
こんにちは、物語の知恵袋のふくろうです。
『ワイルド・スピード ICE BREAK』を観て、いちばん引っかかるのはやっぱりドムの裏切りではないでしょうか。誰よりもファミリーを大切にしてきた男が、ホブスを攻撃し、仲間からEMPを奪い、さらにサイファーの隣に立つ。初見では「ここまで積み重ねてきたドムが、なぜ?」と置いていかれそうになります。
私もこの作品は、派手なカーアクション以上に、ドムが何を守ろうとしていたのかを知ってから印象が変わりました。ドムはサイファーに心変わりしたのではなく、元恋人エレナと、自分の存在すら知らなかった幼い息子を人質に取られていたのです。
しかも物語はそれだけでは終わりません。エレナの死、デッカード・ショウの生存、ショウ兄弟による赤ん坊の救出、サイファーの逃亡、そして最後にドムが息子へ与える「ブライアン」という名前。そこまでつながると、本作が描いていたものは単純な裏切りではなく、壊れかけたファミリーを別の形で取り戻していく物語だったことが見えてきます。
この記事でわかること
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『ワイルド・スピード ICE BREAK』のネタバレあらすじと結末
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ドムがファミリーを裏切った本当の理由
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サイファー、エレナ、デッカードの行動と関係
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ラストで息子をブライアンと名付けた意味
ここから先は『ワイルド・スピード ICE BREAK』の結末、死亡人物、ドムの子供の正体まで含むネタバレがあります。未鑑賞で展開を知りたくない方はご注意ください。
『ICE BREAK』の作品概要
まずは物語に入る前に、本作がシリーズのどこに位置する映画なのかを確認しておきます。『ワイルド・スピード ICE BREAK』は本編シリーズ第8作で、前作『SKY MISSION』から続く物語です。街のストリートレースを原点に持つシリーズですが、本作ではサイバー攻撃、EMP、核兵器、原子力潜水艦まで登場し、戦いの規模は一気に世界へ広がっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | ワイルド・スピード ICE BREAK |
| 原題 | The Fate of the Furious |
| 日本公開 | 2017年4月28日 |
| 上映時間 | 136分 |
| 監督 | F・ゲイリー・グレイ |
| 脚本 | クリス・モーガン |
| シリーズ | 本編第8作 |
| 主な舞台 | キューバ、ベルリン、ニューヨーク、ロシア |
物語の中心にいるのは、ドミニク・トレットことドム。妻のレティ、DSS捜査官のホブス、ローマン、テズ、ラムジーらおなじみの仲間に加え、前作の敵デッカード・ショウが共闘する側へ入ってくるのが大きな特徴です。そして本作の黒幕として登場するのが、シャーリーズ・セロン演じるサイバーテロリストのサイファーです。
なお、本作ではブライアン・オコナー本人は登場しません。劇中では死亡した設定ではなく、ミアや子供たちとの生活を優先し、危険な世界から離れている人物として扱われています。この点はラストの命名にもつながります。
ネタバレあらすじを時系列で解説
ここからは『ワイルド・スピード ICE BREAK』のあらすじを、出来事の順番に沿って見ていきます。序盤のキューバでは幸せそうだったドムが、なぜ突然ファミリーの敵になるのか。そしてデッカードがどのように赤ん坊を救い、ドムが戻ってくるのか。結末まで追うと、前半で不可解だった行動の意味が後半で次々につながっていきます。
キューバでサイファーと遭遇
物語はキューバのハバナから始まります。ドムとレティはハネムーンのような時間を過ごしていましたが、親族フェルナンドの車をめぐる揉め事に巻き込まれます。そこでドムは地元の実力者ラルドとストリートレースをすることになりました。
