命を狙われる

サイモンは病院へ保護され、アートは警察官を配置するよう求めます。しかし後から病院を訪れると、警備の警官はすでに引き上げていました。

さらに、サイモンの病室まで不自然に変更されています。

何かがおかしいと感じたアートの前に現れたのが、医師に変装したピーターでした。

アートは相手の正体を見抜き、サイモンを連れて病院から脱出。追っ手との戦いを経て、事件が単なる一家心中ではないと確信します。

ただ、この時点のアートはマーキュリーの存在さえ知りません。それでもサイモンを引き渡さないのは、組織の説明よりも目の前で起きている事実を信じたからでしょう。

◆ふくろうのワンポイント
私はここにアートらしさが一番出ていると思います。事情が分かったから守るのではなく、事情が分からなくても「この子は狙われている」と判断した瞬間に動くんですよね。冒頭の事件で守れなかった命があるからこそ、今度は組織の命令より少年の安全を優先したように見えます。

内部告発から黒幕へ近づく

アートは同僚のトミーに協力を求めながら、サイモンが狙われる理由を探ります。

やがてサイモンが再び電話をかけたことから、マーキュリー開発チームのディーンと接触できることになります。

ディーンは、サイモンが解いたものがNSAの暗号であり、クドローが解読の事実を隠そうとしていると説明。しかし真相を語っている途中でピーターに射殺されます。

もう一人の開発者レオもクドローを告発しようと動いていましたが、やはりピーターに殺されました。

それでもレオの恋人エミリーが残された情報をアートへ渡したことで、クドローがサイモンの両親や関係者の殺害に関与している証拠がつながっていきます。

クドローとの屋上で決着する

アートはサイモンを証人保護の対象にしようとします。ところがクドローは立場を利用し、自分こそがサイモンの担当者であるかのように振る舞いました。

事情を知らないステイシーはクドローにサイモンを預けてしまいます。

クドローはサイモンを連れ、ヘリコプターで逃亡しようとします。しかしFBI側も真相をつかんでおり、現場へ突入。ピーターとの銃撃戦が始まります。

さらにヘリコプターの操縦士として潜り込んでいたのがアートでした。

アートはサイモンを取り戻そうとし、クドローと激しく争います。最後はクドローが再びサイモンへ手を伸ばしたところをアートが撃ち、クドローは屋上から転落します。

こうして、一人の少年を消すことで自分の失敗を隠そうとしたクドローの計画は終わりました。

マーキュリー・ライジングのラスト

アクションとしての決着は屋上でつきますが、『マーキュリー・ライジング』の本当のラストはその後です。ここで描かれるのは敵を倒したヒーローの姿ではなく、アートとサイモンが築いた関係でした。

サイモンはその後どうなったのか

事件が終わった後、サイモンは専門施設で生活するようになります。

両親を失っているため、以前と同じ生活へ戻ることはできません。それでも、国家機密を巡って命を狙われ続ける状況からは解放されました。

アートは施設へサイモンを訪ね、パズルの本をプレゼントしようとします。

ところが彼は、直接会わずに帰ろうとします。サイモンは自分を覚えていないかもしれない、と考えていたからです。

危険の中では命懸けで守ったのに、事件が終わると急に距離を取ろうとする。この不器用さがアートらしいところでもあります。

最後の抱擁は何を意味するのか

職員に勧められ、アートはサイモンと対面します。

するとサイモンはアートのことを覚えていました。そして最後には、自分からアートを受け入れるように抱きつきます。

この抱擁こそ、本作が最後まで描こうとしてきた二人の変化です。

序盤のサイモンにとって、アートは安心できる存在ではありません。助けようとしても暴れ、拒絶する場面があります。それでもアートは無理に関係を求めるのではなく、危険から守り続けました。