古い車を使ったレースは、世界規模の任務が続いてきたシリーズの中では懐かしさがあります。途中で車が炎上するほど追い込まれながらも、ドムは最後まで走り切って勝利。腕と度胸で相手の敬意を得る姿は、初期の『ワイルド・スピード』を思わせる場面です。
ところが、その直後に空気が変わります。一人で歩くドムの前へサイファーが現れ、協力を要求するのです。当然、ドムは取り合いません。しかしサイファーがスマートフォンに何かを映して見せると、ドムの表情は一変します。この時点では観客にも内容が伏せられており、「いったい何を見せられたのか」が大きな謎として残されます。
ベルリンでドムがEMPを強奪
その後、ホブスはベルリンでEMPを奪還する極秘任務を受け、ドムたちを集めます。EMPは電子機器を無力化できる危険な兵器。ファミリーはいつものように連携して任務を成功させますが、帰還の途中で信じられない出来事が起こります。
ドムが突然ホブスを攻撃し、確保したEMPを奪って逃走したのです。ホブスは現地当局に拘束され、極秘任務だったため公に助けてもらえず、そのまま刑務所へ送られます。レティたちから見れば、ドムは何の説明もなく仲間を売り、敵側へ消えたことになります。
デッカードとファミリーが共闘
ホブスが送られた刑務所には、前作でドムたちと激しく争ったデッカード・ショウも収監されていました。犬猿の仲であるホブスとデッカードは当然のように衝突しますが、やがてミスター・ノーバディの計らいで外へ出されます。
秘密拠点へ連れていかれた二人を待っていたのは、レティ、ローマン、テズ、ラムジーたち。ここで、かつて最大級の敵だったデッカードとファミリーが同じ目的のために動くという異例のチームが生まれます。
最初から仲良くなったわけではありません。ホブスとデッカードは顔を合わせれば挑発し合い、ファミリー側にも過去の因縁があります。それでも、ドムを取り戻し、サイファーを止めるという目的だけは一致していました。
サイファーがゴッド・アイを奪う
ファミリーはラムジーが開発した監視システム「ゴッド・アイ」を使ってドムを追おうとします。ところが相手は世界規模で活動するサイバーテロリスト。サイファーはドムとともに秘密基地を急襲し、逆にゴッド・アイを奪ってしまいます。
さらにサイファーは、レティの目の前でドムにキスをします。ドムが完全に自分の側へ寝返ったと思わせるには十分な場面です。ただ、ドムはその状況を楽しんでいるわけではありません。サイファーが支配関係を見せつけるために、あえてレティの前で行った行為と見る方が自然でしょう。
人質はエレナとドムの息子
ここでようやく、ドムがサイファーに従う理由が明かされます。サイファーの飛行機には、ドムの元恋人エレナ・ネベスと、彼女が産んだ男の赤ん坊が監禁されていました。
その赤ん坊はドムの実の息子です。しかもドム自身は、サイファーに事実を突きつけられるまで息子の存在を知りませんでした。自分に子供がいたという衝撃と、その母子が今まさに殺されかねないという状況を同時に突きつけられたわけです。
サイファーは「逆らえば二人を殺す」という形でドムを縛ります。ファミリーを何より大切にする人物に対して、別のファミリーを人質に取る。ドムの性格を理解したうえでの残酷な脅迫でした。
ドムが裏切った理由は、エレナと息子を守るためです。サイファーに共感したわけでも、レティを捨てたわけでもありません。息子が救出されるまで、表向きは命令に従うしかなかったのです。
ニューヨークでゾンビカーが暴走
サイファーの次の狙いは、ニューヨークにいるロシア国防大臣が持つ核兵器関連の発射コードです。彼女はネットワークにつながった大量の車を遠隔操作し、街中を無人車で埋め尽くします。
いわゆる「ゾンビカー」の場面では、道路を走る車だけでなく、高層駐車場から次々と車が落下。車を操る腕で戦ってきたシリーズなのに、今度は人が乗っていない車そのものが兵器になって襲ってきます。かなり無茶な光景ですが、ここまで振り切っているからこそ忘れにくいシーンです。
さらにレティがケースを奪うと、サイファーの部下コナー・ローズが彼女に銃を向けます。そこでドムは命令通りには動かず、結果としてレティを守る側の行動を取ります。サイファーは、ドムが自分へ完全服従していないことを見逃しませんでした。
エレナがドムの目の前で死亡
ドムがレティを見捨てなかったことへの制裁として、サイファーは最も残酷な命令を出します。ローズに命じ、監禁していたエレナをドムと赤ん坊の目の前で射殺させるのです。
エレナはこの場面で死亡します。直接引き金を引くのはローズですが、殺害を命じたのはサイファーです。ドムは怒りを爆発させたいはずなのに、まだ息子が人質として残っているため、その場では反撃できません。
ロシアで潜水艦との最終決戦
最後の舞台はロシアの軍事基地です。サイファーはドムが奪ったEMPを利用して基地の防御を無力化し、原子力潜水艦を遠隔操作できる状態へ持ち込みます。狙いは核兵器を自分の影響下に置くこと。ファミリーは発射を止めるため、氷上の基地へ突入します。
死んだと思われていたデッカードが、弟オーウェンとともにサイファーの航空機へ潜入していたのです。ニューヨークでの銃撃は、サイファーを欺くために仕組まれた偽装でした。
デッカードは敵を倒しながら赤ん坊のもとへ到達し、無事に救出します。赤ちゃんを抱えたまま戦う姿は、前作の冷酷な敵という印象から大きく変わる場面。アクションの激しさと妙な可笑しさが同居していて、本作らしい見せ場になっています。
そしてデッカードから息子の安全を知らされた瞬間、ドムにはサイファーに従う理由がなくなります。ドムはローズを倒してエレナの仇を討ち、レティたちの側へ復帰しました。
追い詰められたサイファーは潜水艦から熱追尾ミサイルを発射します。ドムは自分の車へミサイルを引きつけたまま潜水艦へ向かい、直前で進路を変えて命中させます。潜水艦は大爆発。爆風に飲まれそうになったドムを守るように、仲間たちの車が周囲を囲みます。
冒頭ではドムに裏切られたファミリーが、最後にはドムを守る壁になる。言葉で説明しなくても、この一連の画だけで本作がどこへ帰ってきたのかが伝わります。
サイファーは逃亡して生き残る
潜水艦が破壊されても、黒幕のサイファー本人はそこで死にません。航空機内でデッカードに追い詰められますが、パラシュートを使って脱出します。
つまり本作の結末で、サイファーは死亡も逮捕もしていません。ドムの家族を壊し、エレナの死を命じた張本人でありながら逃げ切るため、完全な決着ではないのです。この生存は後のシリーズへ続く要素にもなります。
息子をブライアンと命名
戦いが終わると、舞台はニューヨークへ戻ります。デッカードは救出した赤ん坊をドムへ返し、ファミリーはいつものように食卓を囲みます。
そこでドムは自分の息子を仲間たちへ紹介し、名前を告げます。
「ブライアン」。
シリーズを長く支えてきたブライアン・オコナーを思わせる名前です。本作の世界ではブライアン・オコナーは生きていますが、危険な生活からは離れています。だからこの命名は、亡くなった人物を追悼するという劇中設定ではなく、ドムにとって大切な仲間の名前を新しい世代へ受け渡す行為として受け取れます。
ドムが裏切った本当の理由
ここからは、多くの人が最も知りたい「なぜドムは裏切ったのか」をもう少し掘り下げます。前半だけを見ると、ドムは自分の意思でサイファー側へ移ったように映ります。しかし後半まで見ると、その行動には一貫した理由がありました。
エレナと息子を人質にされた
答えは明確で、サイファーがエレナとドムの実子を人質にしていたからです。ドムは息子の存在を知らされると同時に、その命を握られます。
ここが本作の仕掛けとして面白いところです。ドムは普段から「ファミリー」を最優先にします。仲間のためなら危険な戦いにも飛び込む人物です。ならば、その価値観を変えずに敵へ寝返らせるにはどうすればいいのか。サイファーは「別の家族を守りたければ、今いる家族を裏切れ」という究極の二択を押しつけました。
ドムが変わったのではありません。むしろ変わらないからこそ、サイファーに利用されたのです。
仲間へ事情を話せなかった理由
「そこまで仲間を信じているなら、事情を話せばよかったのでは」と感じる人もいるでしょう。ですがサイファーはドムを細かく監視し、エレナと息子をいつでも殺せる状態に置いています。