その積み重ねの先にあるのが最後の抱擁です。

アートにとっても同じでしょう。最初は事件の被害者としてサイモンを守っていましたが、最後には捜査対象でも証人でもない、一人の大切な少年として会いに来ています。

ラストの抱擁は、「守る側と守られる側」だった二人が、「互いを信頼する人間同士」になったことを示す場面と考えると、本作の物語がとてもきれいにつながります。

冒頭の事件とラストはつながる

ここで思い出したいのが冒頭の銀行立てこもり事件です。

アートは若者を救おうとしますが、組織の強行突入によって命を救えませんでした。その記憶は、その後も彼を苦しめています。

そしてサイモンもまた、組織の都合によって切り捨てられようとしている子どもです。

つまりサイモンを救うことは、単にFBI捜査官として事件を解決する行為ではありません。アート自身が過去にできなかったことを、今度こそやり遂げる物語でもあります。

冒頭では子どもの命を守れなかった男が、ラストでは一人の少年から信頼を返してもらう。この対比があるから、最後の短い抱擁があれほど印象に残るのでしょう。

マーキュリーの暗号を考察

映画『マーキュリー・ライジング』をイメージした、少年サイモンがパズル雑誌を読んで暗号に挑む場面
映画『マーキュリー・ライジング』をイメージした、少年サイモンがパズル雑誌を読んで暗号を解読する場面

本作で最も引っかかりやすいのが、事件の発端となる暗号そのものです。「なぜ国家機密を雑誌に載せるのか」「なぜ解読した少年を殺す必要があるのか」という疑問はもっともでしょう。ここは映画の評価にも直接つながっています。

なぜ暗号を雑誌に掲載したのか

マーキュリーを雑誌に載せたのはクドロー本人ではなく、開発チームに所属するディーンとレオです。

二人はスーパーコンピューターなどを使った検証では破られなかったマーキュリーに対して、人間の発想による解読という別方向からの確認を行おうとしました。

そこで一般のパズル雑誌へ暗号を紛れ込ませます。

映画上では「誰にも解けないはず」という自信があったから成立する行動ですが、現実的に考えるとかなり危なっかしいですよね。そもそも国家機密として運用する予定の技術を、不特定多数が目にする媒体へ無断掲載すること自体が事件を招いています。

この時点で物語の前提に大きな偶然と無理が含まれているため、ここを受け入れられるかどうかで映画への評価も変わりやすいと思います。

なぜサイモンを殺そうとしたのか

クドローが恐れたのは、サイモン本人というよりマーキュリーが解読可能だと証明された事実です。

絶対に破られない暗号として巨額の費用と時間をかけて開発していたのに、9歳の少年が解いてしまった。それが公になれば、システムの安全性だけでなくプロジェクトそのものが問われます。

そしてクドローは、暗号を改良して失敗を認めるのではなく、解読した人間を消せば問題も消えると考えました。

もちろん、この判断は合理的とは言えません。サイモンを殺しても暗号の欠陥そのものは消えないからです。別の人物が同じ方法で解読する可能性も残ります。

だからこそクドローの行動は「国家を守るため」というより、国家機密を理由にした保身と隠蔽として見るほうが自然でしょう。

クドローが本当に守ったもの

クドローは表向き、国家安全保障を理由に行動しています。

しかし彼が実際に守ろうとしているのは、マーキュリー計画の成功という実績と、その責任者である自分の立場です。

ここが本作の怖い部分だと思います。

「国家のため」という非常に大きな言葉を使うと、一人の子どもの命まで数字のように扱えてしまう。サイモンの両親、ディーン、レオまで犠牲にしてなお、クドローは自分の行動を止めません。

反対にアートが見ているのは、国家でも組織でもなく目の前のサイモンです。

つまり本作には、大きな目的のために個人を切り捨てるクドローと、個人を守るために巨大な組織へ逆らうアートという対立があります。

同じ1998年のブルース・ウィリス出演作で、国家権力と個人の権利というテーマをより政治的に描いた作品が気になる方は、『マーシャル・ロー』のネタバレ解説もあわせて読むと比較しやすいですよ。