少しでも不審な動きを見せれば、母子へ危険が及ぶ。実際、ニューヨークでドムがレティを守っただけでも、サイファーは見せしめとしてエレナを殺しました。サイファーの残酷さを考えると、ドムが正面から仲間に相談できる状況ではなかったことがわかります。
だからドムは、表向きは従いながら、水面下でサイファーの監視を外す方法を探します。そして行き着いた相手が、デッカードたちショウ家でした。
サイファーとのキスは本気なのか
レティの前でサイファーとドムがキスする場面は、かなりショッキングです。ただ、あの場面をドムの恋愛感情と受け取る必要はありません。
主導しているのはサイファーであり、彼女はレティへ「ドムはもうこちら側だ」と見せつけています。同時にドムへ対しても、「あなたは私の支配下にいる」と確認させるような行為です。
ドムは最後までレティへの気持ちを失っていません。ニューヨークではレティを撃たず、ローズから守る行動に出ています。そのせいでエレナが殺されることになったほどですから、キスをもってドムの心までサイファーへ移ったと考えるのは不自然でしょう。
レティがドムを信じ続けた理由
レティは傷つきながらも、ドムを完全には見放しません。長い時間を一緒に過ごし、彼がどういう人間なのかを知っているからです。
ニューヨークでドムへ近づく場面でも、レティは彼が自分を撃たないと信じています。事実、ドムはサイファーの命令よりレティを選びました。
私が本作で好きなのは、この信頼が「何でも許す」という形ではなく、「目の前の行動だけでは説明できない何かがある」と踏みとどまる形で描かれているところです。裏切りを題材にしながら、最後まで関係を切らない。それが本作のファミリー像だと思います。
◆ふくろうのワンポイント
ドムの裏切りを「キャラクターが急に変わった」と見るより、「家族を守るという同じ信念を逆手に取られた」と考えると、前半の不可解な行動がずっとわかりやすくなります。サイファーはドムの価値観を壊したのではなく、その価値観そのものを鎖にしたんですよ。
サイファーの正体と目的
サイファーは本作で初めて正面から登場する黒幕です。これまでの敵のように、自分の腕力や運転技術だけでドムたちへ挑む人物ではありません。情報、監視、ハッキング、兵器を組み合わせ、人を離れた場所から動かすことを得意としています。
世界規模のサイバーテロリスト
サイファーの武器は、ネットワークにつながったものを自分の手足のように利用する技術です。ゴッド・アイを奪い、ニューヨークの大量の車を遠隔操作し、軍事設備や原子力潜水艦にも手を伸ばします。
目的は核を利用した支配力
サイファーの狙いは単なる金もうけではありません。EMP、発射コード、原子力潜水艦を利用し、核戦力を背景に国家へ影響を与えられる立場を手にしようとしています。
そのためにドムの能力も利用します。真正面から防御を突破できるドライバー、追跡を振り切れる判断力、どんな状況でも任務を遂行できる執念。サイファーはドムを仲間として迎えたいのではなく、便利な道具として使っているだけです。
エレナと息子を人質に取ることからも、目的のためなら他人の感情や命を平気で利用する人物だとわかります。ドムが大切にしている「ファミリー」とは正反対の価値観です。
過去作の事件にも関わっていた
本作では、サイファーが『EURO MISSION』のオーウェン・ショウや、『SKY MISSION』でゴッド・アイを狙ったモーゼ・ジャカンディの計画にも関係していたことが明かされます。
つまりドムたちはサイファーを知らないまま、過去に彼女の計画を複数回邪魔していたことになります。サイファーから見れば、ドムは突然目をつけた男ではなく、以前から自分の仕事を妨害してきた存在でもありました。
このつながりがあるため、ショウ家にもサイファーと戦う理由ができます。デッカードがドムの救出計画へ乗るのは、単に急に仲良くなったからではなく、共通の敵に対して利害が重なった面も大きいでしょう。
エレナとドムの子供を解説
『ICE BREAK』では、エレナと赤ん坊の存在が物語の中心に置かれます。「エレナは誰だったのか」「レティがいるのに、なぜドムとの子供がいるのか」と混乱しやすいので、過去作とのつながりも含めて見ていきます。
エレナはドムの元恋人
エレナ・ネベスは『MEGA MAX』から登場したブラジルの元警察官です。当時、レティは死亡したと思われており、逃亡していたドムとエレナは少しずつ距離を縮めて恋人関係になりました。
その後、『EURO MISSION』でレティが生きていることが判明します。エレナはドムの気持ちを理解し、自分から身を引く道を選びました。だから彼女は、ドムとレティの関係を壊すために現れた人物ではありません。
『ICE BREAK』で初めて、その時期にエレナがドムの子供を妊娠していたことが明かされます。
ドムの不倫で生まれた子ではない
ここは誤解されやすいのですが、ドムがレティとの結婚生活中にエレナと不倫してできた子供、という話ではありません。
ドムとエレナが恋人だったのは、レティが亡くなったと思われていた時期です。その後レティの生存がわかり、エレナは二人の復縁を受け入れます。そして自分の妊娠を知っていたものの、ドムとレティの関係を邪魔せず、二人がキューバから戻ったあとに伝えるつもりでした。
しかし、その前にサイファーによって母子ともに拉致されてしまいます。そのためドムは、自分に息子がいることをサイファーから知らされる形になりました。
エレナを殺したのは誰か
エレナを直接撃ったのは、サイファーの部下コナー・ローズです。ただし、殺害を命じたのはサイファー。ドムがニューヨークでレティを守ったことへの罰として、見せしめに命を奪わせました。
終盤で息子が救出されると、ドムはローズを倒します。物語上はこれでエレナの仇を討った形になりますが、命令したサイファー本人は逃亡しています。だから感情としては、完全に決着したとは言い切れません。
また、エレナが亡くなったあとの扱いが短いことに寂しさを覚える人もいると思います。長くシリーズに関わり、ドムとレティを尊重してきた人物だけに、私はもう少し彼女自身の人生や別れへ時間を使ってほしかったと感じました。
子供の母親と名前
ドムの息子の母親はエレナです。赤ん坊はデッカードによって救出され、最後はドムのもとへ戻ります。
そして食卓でドムが仲間たちへ紹介するとき、初めて「ブライアン」という名前が示されます。ここで物語は、エレナから受け取った新しい家族と、これまでシリーズを支えてきたブライアン・オコナーの記憶を一つにつなぎます。
デッカード生存と救出作戦
本作では、デッカード・ショウについても「ドムに撃たれて死んだのか」「なぜ突然仲間になったのか」という疑問が残りやすいです。結論として、ニューヨークの銃撃は本当の死亡ではなく、サイファーを欺くための偽装でした。
ドムに撃たれても死んでいない
ニューヨークでデッカードはドムに撃たれ、その後ファミリー側にも死亡したように伝わります。しかしこれは救出作戦の一部。ドムはサイファーの監視をかいくぐり、ショウ兄弟の母マグダレーンへ接触していました。
ドムはショウ家と秘密裏に協力
ドムがショウ家を頼った最大の理由は、サイファーに知られず動ける人間が必要だったからです。いつもの仲間は監視されやすく、事情を話せば人質が危険にさらされます。
そこで過去に敵だったデッカードたちを使う。サイファーから見ても、ドムとショウ家が裏で手を組むとは予想しにくかったでしょう。
ドムは表ではサイファーの命令を実行しながら、裏では息子を救う道を作っていました。この二重の動きが成功したことで、最後に反撃できる時間が生まれます。
弟オーウェンも救出に参加
航空機へ潜入するのはデッカードだけではありません。弟のオーウェン・ショウも救出作戦へ参加します。
『EURO MISSION』では敵だったオーウェン、『SKY MISSION』ではその弟の復讐に動いたデッカード。そして本作では母マグダレーンまで登場し、ショウ家というもう一つのファミリーが前面に出てきます。
ドムが自分のファミリーを救うため、かつて敵だった別のファミリーへ助けを求める。この構図は、本作のテーマを考えるうえでも面白いところです。
仲間として受け入れる展開は複雑
ただし、デッカードが活躍することと、過去の因縁が消えることは別です。前作までの流れを知っているほど、「ここまで自然に食卓へ入っていいのかな」と引っかかる人もいるでしょう。