アートがサイモンを守る理由

『マーキュリー・ライジング』を単なる暗号サスペンスとして見ると、設定の強引さが目につきます。しかしアートの物語として見ると印象が変わります。彼がサイモンを守る理由には、冒頭から積み重ねられた感情があります。

過去の少年の死が影響している

冒頭でアートは、銀行に立てこもった集団を説得しようとしていました。

犯罪者を捕まえるだけなら強行突入でもよかったのかもしれません。それでも彼は、犯人側にいる若者の命まで救おうとしています。

ところが組織は現場の判断を無視し、結果として死者が出ました。

アートが上司を殴るほど怒ったのは、単なる命令違反への不満ではありません。「救えた可能性があったのに組織が切り捨てた」という思いがあったのでしょう。

そしてサイモンの事件でも、ほぼ同じ構図が繰り返されます。

国家組織が目的のために子どもの命を切り捨てようとする。アートにとっては、とても見過ごせる状況ではなかったはずです。

アートはサイモンを変えようとしない

アートとサイモンの関係で印象的なのは、二人が最初から心を通わせるわけではないところです。

サイモンはアートを拒みますし、思い通りに行動してくれるわけでもありません。緊迫した逃亡中でさえ、アートにとってサイモンとの意思疎通は簡単ではありませんでした。

それでもアートは、「自分の指示に従う子ども」に変えようとはしません。

危険から遠ざけ、安全な場所へ連れて行き、サイモンが必要としているものを少しずつ理解しようとする。この積み重ねが重要です。

だから最後にサイモンの側からアートへ近づくことに意味があります。

二人は互いを救ったのか

表面的には、アートがサイモンを救う映画です。

しかし最後まで見ると、サイモンもまたアートを救ったように感じられます。

アートは冒頭の事件以来、自分が守れなかった命を引きずっています。組織への怒りだけではなく、自分自身にも無力感を抱えていたのでしょう。

そんな彼がサイモンを最後まで守り抜き、事件後にはサイモンから抱きしめられます。

これは「今度は救えた」という結果だけではありません。アートが誰かから信頼される人間として戻ってこられた瞬間にも見えます。

◆ふくろうのワンポイント
個人的には、クドローを倒す場面より最後の抱擁のほうが本作のクライマックスだと思います。銃撃戦で事件は終わりますが、アートの物語が終わるのはあの抱擁なんですよね。

ステイシーの役割とラストを考察

映画『マーキュリー・ライジング』をイメージした、ステイシーが真剣な表情を見せる場面
映画『マーキュリー・ライジング』をイメージした、ステイシーが真剣な表情を見せる場面

物語後半から登場するステイシーは、FBIでもNSAでもない一般人です。それだけに「なぜそこまで協力するのか」「ラストではアートと恋人になったのか」と気になった方もいるでしょう。

ステイシーはなぜ協力したのか

ステイシーは、もともと事件とはまったく関係ありません。

アートがサイモンを一時的に預ける相手として突然巻き込んでしまいます。冷静に考えると、かなり無茶な頼みですよね。

最初のステイシーが警戒するのも当然です。

それでも彼女は、サイモンが本当に危険な状況にいると理解するにつれて協力するようになります。

物語上では、FBIやNSAといった組織の論理とは無関係に、一人の子どもを助けようとする一般市民として配置されているのでしょう。

ただし、登場が遅く、アートとの関係も十分には描かれません。そのため「便利な協力者に見える」という不満が出やすい部分でもあります。

アートと恋愛関係になったのか

ラストではステイシーの姿も映りますが、アートと正式に恋人関係になったと断定できる描写はありません。

二人の間に好意を感じ取ることはできますが、映画はその関係を明確な恋愛の結末として描いていません。

むしろ最後に大きく扱われるのは、アートとサイモンの再会です。

もしアートとステイシーの恋愛を物語のゴールにするのであれば、二人が一緒に施設を訪れるなど、もっと分かりやすい描写もできたはずです。

あえてそこを曖昧にしたのは、この映画で最も重要なのは男女のハッピーエンドではなく、アートとサイモンの関係だと示すためだったのではないでしょうか。

マーキュリー・ライジングの評価

映画『マーキュリー・ライジング』をイメージした、アートが少年サイモンを守りながら夜の線路沿いを歩く場面
映画『マーキュリー・ライジング』をイメージした、アートが少年サイモンを守りながら夜の線路沿いを歩く場面