私も、赤ん坊を守りながら戦うデッカードの場面はかなり好きです。ホブスとの言い合いも楽しい。それでも、ファミリーとの関係が一気に近づく展開には少し早さを感じます。
本作では「共通の敵サイファー」と「ドムの息子を救った」という大きな出来事によって関係が変わりますが、過去をすべて帳消しにしたというより、まず共闘が成立し、そこから新しい関係へ動き始めたと受け取る方がしっくりきます。
◆ふくろうのワンポイント
デッカードは「急に善人になった」というより、サイファーという共通の敵ができ、さらにドムの子供を救う役目を引き受けたことで立ち位置が変わった人物です。魅力的な転換ではありますが、過去の因縁まで一瞬で消えたと考える必要はないと思います。
ラストとブライアンの意味
『ICE BREAK』のラストは、潜水艦の爆発よりも静かな食卓で締めくくられます。この終わり方が大切なのは、シリーズの派手さの根っこにあるものが、結局は「一緒に食卓を囲む人たち」だからです。
ブライアン本人は死亡していない
まず押さえておきたいのは、劇中のブライアン・オコナーは死亡していないという点です。演じたポール・ウォーカーは2013年に亡くなりましたが、『SKY MISSION』ではキャラクターのブライアンを死なせず、ミアや子供と暮らすため危険な生活から退いた形で物語を離れました。
『ICE BREAK』でもブライアンの存在は会話の中で触れられます。ただしファミリーは、彼とミアを再び危険へ巻き込まない道を選びます。
新しい世代へ名前を受け渡す
ドムが息子をブライアンと名付ける場面には、いくつもの感情が重なります。
息子はエレナが命をかけて残した家族です。そして「ブライアン」は、ドムにとって血のつながりを超えた兄弟のような仲間の名前。だからこの命名は、失ったものと今も続いているものを、新しい命へつなぐ行為に見えます。
劇中ではブライアン・オコナーが生きている以上、亡くなった人の名を受け継がせたという話ではありません。それでも観客にとっては、ポール・ウォーカーの存在を思わずにはいられない名前です。
シリーズはこれからも続く。でもブライアンを忘れて前へ進むわけではない。私には、そんな意思を静かに示すラストに感じられました。
作品の考察と感想
『ワイルド・スピード ICE BREAK』は、車が空から降り、氷の下から潜水艦が迫るほどスケールの大きな映画です。それでも、物語を最後までつないでいるのは「誰を家族として守るのか」というかなり身近な感情でした。
裏切りではなく家族を守る物語
タイトルや予告では、ドムがファミリーを裏切ることが大きく押し出されます。しかし結末まで見ると、ドムは最初から最後まで家族を守ろうとしていました。
ただし、その家族が二つに分けられていたため、片方を守る行動がもう片方への裏切りに見えたのです。サイファーはそこを利用しました。
息子が救われるとドムはすぐにレティたちへ戻ります。仲間たちもドムを見捨てず、最後は爆風から彼を守るため車を並べます。この流れを見ると、本作は「ファミリーが崩壊する映画」というより、崩されても戻ってくる関係を描いた映画だったと思います。
規格外のカーアクションが魅力
アクション面では、ニューヨークのゾンビカーとロシアの氷上決戦が圧倒的です。高層駐車場から大量の車が落下し、無人の車列が街を埋める。最後はアイス・チャージャーをはじめとする車両が氷上を走り、そのすぐそばを原子力潜水艦が突き進みます。
現実味を求め始めると、さすがにツッコミどころは山ほどあります。でも私は、ここまで来たら「車でどこまでやるのか」を楽しむ方が作品に合っていると思います。
しかも冒頭には昔ながらのストリートレースを置いています。シリーズが世界規模のアクションへ変わっても、出発点が車とドライバーだったことを忘れていない。この始まりと終盤の潜水艦との落差も面白いですね。
エレナの扱いには寂しさが残る
一方で、エレナの最期はやはり重いです。ドムの息子という新しい設定を成立させ、その子を守る動機を作るうえで大切な人物なのに、命を奪われたあとの余韻は長くありません。