『マーキュリー・ライジング』は、楽しめるサスペンスとして評価する声がある一方、物語の前提や登場人物の行動に無理を感じやすい作品でもあります。ここでは、なぜ評価が分かれるのかを具体的に見ていきます。

サスペンスとして見やすい

まず良いところは、物語の目的が分かりやすいことです。

サイモンが暗号を解く、両親が殺される、アートが少年を救う、黒幕を突き止める、追っ手から逃げるという流れがはっきりしています。

暗号をテーマにしているからといって、観客側に難しい暗号知識が要求されることもありません。

敵と目的が早い段階で示され、その後は「サイモンを守れるか」という一点で話が進むため、最後まで追いやすい映画です。

ブルース・ウィリスのアクションもありつつ、人間ドラマの時間も確保されている。このバランスは本作の見やすさにつながっています。

設定の強引さは気になる

一方、もっとも評価が割れそうなのは事件の前提です。

国家レベルの暗号を一般雑誌へ掲載してしまうこと、それを9歳の少年が解読してしまうこと、さらに解読した少年と家族を殺して隠蔽しようとすること。どれか一つなら映画的な設定として飲み込めても、重なると少し強引に感じます。

特に気になるのは、サイモンを殺してもマーキュリーが解読可能だという事実自体は変わらないことです。

クドローが本当に国家安全保障を最優先するのであれば、サイモンの暗殺よりシステムの停止や改良を優先するほうが自然でしょう。

そのため、論理的なサスペンスとして細部まで考えるほど、「なぜそうするの?」という疑問が出てきます。

逆に言えば、クドローを「国家を守る合理的な人物」ではなく、「失敗を認められず、国家機密を口実に保身へ走った人物」と見ると、行動の不自然さはいくらか理解しやすくなります。