もちろん物語はクライマックスへ向かっているため、テンポを落とせない事情もあるでしょう。それでも『MEGA MAX』から彼女を見てきた側としては、もう少し別れの時間があってもよかったかなと思います。
エレナはレティと張り合うのではなく、ドムの気持ちを尊重して身を引いた人物でした。だからこそ、彼女が残した息子をドムとレティを含むファミリーが守っていくことには、大きな意味があります。
デッカードの転換は楽しいが早い
デッカードの扱いも、人によって感想が分かれるところでしょう。前作の敵だった人物がホブスと口げんかをし、赤ちゃんを抱えながら敵を倒し、最後は食卓へ加わる。この変化だけ見れば、とても楽しいです。
ジェイソン・ステイサムの持ち味も生きていますし、終盤の救出作戦は本作の中でも特に印象に残ります。
ただ、シリーズを通して見ると、過去の因縁をもっと受け止める場面がほしいとも感じます。面白さを優先した大胆な方向転換だからこそ、納得できる人と引っかかる人に分かれるでしょう。
最後に帰る場所は食卓
私が『ICE BREAK』を総括すると、派手さはシリーズでもかなり上位なのに、最後に残るのは食卓の場面です。
ドム、レティ、ホブス、ローマン、テズ、ラムジーたちが集まり、そこへデッカードが赤ん坊を連れてくる。新しい家族が加わり、その名はブライアン。ここでようやく、冒頭から続いた「ドムの裏切り」の物語が終わります。
◆ふくろうのワンポイント
私は本作を「ドムが裏切る映画」ではなく、「ドムが二つの家族の間で追い詰められ、それでも最後には両方を守ろうとする映画」として見るとしっくりきます。エレナを失う苦さまで含めて、ラストの食卓と“ブライアン”という名前が効いてくると感じます。
『ICE BREAK』のよくある質問
Q1. ドムがファミリーを裏切った理由は何ですか?
A. サイファーに元恋人エレナと、エレナとの間に生まれた自分の息子を人質に取られていたからです。ドムが本心からサイファーへ寝返ったわけではなく、母子を殺されないため命令に従っていました。
Q2. ドムの子供はレティとの子供ですか?
A. いいえ。母親はエレナ・ネベスです。ドムとエレナが恋人だったのは、レティが死亡したと思われていた時期で、エレナはそのころに妊娠していました。
Q3. エレナは『ICE BREAK』で死亡しますか?
A. はい。ドムがレティを守ったことへの制裁として、サイファーが部下コナー・ローズに命じ、ドムと赤ん坊の目の前でエレナを射殺させます。終盤ではドムがローズを倒します。
Q4. デッカード・ショウはドムに撃たれて死んだのですか?
A. 死んでいません。ニューヨークでの死亡はサイファーを欺くための偽装です。デッカードは弟オーウェンとサイファーの航空機へ潜入し、ドムの息子を救出します。
Q5. サイファーは最後に死亡しますか?
A. 死亡しません。デッカードに追い詰められますが、航空機からパラシュートで脱出します。そのため本作ではサイファーとの決着は完全にはついていません。
『ICE BREAK』ネタバレまとめ
『ワイルド・スピード ICE BREAK』は、ドムの裏切りという衝撃的な展開から始まりながら、最後まで見るとその行動がファミリーを守るためだったとわかる作品です。
- ドムはエレナと息子を人質に取られ、サイファーへ従っていた
- エレナはサイファーの命令を受けたローズに射殺される
- デッカードの死亡は偽装で、弟オーウェンと赤ん坊を救出する
- 息子が安全になるとドムはサイファーへ反旗を翻す
- サイファーはパラシュートで逃亡し、生存する
- ラストでドムは息子を「ブライアン」と名付ける
大量のゾンビカーや潜水艦との氷上チェイスは、シリーズらしい規格外の見どころです。一方で、エレナの扱いや、かつて敵だったデッカードがファミリーへ近づく流れには複雑さも残ります。
それでも最後の食卓で「ブライアン」という名前が告げられると、この映画が過去を切り捨てて次へ進む作品ではないことが伝わってきます。失った人も、離れた仲間も、新しく生まれた家族も含めてつながっていく。派手なアクションの奥にあるその感情こそ、『ICE BREAK』で私がいちばん心に残った部分です。