ミコ・ヒューズの演技が印象的

物語上の引っかかりを補っているのが、サイモンを演じたミコ・ヒューズの存在です。

サイモンは事件を説明する人物ではなく、むしろ周囲の大人たちが彼の反応を読み取りながら動かなければならない存在として描かれます。

そのため、表情、視線、声、身体の動きといった芝居が非常に重要です。

特にラストは長い台詞で感動させるのではありません。それまで他人との距離を保っていたサイモンがアートを受け入れる。その行動だけで二人の関係の変化が伝わってきます。

映画の設定に多少納得できないところがあっても、この二人の場面には感情を持っていかれたという方は多いのではないでしょうか。

ブルース・ウィリスの父性が光る

ブルース・ウィリスも、本作ではいつもの不死身のアクションヒーローとは少し違います。

もちろん銃を手にして追っ手と戦いますが、それ以上に印象的なのはサイモンを見る目です。

言うことを聞かないから怒るのではなく、どうすれば安心させられるのかを探っていく。完全に理解できなくても、理解しようとはする。

この距離感がいいんですよ。

アート自身も心に傷を抱えた人物なので、完璧な保護者として描かれているわけではありません。それでも「この子だけは見捨てない」という一点だけは最後まで揺らがない。

だからブルース・ウィリスの派手なアクションを期待すると少し違うかもしれませんが、人情味のある役柄が好きな方にはかなり相性のいい作品だと思います。

ジョン・バリーの音楽も魅力

もう一つ注目したいのがジョン・バリーによる音楽です。

本作は銃撃戦や逃亡場面がある一方、アートとサイモンの関係を描く場面では感傷的な音楽が印象に残ります。

特に終盤になるほど、ただの追跡サスペンスではなく、人と人との関係を描く作品だという雰囲気が濃くなっていきます。

物語の理屈より感情に重きを置いた映画だからこそ、音楽も重要な役割を果たしています。

結局この映画は面白いのか

私の感想としては、設定にはかなり突っ込みどころがあるものの、最後まで飽きにくいクライムサスペンスです。

マーキュリーの安全性やNSA側の行動を現実的に考え始めると、どうしても無理があります。

その一方で、そこを物語を動かすための仕掛けとして受け入れ、アートとサイモンに注目すると印象はかなり変わります。

国家機密や陰謀は外側のストーリーで、本当に描きたいのは「組織によって傷ついた男が、組織に狙われた少年を救う話」なのではないでしょうか。

◆ふくろうのワンポイント
評価が割れる理由は分かりやすいです。頭で考えると粗が見えますが、二人の関係を追っていると最後はちゃんと胸に残る。この「理屈では引っかかるのに、感情では好きになれる」というところが『マーキュリー・ライジング』らしさだと思います。

マーキュリー・ライジングのよくある質問

最後に、『マーキュリー・ライジング』のネタバレやラストについて、特に気になりやすいポイントをまとめます。

マーキュリー・ライジングのよくある質問(FAQ)

Q1. マーキュリーとは何ですか?
A. 劇中でNSAが開発している架空の暗号システムです。解読不能と考えられていましたが、開発メンバーが一般雑誌へ掲載した問題をサイモンが解いたことで、安全性に欠陥があることが判明します。

Q2. なぜサイモンは命を狙われたのですか?
A. サイモンが解読不能とされたマーキュリーを解いてしまったからです。責任者クドローは暗号の欠陥が公になることを恐れ、プロジェクトと自分の立場を守るため、解読したサイモンを消そうとしました。

Q3. クドローはラストでどうなりますか?
A. クドローはサイモンを連れて逃亡しようとしますが、アートとFBIに阻止されます。屋上でサイモンを奪い返そうとしたところをアートに撃たれ、そのまま屋上から転落します。

Q4. ラストの抱擁にはどんな意味がありますか?
A. サイモンがアートを信頼できる存在として受け入れたことを示していると考えられます。同時にアートにとっても、冒頭で救えなかった命への後悔を抱えながら、今度は一人の少年を最後まで守り抜けたことを示す重要な場面です。

Q5. ステイシーとアートは付き合ったのですか?
A. 二人が正式に恋人になったと断定できる描写はありません。ラストのステイシーの描写から今後も関係が続く可能性は感じられますが、映画が明確に描く結末は恋愛ではなく、アートとサイモンの再会と抱擁です。

マーキュリー・ライジングのまとめ

『マーキュリー・ライジング』は、国家機密の暗号を偶然解いてしまった少年サイモンと、その命を守ろうとするFBI捜査官アートを描いたサスペンス映画です。

設定だけを見ると、国家機密の暗号を一般雑誌へ載せることや、解読した少年を殺して問題を隠そうとするクドローの行動など、かなり大胆な部分があります。

そのため、緻密な陰謀サスペンスを期待すると評価が低くなるのも分かります。

ただし、本作をアートとサイモンの物語として見ると印象は違います。

  • サイモンはNSAの暗号マーキュリーを偶然解読する
  • クドローは暗号の欠陥を隠すためサイモンを狙う
  • アートは組織に逆らってでもサイモンを守り続ける
  • クドローは最終決戦で撃たれ屋上から転落する
  • ステイシーとの恋愛関係は明確には描かれない
  • 最後の抱擁はアートとサイモンの信頼の完成を示す

冒頭では組織の判断によって若者を救えなかったアートが、今度は国家組織から狙われるサイモンを守り抜く。そして最後には、そのサイモンから抱きしめられる。

国家を守るという大義より、目の前の一人の命を守ることを選んだアートが、その選択の答えをサイモンから受け取る。それが『マーキュリー・ライジング』のラストなのだと思います。

暗号や陰謀の理屈に注目するか、アートとサイモンの関係に注目するかで、かなり評価が変わる映画です。あなたはあの最後の抱擁を、どのように感じたでしょうか。

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